飛ばし屋
さぁ、しまってこ〜!と誰かのの掛け声に始まり、キャッチボールのこぎみいい音がグラウンドに響く。
ボールが飛び交うグラウンドの脇で、俺と白石は準備をしていた。
「君が九州選抜に選ばれた平瀬くん??」
「まぁ、一応ね。」
「すごいな!!あそこにいる末廣くんが言ってたけどホントなんだ!」
と白石は興奮気味になっている。
ちなみに末廣とは小中と同じ学校。中学でチームこそ違ったものの、有難いことに俺の活躍は知ってくれている。
「でも山縣に比べたらすごくないよ?」
と横目で山縣の方を見る。
「というかさ、白石君は本当にボールを130メートル以上飛ばしたの?」
「まぁね、カナダで野球やってたからパワーには自信あるんだよね。やっぱりみんなバカスカ飛ばすからさ。」
と白石はどこか誇らしげに言った。
「白石の力はすげぇな。正直パワーに関しては俺が1番と思ってたから話聞いたときはびっくりだったよ。俺は飛ばせてもせいぜい120mくらいだもん。」
事実、中1の時に初めて狭いとはいえ球場のスタンドに叩き込み、中学時代はスラッガーとして全国大会では六番打者を任されていた。
「いやいやいや、中1でスタンドインは充分すげぇぞ??」
と彼は目を丸くした。
「いやぁ、でも白石君には敵わないと思うよ。」
「どうかなぁ。まっ、とりあえず飛ばし屋同士、頑張ろうぜ!」
とお互い拳をコツンと付き合わせキャッチボールを開始した。
グラウンドではボールと威勢のいい掛け声が飛び交っている。
「いくぞー!!白石!」
「おうよ!」
まずは適度な距離感でゆっくりと感触を確かめるように投げる。相手の胸元に真っ直ぐに。今日も制球は悪くない。
「ナイスボール!」
白石もなかなかにいい返球をする。
今度はだんだん距離を遠くしていって遠投に入る。ここも俺の腕、いや肩の魅せどころだ。白石から返球されたボールを捕ると同時にステップ、そしてスローに入る。俺の指から放たれたボールはノーバウンドで白石の胸元へ。
ボールは一直線に彼のミットへ吸い込まれる。
白石は唖然とした表情でこっちをみる。
「平瀬、お前肩も強いのかよ…しかも、ストライク送球…。」
「へへっ、制球には自信があるから、ねっ!」
と白石からのボールを無難に捌いて、俺はボールをスーッと白石の胸元に放る。
遠投の後は近い距離でテンポよくボールをまわしてキャッチボールは終了。
「平瀬君、流石だよ。」
「何がさ」
「送球だよ、送球!打球も遠投もめっちゃ飛ばすじゃん、お前どこの強者よ?」
「さあね?」
なんて冗談を飛ばしてたら、次の練習が始まるところだった。
次の練習はコーチの指示の元で、内野陣はボール回し、外野陣は外野ノック。いずれも先輩達と一緒に受ける。
そして、俺たちは室内練習場のブルペンへ。
さてと、キャッチャーを驚かせにいきますか…。と休憩もそこそこに俺は投球の準備を始めた。