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飛ばし屋の力

昼飯をササッと食べ終わった俺はグラウンドにあるネットに向かってティーバッティングを開始。木製バットを手に取り、真芯で捉えることをただひたすらに意識して打ち込む。


「平瀬! 俺もティーバッティングやっていいかい?」

と、白石がやってきた。

「もちろん、そういやあのコーチどんなんだった??」

「結構、あれこれ言わないタイプやね。ただ、今の金属バットは真芯で捉えないと飛ばないから芯を意識することはめっちゃ言ってたけど。」


そう、俺たちの金属バットは飛ばない。というよりは飛ぶ金属バットは試合では使えないのである。


高校野球において投手の負担、ピッチャー返しの負傷や野手の木製バットへの順応、木製バット使用時の経済的負担などが問題となっていた。


しかし、数年間前からアメリカにならい、「BBCOR規定」を満たした(反発力や芯の範囲が木製バットと同じ)金属バットの使用が義務付けられた。だから今では飛ばない金属バットの使用が当たり前となっている。

(※以降、このバットのことを新金属バットと表記する。)


「今からさ、ホームラン勝負しない?平瀬君がどのくらい飛ばすか見てみたいよ。」

「ああ、構わないぜ。俺も白石がどこまで持っていくか見てみたい。」

「じゃあ30球打ったら交代でいこ。」

「OK、外野に球拾い兼ねて行ってくるわ。」



白石は右打ちなので俺はセンターの定位置から引っ張りを警戒してレフト寄り、かつ深めの位置についた。準備が整い、大きく丸のポーズで合図を送る。


「んじゃ、行くよ〜!」


カキーン!!


1球目は芯で捉えたが飛距離は足りない。俺へのフライだったのでパシッと捕る。

2球目も同じ。こんなものかと思っていたが、5球目だった。


ガキィィィィィィィィン!!


けたたましい音と共にボールはスタンドへ。

俺は1歩も動けない、見た瞬間に「入ったな」と思うほどだった。


その後、10球目までは俺の仕事は無く、ただただ見送るだけだった。特に8球目はあわや場外弾かと思われるボールだった。


11球目以降、今度はセンター方向のフェンスに直撃が何球か続いた後はバックスクリーンに何度も打球を飛ばす。


俺の仕事といえばもうただボールを見送ることだけだった。白石のバット、ホントに新金属製の飛ばないやつだよな…。と少し疑ってしまった。


20球目もバックスクリーンにぶち込み、その次の打球。


今度は流し打ちでホームランを狙い始めた。どうやら10球ごとに狙うコースを変えているらしい。1球目はファール。2球目はフェン直。惜しい当たりが何度か続き、ついにライトポール直撃。その後は息をするように流し打ちでホームランを量産。

結局白石が打った30球のうち、18球はフェンスをこえた。


こりゃもう勝てる気がしない…。意気消沈して白石君のいるバッターボックスに戻った。




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