7、オタク気取り登場!?
何でだ、どうして俺だけが、あんな目に遭わなくちゃいけないんだ。酷いよ、世の中間違ってるよ。何で俺は、あんな奴に好かれないといけないんだ、どうして俺はアイツに付きまとわれなくちゃいけねぇんだよ。不公平にも、程があるってもんだろ!
「そうだよ!!世界は平等でなくっちゃ!!」
「ぐがっ!!」
ん?今何か、ぶん殴ったような……。気のせいか。
「な、何するんだよ、ちみ!」
ちみぃ!?何だ、その古めかしい呼び方は!!
「ちみ、人を殴っといて、謝らないのなんて、ありえないんじゃないかな?非常識じゃないかな?」
非常識なの、アンタじゃない?何で夏なのに、完全防寒?そんなに寒い?病的な、何かかよ。
「聞いてるのかい、ちみ」
「あい、すいませんでしたぁ」
「ちみ!そんなの謝ってるうちに入らないんだよ!もうっと、真心込めて、暖かく!」
なんか、鬱陶しいのに絡まれたな……。俺は、早く帰らなくちゃ行けねぇんだよ。いつまた森野がくるか、分かったもんじゃないからな。
「すみません!うちの子が殿方様にご迷惑をお掛けしたようで!!」
ん?この声は母さんじゃないぞ?
……いや、それはさすがにないだろ。どんだけ足速いんだよって話だよな。ありえない、ありえない。
「うちの新ちゃんが、本当に―――」
「お前は俺の何だーー!!それに、慎の字違ーーう!!」
背負い投げは見事に決まった。柔道やってないのに、よく出来たな、俺。馬鹿力って奴か?
「ちみ、ちみ!!れでぃには、暴力振るっちゃいけないよ!!」
なんか、レディの言い方がしゃくに障るんですけど!!ホームランなんですけど!!
「いいえ、いいんですよ、こんなの日常茶飯事ですから」
「いえ、良くないでしょう」
「いいんです。私、そういうの、大好きなんで」
出たよ、ドM発言。もう聞き飽きたって言うか、なんて言うか……。はあ。やっぱ、疲れたな、うん。
「すごい!!ちみ、すごいよ!背負い投げが出来るなんて、ひっっじょーにすごい!」
何だかよく分からないけど、感動してるみたいで。いきなり手を取って、喜び始めた。
「ちょっと、そこの人!私のダーリンに触れないで!」
「ダーリン?」
「その人は、私の恋人よ!」
「見ず知らずの人に、変な事を言うんじゃねぇ!」
起き上がりかけていた森野の頭を、思いっきりはたく。見事にコンクリに激突しました。
……ちょっとやりすぎかな?さすがにコンクリは痛いよな……。
「……何故、なぜなの?痛いのに、こんなにも快感だなんて!痛いのに、気持ちいい!!」
「……お前、やっぱキモいよ」
コンクリに頭ぶつけといて、無事だったなんて、ある意味すごい。
……てか、血!頭から血が流れてきてるよ!ちょっとした、ホラー映画みたいになっちゃってるよ!!
「ああ、ダーリンを思いすぎて、頭がくらくらするわ」
「血、流れてるからね。当然だな」
「ああ、こんなにも愛しいダーリンがぶれて見えるわ」
「血、流れてるからね」
「あたしを祝福してくれるのね、ダーリン。貴方の為なら、私は地獄にだって逝きます」
「もう、片足突っ込んでるぜ」
「ああ、ダーリン。私、森野美咲は、あなたに会えて幸せでした」
「遺言ですか、それは?遺言なのか?」
「……ダーリン。私がいなくなっても、幸せにね」
「お前がいなくなったら、即幸せだよ」
ぱたりと倒れて、死んだ振り。よく見たら、頭の血、ケチャップでした。今日給食に出てた、ちっこいケチャップ。アレ、とって置いたんだな……これのために。
「ちみ、どうするの?彼女、死んじゃったよ?」
……目の前に、馬鹿がいるの忘れてた。死んでないよ、この人。助けてくれるの、待ってるだけだよ。
ああ、助けなくっていいってば。ほら、もう顔がにやけてんじゃん。ドッキリでした的なノリになりかけてんじゃん。
「残念でしたぁ。これは、ドッキリだゾ、ダーリン!」
「そのカンペ、どこからだしたぁ!!」
いつの間にか持ってたカンペには、『ドッキリ、大成功!!』と書かれてたけど、俺、引っ掛かってないから。引っ掛かったの、そっちの馬鹿だから。俺、無関係だから。
「ちみ!ボクを騙そうなんて、無駄な事だよ!全て知ってたもんね。気付いてたもんね」
恥ずかしいの隠し切れずに、嘘ついたーー!!顔真っ赤だよ、本当に、顔から火が出そうだよ!!
「……何でアンタが騙さてれてんのよ、ダーリンはどうしたの?」
ここにいますよーーー。見えません?ケチャップで、目が見えませんか?
「……どうしてなのかしら?目の前が真っ赤だわ」
そりゃ、ケチャップまみれですから。
ほんとに、通行人の人達ビビッてるからな、森野。いい加減に、その顔拭けよ。
通行人A「何あの人、ヤバくない?マジ、ヤバくない?」
通行人B「ありえなくない?ヤバイの前に、マジありえない」
ほーら通行人AとBが変な会話してるだろ?気づけよ、その話の先に、お前はいるんだぞ。
「何だか、熱い視線を感じるわ。モテ過ぎるのも、……罪よね」
勘違ーーーーーーーーい!!違うよ!!違うよ森野!!それは確かに熱い視線かもしれないけど、意味が違うから!!紫外線と、赤外線並に違うから!!
……そういう俺は、紫外線と赤外線の違いがいまいち良く分かりません。なんか、すみません。ホント、すみません……。
「ちみ、それは違うよ。あの熱い視線は、このボクに向けられたものだよ」
それも違ーーーーーーーーう!!何、この二人?勘違い、大好き!?
「違うわ!あんたみたいなドブネズミに、熱い視線なんて、くるわけないでしょ!」
「ちみこそ、ドブネズミどころか、ハツカネズミじゃないか!」
おーい、ネズミは全て汚いやつだと思うなよ。ドブネズミは確かに汚いかもしれないけど、ハツカネズミは結構綺麗なやつだぞぉ。ちょっとした違いだけど、全国の頑張ってるネズミさん達に失礼だぞぉ。ネズミだって頑張ってるんだぞ、今年の干支なんだぞ。
「言ってくれるじゃない、馬鹿ネズミ」
お前もな。
「よくそんな事が言えるね、アホネズミ」
お前もだってば。
「女だからって、覚悟しないわよ」
……おい、森野。お前の目は、節穴か?そいつ、どっからどー見ても、男だよね?
それに、その台詞、お前のじゃねぇぞ。男の台詞だぞぉ。根本から、間違ってるぞぉ。
「その台詞、そのままラケットで打ち返してやるよ」
打ち返して正解だよ。だけどさ、何でラケット?普通なら、バットとかじゃね?何で、少し影の薄い方にした!?
「だったら、キャッチしてやるわよ」
おーい、これ、野球の話じゃないかい?キャッチしちゃダメだよぉ。それに相手はラケットで打ってるぞぉ。打ち返せよ、馬鹿。……て、それじゃダメか。
「だいたい、何、その格好?ここは北国じゃないのよ。ルールル言ってても、狐なんて、来ないわよ」
「それぐらい知ってるよ!ちみ、それ以上ボクを馬鹿にしてごらん。痛い目に遭わせてやるからな」
「やってみなさいよ!ていうか、どうか、やってください!コテンパンにしてください!」
「ちみ、やっぱりここ、いかれてるね。天才的なボクには、君の頭の中が分からないよ」
「当たり前でしょ!私を分かってくれるのは、ダーリンだけだもの!」
「誰もちみのことなんて分かりたくないって思ってるよ。ほら、ボクの大切なフィギュアちゃん達もそう言ってるよ」
馬鹿な会話が……オタクな会話に変わりそうだぞ?何だよフィギュアちゃん達って。どんだけ大切にしてんの。
「フィギュアを持ち歩いてるなんて、寂しい男ね。私が持ち歩いているのは、ダーリンへの愛!それだけよ!」
どっちもどっちだよ。どんだけマニアックなんだよ、どんだけストーカーしてんだよ。
「そんなんじゃ、ちみの愛は届かないね!」
「届くわ!ずっと前から、想ってるんですもの!」
「ちみ、オタクの風上にも置けないね」
「いいわよ、別に。オタクじゃないもの。じゃあ、あなた、好きなキャラの名前、全部言える?」
「……え?……そ、それはさ。それだよ」
言えないのかよ!お前が一番オタクの風上にも置けない存在だよ!!
「私は言えるわよ!ダーリンよ!」
それ、確かにキャラだね!だけど違うから!ダーリンなんてキャラいないよ!!俺、瀬川慎吾だから!瀬川ダーリンて、どんだけ変な名前だよ!キモいし、なんかウザいよ!
「ちみがそれなら、ボクだっていえるぞ。猪上正樹!」
……え?誰、それ?初めて聞くんですけど……。
あっ!!もしかして、自分の名前言っちゃった?自己紹介しちゃった?
てか、それ、オタク関係なくね?
「何!それならこれはどう!葛野木サチコ!」
「……ふふ、ちみの言おうとしている事は、全て分かっているのだよ、森野美咲」
あ、確かにキャラの名前だ!スゲェ!話の中に混ぜて言ってる!!
「卑怯よ!オタク!坂井稔!」
だからっ!オタク関係ねぇっての!!
「オタクじゃない!マニアだ!小橋泰助!」
どっちもどっち!!ていうか、似てるから!!
「そんなの、どっちだっていいわ!斎賀良美!!」
……確かにどっちでもいいな。これに関しては、森野に賛成。
さあ、これでキャラの名前、すべてでつくしんたんじゃないか?次の分の名前出せば、何とかなるかな?
「……ちっ、仕方ない。これが最終兵器だ!下弦鴉!!」
それ、ありぃぃ!!!!!!!!作者の名前だよね、それ。これ書いてる人の名前だよね、それ。
それが最終兵器って……いいのかよ!!作者!!
天の声 (私的には、OKです!)
返事、キタァーーーーー(0Ц0)ーーーーーーーー!!
「ふふ、そんなの、最終兵器でも、核兵器でもないわ。本物はね、こういう事を言うの!瀬川麻理!」
「えぇぇえぇぇぇぇ!!」
何で俺の母さんの名前、森野が知ってんの!?え!?えぇ!?
「も一つオマケに、瀬川俊喜!」
何で!?何で父さんの名前まで!?どうしてだ!!
どこで知ったんだ、あのストーカー女。まだ、誰も知らないはずなのに……。どこで調べやがった、あんにゃろぉ……!!
「……ボ、ボクが負けた。………そだ、うそだ!!シンジラレナァイ!!」
何故に最後カタコト!?あの、どっかの監督のマネか!?
「負けを認めて、去りなさい。コブタちゃん。……さあ、ダーリン!……あれ?」
その場を逃げ出して、正解だと思いませんか!?あのままあそこにいたら、こっちの頭をどうかしてしまいますよね!?
どうか、逃げてしまった事、許してください!今日は、本当に疲れたんです!朝からずっとツッコミっぱなしで、死ぬかと思ったんです!!
それに、異常なまでの、ストーカー行為。……110番、したほうがいいですかね?