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164話 最終決戦6 対峙


 ナキナこと私はその報告に最初自分が聞き間違えたのかと思った。


「何だと! 城に竜闘士の少女が現れただと!」

「は、はいっ! 監視の者が超高高度から振ってくる姿を見たと……」


 王国軍の指揮を預かり、連合軍と大規模戦闘を繰り広げる私の元にもたらされた報告。

 なるほど竜闘士ならば地上から確認できないほどの高さまで飛び上がって、直接魔王城に降下することも可能かもしれない。


 だが、それだけは有り得ないことだった。

 理由は至極簡単なこと。


「だったらあのドラゴン部隊と戦っている姿は一体何なんだ!?」


 元々王国に組織されていたドラゴン部隊。

 今回の戦闘でも運用されているが、それに対して開戦当初から竜闘士の少女が一人で立ち向かい制空権の奪い合いとなっていた。

 一人で十数体のドラゴンと渡り合う少女がすごいというべきか、一騎当千の少女の進撃をどうにか止めていると見るべきか……。


 魔王城と戦場。二カ所に現れた少女。

 どちらかが偽物ということか?

 いやだが報告が間違いでないのならば、超高高度からの降下など竜闘士でなければ出来るはずもないし、ドラゴン十数体と渡り合うことも竜闘士でなければ出来るはずがない。

 ならば――。


「……? 竜闘士?」


 二人の竜闘士。

 気づけば後は簡単だった。




「っ~~!! まさか最初からペテンに引っかかっていたというのか!!」








========








「少女の魔王城突入を確認した」

「そうか……ならばもう細工は必要ないだろう」

「ああ――『変身』解除する」


 魔族レイリがスキルを解除すると……少女ユウカの姿から、褐色角付きの姿に戻った。

 

「『不可視インビシブル』の解除も頼む」

「ああ、そうだったな」


 レイリが魔法を解除すると、ガランこと私の姿も戦場に現れた。




 私たちが連合軍に力を貸している理由は一つ。

 少女を少年のところまで送り届けること。

 そのための策として考えた結果……私たちが二人一役で少女の姿に扮装することで、少女への警戒を外すのがいいと判断した。

 レイリの『変身』は変身した者の力を再現するが、竜闘士の力は別格のため再現できない。そのため少女の姿になったレイリの近くで、透明になった私がスキルを使うことでこれまで戦場を欺いてきた。


 策の提案と同時に、侵入路についても少女に一つアドバイスはした。




『リオが残した抜け道は使わない方がいいんですか?』

『ああ。正直罠のにおいしかしない』

『罠ってリオがそんなことを……って思ってたから、この前も騙されたんですよね』

『それにわざわざそのようなことを竜闘士だから出来る強襲ルートが存在する』


 そしてそのアドバイス通りに上空から魔王城に侵入したようだ。




「さて、これからどうする?」

「連中が魔王城に戻って二人の対面の邪魔をすることを阻止するためにも、ここに釘付けにする」

「なるほど……することに変わりはないというわけか。いや、私が少女のフリをする必要が無くなるからその分こちらの戦力追加となるな」

「ああ、だが気を付けろ。どうやら敵方の指揮は優秀だ。すぐ対応してくるだろう」


 近衛兵長のナキナ、だったか。兵の運用などからしてかなりのやり手と見える。




「分かった。とりあえずこのドラゴンたちをどうにかするか」

「懐に潜り込む。サポートは頼んだ」


 これまで二人一役がバレてしまうため近距離スキルを使うことは出来なかった。いやそもそも多数に囲まれても大変なので遠距離スキルで戦うしかなかったとも言えるが。

 遠巻きに削ってきた今なら、各個撃破していくことも可能だろう。


「行くぞ!!」

「ああ」


 私たちはドラゴン部隊との戦いに挑む。








===








「あんまり驚かないんだね」


 魔王城、謁見の間。

 天窓をぶち抜いて侵入したユウカこと私は落ち着いた様子のサトル君に問いかける。


「ああ。一度王国軍と連合軍の戦場は見ていたからな。すぐに分かった、ユウカが偽物だって」

「レイリさんの変身を見破ったの?」

「ずいぶんと似せるように努力しているのは分かったが、細かい癖がユウカと全く違ったからな」

「まあ私もサトル君なら見抜くと思っていたよ」


 私もサトル君も事も無げに言う。




「え、何ですか? この信頼しているのか、気持ち悪いのかよく分からないやりとりは?」


 リオが何か言っているけど、久しぶりの再会に興奮している私の耳を素通りした。




「それで? 俺の城に何の用だ?」

「分かんないの?」

「ああ」

「告白したんだから、返事を聞かせて欲しいと思うのは当然でしょ」




 もう大昔のように思える、二週間ほど前の出来事。

 学術都市の校舎の屋上で私は沈みゆく夕日をバックに告白した。

 その後の襲撃のせいでうやむやになってしまった返事を聞く。そのために私はここまで来たのだ。




「返事か。なら簡単だ。断らせてもらおう」

「嘘吐き。ちゃんと答えて」

「何を言っているんだ? 告白した、断られた。それで終わりの話だろう?」

「ほらそうやって都合が悪くなると煙に巻く。サトル君らしいね」

「話が通じてるのか?」

「分かってる癖に」

「……ちっ」


 サトル君は舌打ちする。私の言い分を認めた証拠だ。




「やっぱり答えるつもりはないんだね」

「だったらどうする?」

「力ずくで聞き出す。サトル君の動きからしてすごい強化を受けているのは分かる。でも竜闘士の私に勝てるはずないでしょ」

「それはやってみないと分からないだろ。……まあいい、どうせ永遠の孤独に至るためにどこかでおまえとは戦わないといけないとは思っていた」

「永遠の孤独……?」

 サトル君の言葉の中、それだけ意味が分からない。




「今の俺は、おまえに守られていただけの俺じゃない。変わったんだ。そして――全てを終わらせる!!」


「よく分からないけど……これだけは言える! 終わらせない! ここからが私たちのスタートだから!!」




 剣を構えたサトル君が手加減なしに突っ込んでくる。

 私も今この時は相対する者が愛するものであることを忘れ――否。

 愛するものだからこそ全力で戦うことを選択する。




「ふんっ……!!!」

「『竜の拳ドラゴンナックル』!!」




 剣と拳が衝突する。


 絶対に譲れない戦いの始まりだ。



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