背水の陣
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山縣を相手にして、やっぱり力んでしまう自分がいる。
長打を打たれないように低めに変化球を集めようとするが、力みから思いっきり高めに浮いてしまい、カウントは、2ボールノーストライク。
「タ、タイムッ!」
カウントが悪くなり、堪らず白石はマウンドに。
「な、なぁ。別に四球でもいいから思いっきり投げろ。」
ーーなんだそりゃ。勝負しないとかいくらなんでも弱気すぎだろ。アホか。
「ああ、分かった」
と素直に応じたが、勝負しようとしない弱気な白石、そして上手く投げれない自分に対して苛立ちが募る。
苛立ちのためか、次のストレートも低めに思いっきり外れて結局3ボールに。
白石から敬遠のサインが出たが、当然首を振る。あくまで真っ向勝負、逃げなどしない。
右打席にはあの、山縣が立っている。どうせならしょ
そしてストレートをインコースに投げる。
カキーン!!
少し甘く入ったところに山縣はすかさず反応。
痛烈な打球が逆方向に飛ぶ。しかし、セカンドの正面だ。
「あっ、」
ーーなんとセカンドの的山が後逸。
痛烈な打球ゆえに右中間も抜けそうだったが、ライト小林の猛チャージで二塁は踏ませなかった。
「ご、ごめん……」
申し訳なさそうに的山が謝ってきた。
「ドンマイ、ドンマイ。点入ったわけじゃねぇし、次のプレーに集中だ。締まっていこう。」
と的山をすかさず庇う。
「おう! ここからしっかり守ろうぜ!」
「しまっていこー!!!」
「しゃあ! どんと来い! 点は入れさせんぞ!!」
的山を励ますべく内野陣の士気も高まる。
まぁ、さっきの打球は痛烈すぎた。軟式出身の彼がビビってしまうのもうなずける。
だから、彼を責める必要はない。ここは士気を下げない方が大事だ。
何はともあれノーアウト一塁。あとの三人を抑えれば的山も報われるだろう。
次の打者は左打ちの荒木。
ベンチからはバント警戒のサインが出る。この場面、奥田監督は当然送ってくるだろう。
しかし、その隙をつかれた。
なんと山縣が盗塁を決めノーアウト二塁。
ーーくそっ、完全に送ってくるもんだと思い込んでた… 油断した。まぁ、いい。
その後、2球で荒木をあっさりと追い込んだ。
が、次の1球だった。
コツン……
ーースリーバント!?
またも不意をつかれてしまった。
上手く殺された打球はコロコロと俺の元へ転がってくる。三塁をチラッと見たが間に合いそうにない。ここは諦めて一塁送球、1アウト。奥田監督の策が見事に決まった。
現在、1アウト三塁。厄介なのは犠牲フライだけではなく、内野ゴロでもスクイズでも先制点が入りかねないところだ。
吉田監督もそう感じたのか、内野を極端に前進させる。そしてさらに外野まで前進。外野に打たれたら終わりの背水の陣が敷かれた。
正念場となる場面でバッターは6番の里中。
さぁ、本領発揮の時間だ。




