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152話 会議1


 ユウカこと私は神殿に集まったメンバーを見回す。

 私、チトセ、リオ、ガランさん、レイリさん、ハヤト君に加えて。


「よっ、久しぶりやな、ソウタ」

「わっ、ハヤトさん。久しぶりです」


 神殿で事務作業を手伝っていたソウタ君が合流して七人だ。


「何や、普通の反応やな。チトセみたいに怒られるかと思ったけど」

「今から大事な話し合いなのに邪魔するのも申し訳ないですし……それに僕の分までチトセが怒ってくれたのは見て取れるので」

「ほんとやで、ああもうまだ痛い……」


 ハヤト君はしきりに頭のゲンコツされた部分を撫でている。


「さっきのでも足りないくらいだよ。全く、持ってきた話ってのがしょうもなかったらもう一発……いや関係なく後でもう一発だね」

「酷くない?」


 チトセはまだ癇癪が収まらないようだ。




「はいはい、静かにしてくださーい」


 リオがパンパンと手を叩きながら呼びかける。

 話し合いの進行はリオが率先して取ってくれることになった。久しぶりに見るリオらしい姿に私は感慨深い気持ちになる。


「さてそれでは四派閥情報交換検討会兼王国対策会議の方を始めて行きますが……」

「何や、その名前?」

「私は今決めました。ってどうでもいいところで引っかからないでください」


 開始早々ハヤト君が横槍を入れる。いやでも長くて気になるところだ。


「名前の通りそれぞれが持ち寄った情報を交換検討して、どうにか王国に対抗する方法を考えようということです。そのためにも最初は……」

「私が話そうかな」

「ガランさん」

「私の情報が一番直近で知らない者の方が多く顛末も気になっているだろう。それに一番この場で信頼されていないようだからな。情報を開示することで協力するつもりがあるところを早めに示したい」

「うーん、そうですね……分かりました、ではお願いします」


 挙手したガランさんにリオが発言権を譲る。




「ありがとう。では話そう。事の始まりは私たちが八個目の渡世とせ宝玉ほうぎょくを手に入れたことで――――――」




 そしてガランさんは語った。

 宝玉によって魔族の集団を呼び出し、敵対することになって、サトル君によって蹂躙されて、今は使命も何も無い、と。




「…………」


 気になる情報が渋滞している。一つ一つ確認しないと。




「魔族たちを呼び出して戦力の増強ねえ。魔神復活ばかり言ってたから盲点だったよ」

「そうですね、私も見落としていました。サトルさんが気付かなかったらヤバい事態になっていたかもしれませんね」


 私も同じだ。まあリオも気づけなかった計画に私が気づけるはずがない。


「でも最後には全員死んだってか。良い女もおったやろうに残念やな」

「もう、ハヤトさん! ……えっと、レイリさんでしたか。失礼なことを……」

「別に気にしていない。ただ同じ種族のやつらが死んだというだけだ。それに今の私にはガラン一人さえいればいい」


 ハヤト君の軽薄な言葉に、ソウタ君が気を遣うが、レイリさんは気にしている素振りもない。……っていうか二人の関係って、結構……その……。




「そうだ、気になることがある。魅了スキルの効果対象が『魅力的だと思う異性』というのは間違いないな?」

「はい、その通りです」

「だが、今回少年は当然のように女性の魔族たちをとりこにしていた。話を交わしたことすらない者を魅力的だと思うようなものなのか?」

「あ……言われてみれば……」


 そうだ、魅了スキルは女性をお手軽に支配できるスキルのように見えて、意外と色々な条件が存在する。そのせいで私とサトル君の関係も拗れたわけだし。




「それなら私も同じ事を疑問に思って聞いたことがあるんですが――」


 リオが口を開く。


「サトルさんが言うには『どいつもこいつも俺の駒になると思えば魅力的だろう』ということみたいです」

「それは……」

「実際ユウカと別れてから魅了スキルを失敗したことは一回もありませんでしたし、本当のことなんでしょうね。というかその段階で手間取っていたらこんなに早く王国を転覆させることは出来せんよ」

「……それもそうだけど」


 魅力的かどうかには本人の認識が大きく関わる。サトル君はそこまで割り切った考えをして……いや、でも。


「だとしたらどうしてレイリはとりこになっていない? 先ほどの戦闘、囲んでいた魔族を対象に放った魅了スキルの範囲にレイリもいたぞ」

「あっ、それもそうですね。以前の老婆に化けたときの記憶に今も引っ張られているとか……? いや、でも王国では普通に年配の市民にも魅了スキルをかけていましたし……」

「確か術者に特別な好意を持っている場合も無効だという話だったが、当然私は少年にそのような好意を持っているわけではないぞ」


 レイリさんも口を挟む。


「…………」

 他の魔族はとりこになったのに、レイリさんだけならなかった理由。

 それは魅了スキルの条件から考えて、サトル君が魅力的だと思わなかったからとしか考えられない。

 駒という考えからすれば、変身を使えて強いレイリさんは魅力的なのに……それでも思えなかったのは。




「ガランさんとレイリさんのことをよく知っていて……それでいて二人が特別な絆で結びついていると思ったから……なのかな?」

「どういう意味だ?」

「サトル君はお互いがお互いを想い合う関係が恋愛の理想なんです。話によるとそのとき背中合わせで戦い抜くつもりだったんですよね。それでサトル君は自分の理想の関係を体現している二人を見て……レイリさんをそこから奪うなんて出来なかった。

 うん、いくら表面上変わっていてもサトル君はそんなこと出来ない。だからレイリさんだけとりこにならなかった……」

「……いや、それは間違っているな」

「え?」


 ガランさんの否定に思わず顔を上げると、呆れたように溜め息を吐いていた。




「私とレイリがお似合いの関係だと? 少年も少女も節穴だな。私の好みはお淑やかな女性だ。気の強いレイリも悪くはないが、もう少し落ち着いて欲しい」


「え?」


「言うじゃないか、ガランよ。私だっておまえの何を考えているか分からないところは苦手だ。いざというときに頼れるのは良いところだがな」


「え?」


「言葉使いももう少し直して欲しい。まあ姉様に啖呵を切ったときは愉快だったがな」


「……」


「それを言うならそちらこそ私を抱えて飛ぶとき全く配慮してなかっただろう。お陰で揺れが酷かったぞ。まあそれでもおまえに包まれている安心感の方が大きかったが」


「……」




 きょとんとした顔で周りを見回す。どうやら二人以外は私と同じ反応のようだ。

 そして二人はというと至って真面目な顔つきでのろけているわけではないようだ。


「え、えっと……それではお二人はお互いのことをどのような存在だと思っているのですか……?」


 私はおずおずと二人に問う。






「共に生きていくと決めた者だな」

「ああ、果てるそのときまでずっと一緒だ」






 当然という顔つきで答える二人。

 



「………………」


 それって実質結婚じゃないんですか?


 とはその場にいる誰も口に出すことが出来なかった。



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