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153話 会議2


 ガランさんとレイリさん。

 唐突なのろけ話に困惑する私たちだが、ある意味それで分かったこともあった。


「ガランさん、あなたを味方だと認めます」

「急にどうした?」

「理屈はないです。話して、触れ合ってみての私の直感です」

「そうか……学術都市の件はすまなかったな。使命のためとはいえ、あのようなことをしてしまって」

「もう過ぎたことですから」

「お詫びになるかは分からないが、必ず少女が少年のところまで辿り着けるよう協力しよう」

「ありがとうございます」

「もっともその後どのような結末になるかは二人次第だ」

「良い報告が出来るように頑張ります」


 ガランさんが差し出した手を私は握り返す。




「さて、これで元復活派からの報告が終わって……そうですね、次は私から話しましょうか」


 リオは進行をしながら、次の話し手に進み出る。


「そうだねえ、サトルの元にいたアンタには色々聞きたいことがある。まず率直になんだけど、今のサトルの目的は何なんだい?」


 チトセが早速直球な質問をぶつけた。


「……先に断っておきますが、私は知らないことの方が多いです。今のサトルさんは命令以外に話すことはめったになく、私に何かを打ち明けたり相談したりなんてしませんでしたから。

 それでも今までの行動などから察するに……今のサトルさんの目的は元の世界への帰還では無い、のだと思います」

「今までそれを目標に頑張っていたのにかい?」

「ええ。私がここ独裁都市に向かう直前には渡世とせ宝玉ほうぎょくが王国にゲートを開けるために必要な八個は集まっていました。周辺地域に宝玉を差し出すように通知した結果ですね。

 しかし、それでもサトルさんは特に行動を変えませんでした。帰還のための準備も、これ以上宝玉はいらないともしなかったんです」


 渡世とせ宝玉ほうぎょくは数を集めることで力が増す。

 八個以上集めて出来ること……十個集めれば高位存在を呼び出せて、そして十二個集めれば。




「サトル君は……魔神を呼び出すつもりなのかな……?」




 私はポツリと呟く。

 みんな同じことを考えていたのか、特に反対の意見は上がらなかった。


「サトルさんは魔神の『囁き』スキルによって今の状態になりました。その上時折虚空に向かって話していたり、おそらく今も魔神とのリンクは切れていないのでしょう」

「それで少年が絆されたか、懐柔されたか……あるいはスキルの効果で自分を復活させるように命令されたという可能性もあるのか?」

「いえ、『囁き』はあくまで対象の欲望を解放するスキルです。魅了スキルのような対象を思い通りにするという効果はないはずです」

「そうか。ならば少年自身が考えて魔神の復活を私たちに代わって成し遂げるというのか」


 ガランさんが何ともいえない面持ちで話す。




「魔神を復活させたいのは分かったけど、それ自体が最終目的だとは思えない。結局サトル君は何がしたいの?」

「すいません、それは私にも……」


 私の問いにリオは力無く首を振る。




「王国に内乱を起こして、罪の無い一般人もたくさん巻き込んで、そして支配が完了したら周辺地域にも宣戦布告紛いで混乱を招き、さらには魔神を呼び出そうとしている……。

 サトルさんはそんな悪逆的な振る舞いをするような人では無いと思ってたんですが……僕が何も分かっていなかったって事でしょうか?」


 ソウタ君も力無く呟いて。


「……ん、今ソウタ何て言ったんか?」

「えっと、サトルさんはそんな悪虐的な……」

「違う違う、その前や。一般人もたくさん巻き込んだとか、どうとか」

「言いましたけど……それの何が問題なんですか?」

「いや、俺の知ってる情報と齟齬があったからな。ネビュラの情報網によると、王国で本格的な内乱が起こる前日、不自然に人の流れが誘導されていて、戦闘に巻き込まれた一般人はほとんどいなかったって話や」

「え、ですが内乱の時ちょうど王国にいたヘレスさんが言うには、多くの民が巻き込まれたって……」

「どういうことや……? あ、言っておくけど、俺が嘘吐いてるわけやないからな。というかこれくらい王国内の情報を確認すれば分かることやないか」

「王国の警戒が強くて、独裁都市には全く情報が入ってないんです。さっきの情報もヘレスさんがたまたま……いえ、おそらくサトルさんの命令で探りに来たときにした話なので」

「へえ、遅れとるなー。まあそういう諜報活動の類はネビュラの方が得意か」


 何気ない会話から判明した帰還派と駐留派が掴んでいる情報の違い。




「本当なの、リオ?」


 帰還派の私はソウタ君と同じ認識だ。

 幸いにもここにはその出来事を一番近くでみていただろう人がいるので問う。


「……そういえばその疑問がありましたね。ええ、ハヤトさんの言っていることは事実です。サトルさんは魅了スキルを駆使して、内乱を起こす前日には一般人の避難を体制側に気づかせないまま完了させましたから。巻き込まれた人はいないでしょう」

「サトル君なら可能か……首謀者だから安全地帯とかも分かるだろうし。でも、だったらどうしてヘレスさんが嘘を吐いたのか……あのときサトル君の命令で動いていたわけだし、サトル君が意図したことなの?」

「はい。布石として嘘を吐かせた、と呟いたのは聞きましたが……何の布石なのは私にもさっぱりで……」

「布石か……」


 本当は一般人を保護していたサトル君。

 なのにヘレスさんを通じて私たちに一般人も巻き込んだと嘘を吐いた。


 その行動に何の意味があるのだろうか?


 サトル君の心証を悪くするくらいの効果しかないと思うんだけど…………。




「だぁっもう。分からないことばかり増えるねえ。

 別れ際の言葉からしてサトルは今もユウカのことを思っている。そしてガランさんたちから聞いた様子からして、サトルが王国をわざわざ支配した理由もユウカが絡んでいる。

 何がしたいのか分からないけど、そんなにユウカのことを思うなら側にいてやることが一番じゃないかい?」


 チトセの言う通りだ。

 私はサトル君の側にいれればそれだけで幸せだったのに……サトル君は違うっていうのだろうか?




「サトルは元の世界に戻るつもりはないんやろ? それでわざわざ王国を支配したってことは、俺みたいに欲望のままにハーレムを作りたくなったってことやないのか?」

「あり得ませんね。私が基本的に側にいましたが、サトルさんはそのような命令をしたことはありません」

「適当なことを抜かすようならぶっ飛ばすよ」

「おお、怖い怖い。じゃぶっ飛ばされない内に俺も話しとこっかな」


 ハヤト君はおどけるようにしてリオとチトセの集中砲火をかわす、

 駐留派、バックにいる犯罪結社ネビュラは何を目的に私たちに接触をもくろんだのか。


「俺からの話は提案ってことになるな。独裁都市は戦力を集めて近く王国を攻略にかかるんやろ?」

「うん、そうだけど」

「その作戦にネビュラも一枚噛ませて欲しいってところでな」

「……続けて」

「まずそもそもなんやけど、ネビュラは今の王国が支配されて各地にも緊張感が漂うこの状況は歓迎してなくてな。平和ボケしてた方が色々と事も運びやすいし」

「……是非はともかくとして、王国をどうにかしたいという気持ちは同じと。

 だけど独裁都市やそれに協力するオンカラ商会にも体面があるから、犯罪結社なんかと協力するわけにはいかないと思うよ。大体協力するフリして裏切るなんて平気でしそうだし」


 そもそも目の前のハヤト君だって、最初は仲間面していて裏切った存在だ。




「そこらへんはネビュラも理解しているみたいでな。というかネビュラこそ表の勢力と手を組んだとバレたら裏の世界での求心力が失われるし。

 だから協力は最小限、王国に攻め入る日取りを一緒にする、これだけや。独裁都市側とネビュラ側の二正面作戦で、王国の防御を分断出来るだけでもありがたいしな。

 『たまたま攻める日が被っただけだ』ってことにすれば体面も保てるやろ?」

「……姫様やオンカラ会長に相談しないといけないから、今ここで返事は出来ないけど提案はしてみる」

「頼むでー。まあ俺なんかに頼む仕事やし、ネビュラも是が非でもとは思ってないやろしな」


 私個人としては魔王城に辿り着けさえすればいいので了承したかったが、そういう事情で返事は保留した。



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