プロローグ
初連載です。お手柔らかにお願いします。
藤宮 麗は大学3年生だ。最近、回りが就職活動の準備でざわついてきたのもどこ吹く風。その時がくればなんとかなると思っている。
容姿は黒髪に黒目どこにでもいる普通の日本人。
趣味は小説を読むことと音楽鑑賞、特技はピアノとフルートが弾ける(吹ける)こと。
そんなやっぱりどこにでも居そうな女の子がモテるわけがない。当然彼氏いない歴=年齢で生きてきた。
そんな彼女は、今、急いでいた。
★
現在夜11時。私は、コンビニのバイトが終わってから急いで帰っている。夜道に出現する変質者を恐れているんじゃない。お化けが怖いのだ。怖い話は好きだけど、それは話を聴く側としてであって体験はしたくない!
暑さに長袖が張り付つく。ストレートパーマが落ちかかって若干ごわつきのあるセミロングが顔にもさり、とかかるので振り払う。
そろそろストレートパーマをかけ直さなければいけないなぁ、ついでにちょっと切ってもらおう、と考えているうちにたどり着いた大学の寮。私の居城である。
入口のオートロックの扉が閉まるのを確認して階段を駆け昇って3階へ。そこに私の部屋の扉がある。
すぐさま部屋に入って施錠、大急ぎで手を洗ってソーセージマヨネーズパンをかじりつつ、スマホと充電器を繋げて気のせくままにアプリを開く。
剣と上部の曲がった杖が交差する紋章と共に現れる題名アドランティナ伝説、それが私がハマって2年経つMMO RPG のオンラインゲームで、私が急いで帰ってきたもう1つの理由なのだ。
ゲームの開始画面に映る金髪に薄いブルーの瞳でレベル300の少女。これがアドランティナでの私、エルレインだ。
過去のお気に入りの小説で可憐な主人公から名前をもらったのだが、他にあまり意味はない。
そのままログインすると、待ちかねているギルドの仲間達に挨拶をする。
「こんばんは!やーっと、バイト終わりましたよー!!」
「おー、おかえり」
「仕事お疲れ様です!」
「エルさん、なんか連戦しよー」
みんなが、お疲れ、とかおかえり、とかなんとかと挨拶を返してくれる。みんな優しくて、面白くて、楽しい。これまでいろいろなギルドに居たけれど、みんな突然解散して潰れてしまってこのギルドに拾ってもらった。このギルドに拾ってもらえて本当に良かったといつも思う。
今日はメリーさんが連戦に誘ってくれたので、ボスのレアドロップを狙うことにした。
「パテあと二人ー!誰か来ない?」
「あー、俺いく。」
「あ、私も一緒して良いですか?」
こんな風にパーティを組んで連戦に行くことになったいつものメンバー。この3人が私のアドランティナにおける親友といって良い。
「あ、ちょっと特大ポー買ってくるから現地で待ってて」
どうやら、ジョーカーさんがポーションを切らしかけているため、しばらく待つことになった。
だが、待っていると、眠気が襲ってきて視界が揺らぐ。
あ、不味いな、今日はすぐに切り上げた方がいいかな、と、思っているうちに視界が更に大きく揺らいだ。
……もう、ダメかも。
こうして、私は、目を閉じた。
─その途端
突如として、むわっと土の臭いと、緑と香りと、肌に湿気と解放感。
すぐさま目を見開く。
……いや、なんで!?
飛び込んできた景色は靄の中に佇む視界いっぱいに広がる緑の大自然だ。
部屋で座っていた筈の私は、椅子もない森に突然移動してそのままドサリと膝をつき項垂れたのだが、そのせいで更なる衝撃を受けた。
まず、項垂れた私の頭からは金色の髪が、そして、身に付けていたのは青紫のドレス、そのヒラヒラした袖口から覗く白い腕、その左手にはスマホ。
飛び上がってうわっと叫んでみる。良かった、声は私だわ。いや、良くはない。
反射でスマホを掲げてみる。黒い画面に金髪青目の少女が映った。
……あ、これはゲームの私、エルレインなのか。凄いなぁ、こんなに鮮明な夢は初めてだよ。
今は考えることを止めることにした。現状把握が最優先だ。
念のため、スマホを起動させると、明かりは付いた。ただ、アンテナには×がついていた。ある程度、予感めいたものはしていたので、驚かなかった。というか、夢で電話できたとしてなんになるとも思えない。
とにかく、ここを早く出なきゃならない、なぜかそんな気がして、進むことにした。
風もない、自分の歩む音しかしない、ただ自然と空気だけがそこにあるとても静かな森をひたすら歩く。
ようやく違う光が見えて、森の出口だと、急いで駆け寄った。
やはり、出口に近づいているようで、地面に黄色の強い砂が混じり始め、森とは別の乾いた空気を感じた。
しばらく駆けると、前方に旗が建っていた。剣と上部の曲がった杖が交差する紋章─
まるでここからがアドランティナだと言わんばかりだ。
私は思わず立ち止まった。
このまま進んでも良いのかここで初めて迷った。この旗をくぐることでなにかとんでもないことが始まる、明らかな予感がした。
……でも、行くしかないよね。ここにいてもなにもできないのだし。
こうして、私は旗をくぐり、冒険の世界へと踏み出すことになった。
ご覧くださり、ありがとうございます。
次回、始まりの砦につけるようにします。
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なお、ご指摘の際は、余り刺さないでくださると嬉しいです。筆者はとても、打たれ弱いのです。