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ドSな俺と、ドMなアイツ  作者: 下弦 鴉
第一章 彼の周りの不思議人物たち
6/117

6、女王様は勘違い!?

 ……皆さん、奇跡が起こりました!俺、生きてます!死んでません!もう放課後で、しかも部活も終わったのに、俺、生きてます!これ、奇跡ッすよね!

 ああ、やっぱり神は、俺を見捨てなかったんですね!有難う神様!有難う!!

 でも、本当の試練はここから。どうやって、待ち伏せしている森野にバレずに、無事に家までたどり着けるか。そこが問題なんですよ。

 「アレ?瀬川じゃん。こんなトコで何してんのよ」

 「な……」

 ここで一つ分かった事、一人でこそこそしている人には、急に声は掛けないでください。多分、寿命が三年くらい縮みます。……ここ、テストに出ますよ。家庭科的なテストに。

 「何だよ、急に声かけんじゃねぇよ!」

 「いいじゃない、気にしない、気にしない」

 「お前はマイペースすぎんだよ!」

 女子に向かってストレートを入れる俺って、……男失格?

 「……ひっどい!何すんのよ!」

 「あ゛あ゛〜分かったから、大きな声は出さないでくれよ」

 「……ヤダって言ったら?」

 「……え?」

 「もーりーのーさーーん!!ここに、瀬川君が―――!」

 「だぁーーーーーーー!!」

 無理矢理階段登らせて、森野の様子を見る。あいつは飢えた野獣みたいにやってきて、周りを見回してたけど、いつの間にかいなくなってた。……はぁ、よかったぁ。

 「何すんのよ、レディに向かって!」

 「……お前、森野と似たような事言うな。……なんか、ムカつく」

 「……そんな事言うと、また叫ぶよ」

 「それはやめろ、いいな。叫んだら、……ゆるさねぇぞ」

 「ふふ、いいわ」

 この根性が曲がった女の名前は、斎賀良美(さいが よしみ)。名前に『良』が入っているのに、全然いい所なんてない、性悪女だ。根性から腐ってる、金○先生が言っていた、腐ったみかんとは、間違いなくこいつの事だ。絶対に。

 「ねぇ、瀬川。一緒に帰ってあげればすむ事じゃない。何でそんなに嫌がるの?」

 「……俺は、あんな馬鹿でアホで間抜けで非常識で頭がいかれてて馬鹿な奴、大っ嫌いなんだよ!」

 「……今、馬鹿って二回言ったわ」

 そう言って楽しそうに笑う、こいつはそういうところを指摘するのが大好きなんだ。

 よく昼ドラで見るだろう?

 『サチコさん。ここにまだ埃が残ってますわよ』

 『す、すみません。お母様』

 『まったく、ちゃんと掃除くらいしてよね。これだから最近の嫁は嫌いなのよ』

 的な発言を繰り返す、姑的な奴だ。いじらしく隅々まで見回して、相手の欠点を探し、見つけた欠点で、とことん相手を貶める。

 だから、相手に欠点がないときは、余計に苛々して、嫁に当たる。そんな姑魂の集大成はこいつなのだ!

 「悪いかよ、それだけアイツは馬鹿だって事だよ」

 「……ふふ、それなら別にいいけどぉ」

 うわぁ〜〜!!ムッカつく!森野以上にムカつく!アイツと違ったこの感じが、かなりムカつく!!信じられないほどムカつく!!

 「そうだ!私が囮になってあげようか?」

 「囮ぃ?」

 「だって、そうしたら、瀬川は逃げられるでしょ?」

 「……そう、だけどさ。お前の事だから、なんか条件付なんだろ?」

 「ふふ。さすがは、この世界の女王の私が認めた男だけあるわ。分かってるじゃない」

 その笑いは何だ。そして世界の女王って何だ。認めた男って何だ。分かってるって何がだ。

 「今週の土曜日、デートしてくれたらいいよ」

 「はあ?」

 思わず大きな声がでちまった。ヤバイ。森野に聞こえたかも。

 「ダーリン!?どこなの!!ダーーリーーーーーン!!」

 「ふふ、呼ばれてるわよ。どうするの?」

 世界一のM女か、それとも、世界一の勘違い女か。どっちを選ぶ、俺。どうする、俺。どうなる、俺。成せば成るのか、俺。……でも、何を成せばいいんだ?

 「何でデートなんだよ」

 「ふふ、……タイプだから。かな?」

 「……嬉しくないのは、どうしてだろーな」

 「ふふ……そんなに私に叫んで欲しい?」

 それだけは嫌だ。でも、何でこんな腹黒女とデートなんだ。何で俺は、こういう変な奴にばっかにモテるんだ。かなり嬉しくない。喜ばしくない。

 それに、この『ふふ』って笑い方、かなり気に食わない。人を見下してますって、自分から言ってるような笑い方だからな。

 「ふふ、どうする?」

 ……そういえば、近所に住んでるパブのおばちゃんと似たような笑い方だな。……将来は、極道の妻になりそうだな、こいつ。

 あ、そうだ。良く考えてみろ、俺。デートは約束しても、行かなければいいんだぜ。約束だけして、後はなんか理由つけて逃げればいいんだよ。そうだよ、俺!ナイスアイディア!!

 いや、待て待て。その後この顔の広い腹黒女の事だ。俺のよからぬ嘘話を作って、周りに言いまくりそうだな。そう考えると、森野より質悪いかも……。

 「ふふ、どうするのよ」

 「……デートは、しない。自力でどうにかするから、あっち行ってろよ」

 そうだよ、俺。後で厄介事に巻き込まれるのは、ゴメンだよな、俺。自分が一番大切なんだよな、俺。……って、女子からみれば、最悪な奴って、今の俺じゃね?カッコ悪くね?……まあ、仕方ないか……はぁ。

 「アンタ、後悔するよ、こんな美人フッて」

 自分で自らの事を美人と言いますか、普通!?

 「極道の妻になって、アンタを殺しに行くかもしれないよ」

 ……え?これって、殺人予告?しかも、極道って、俺の想像通りじゃん!なんか、怖っ!!

 「もしかしたら、祟っちゃうかも」

 呪○じゃん!テレビの中から、出てきそうだよ!!……って、それはリ○グか。

 「……あ、でも、呪い殺すの方が楽しそうかも」

 楽しそうってなんだよ!軽く危ない事言ったよ、この人!呪い殺す事が楽しいって、狂った人の発言だよね!?そうだよね!?

 「ふふ、後で後悔するのは瀬川、アンタだよ」

 なんか怖ぇよ。毎晩夢に出てきそうだし。ふふって笑いが、呪いみたいに聞こえてきたよ……。

 「みぃつけたぁ」

 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 妖怪ストーカー森野だーーーー!!悪霊退散!!南無阿弥陀仏!!極楽浄土でも、天竺でもどこにでも逝ってくれ!!頼むから、逝ってくれ!!

 「そんなに私に会いたかったの、ダーリン」

 「会いたくなかったんだよ、ボブ・サ○プ並に会いたくなかったよ」

 「私って、そんな存在?南、嬉しい!」

 「何でだよ!どこが、どう嬉しいんだよ!もう、タッ○ネタはやめろ!もう飽きたんだよ!」

 「じゃあ、他のならいいの?」

 「よくないわぁ!!」


 上履きを投げつけて、とりあえず逃げてきました。正門まで。そこまでしか体力が持たなかったと言うか、防具が重過ぎるというか……。そこまでで、俺には精一杯だったんです。マジで。

 「ダーーーーーーーーリーーーーーーーーーーーーーーーン!!」

 来た!馬鹿アホ間抜けM女のストーカーが!!か、隠れなくちゃ!

 「あれ?いないわ。でもダーリン。私をなめちゃいけないわよ!」

 なめたかねぇよ!なめる気力もねぇよ!!それどころか、今すぐ殴りつけたいよ!!

 「美咲探知機、スイッチ音!!」

 音の字ちげぇよ!!入力ミスじゃなくて、マジで違うよ!!イントネーション、微妙にちげぇよ!!気付けよ、馬鹿森野!!だから英語の先生にも「what?」しか言ってもらえねぇんだよ!!

 「あ、間違えた。ダーリン探知機、スイッチ音!!」

 間違えたのそこーーーー!?!?普通、イントネーションだろ!?

 「馬鹿な女がタイプなの?」

 「うわっ!何で極道の妻がいるんだよ」

 「まだ決まった訳じゃないわ。未来の話よ、未来の」

 お前の場合、未来じゃ済まされない気がするんですけど……。

 「で、なんでいんの?」

 「ン?何となく。人の恋路を邪魔するのって、楽しいわよね?」

 不敵な笑みで言う事は、それですか!?お前、ほんとに中学生!?実は高校生以上じゃねぇのか!?

 「ダーリン発見!!」

 「世界発見的なイントネーションで言うな!!ウゼェよ!!」

 「だって、さっきのネタ、飽きたんでしょ?」

 「そーゆー問題じゃねぇんだよ!!」

 「あ、待ってロミオ!!ジュリエッタを置いてかないで!!」

 「だぁれがロミオじゃボケェ!!しかも、ジュリエッタじゃなくて、ジュリエットだよ!!ばぁか!!」

 「ああ、懐かしい屈辱的なお言葉。森野美咲、死んでも悔いはありません」

 「じゃあ、死ねぇぇぇ!!一生よみがえってくんな!!」

 「嫌よ!!ダーリンのためだったら、地獄の底から這い上がってきて見せるわ!!」

 「悔いあんじゃねぇかよ!おもいっきし、悔いあんじゃん!!」

 「そうよ、あなたを置いて、先に逝ける訳ないじゃない!!あなたもそうでしょ、ダーリン!!」

 「できれば先に逝って欲しいよ。いや、先に逝け。頼むから先に逝け。150円アゲルから!」

 「何で150円なの!私はそんなに安い女じゃないわ!!」

 「ジュース代だよ!!念のために持ってんだよ!」

 「私よりジュースを取るのね!ヒドいッ!酷すぎるわ!!」

 「ふふ、そうよ瀬川。せめてジャンプ代くらいにしてあげないと」

 「なんで斎賀がここにいんだよ!!」

 「ン?帰る方向が一緒だから」

 鬱陶しいのが増えたよ。森野だけでも疲れるってのに……。

 「そうだ、森野さん。瀬川君をかけて、勝負しない?」

 何故に俺をかける!!……てか、こんな展開、前にもあった気がするんですけどっ!!

 「いいわよ、掛かってきなさい……ええっと」

 相手の名前知らんのかいーー!!その時点で、森野の負け決定だよ!!

 「あら、私の名前、知らないの?」

 ほーら指摘された!思ったとおりだ、さあ、どうする、森野。

 「……あ、あなた、隣のクラスの、……アレでしょ、あの人でしょ?」

 分からないからごまかそうとしてるよ!汚い!!やり方が汚い!!

 「アレって、何?」

 「アンタねぇ、私に屈辱的な言葉を言っていいのは、ダーリンだけなのよ!!アンタにそんな事言われたって、嬉しくないんだから!!」

 十分嬉しそうに見えるんですけど、頬がもう真っ赤に染まってるんですけど。顔にやけてるんですけど。

 「……ふふ、その割には嬉しそうじゃない?」

 「……嬉しいわよ、それが何?何か問題でもありますか?」

 何で逆切れ!?どこが原因!?何故にキレる必要があった!?

 「……ふふ、私とやり合う資格くらいは持ってるみたいね」

 何をやりあうの?

 「……ふふ、あなたこそ」

 おーい森野。キャラかぶせんな。読者様に分かりにくいだろーが。

 「ふふ、それでも私を真似しているつもり?」

 「ふふ、あなたこそ、何様のつもり?」

 えーと、解説しなくても分かる方は分かると思うんですけど、先に言ってるのが斎賀で、後のが森野です。分からなくなったら、馬鹿っぽい発言してる方が森野だと思ってください。

 「ふふ、あなた色気に欠けるわね。そんなんじゃ、立派な男はものに出来ないわよ」

 「ふふ、私にはダーリンという婚約者がいるの。だから、そんなもの必要ないわ」

 「ふふ、あなたも馬鹿ね」

 「そうよ、かばよ」

 「ふふ、頭のねじ、もう一本も残ってないんじゃなくて?」

 「ふふ、あなた、馬鹿ね。頭にネジなんて元から付いてないわよ」

 「……ふふ、そこまで頭の鈍い子だとは思ってなかったわ」

 「ふふ、どういたしまして」

 「……ふふ、褒めてないわよ。どちらかといえば、馬鹿にしてるわ」

 「かばで結構よ。私、かばは大好きだから。あの首の長さなんて、素敵じゃない」

 「……ふふ、それ、キリンじゃない?」

 「……」

 おーい森野、言い返せなくなるタイミング違うぞぉ。てか、もっと前から気付くべき失点に、お前気付いてないだろ?やっぱり、お前、死んでも直らないほど酷い馬鹿だろ。

 まず、俺は婚約してねぇし、ダーリンでもねぇし。

 馬鹿って言ってるのに、何故か、かばに変換されてるし。

 かば好きって言ってたのに、キリンと間違えてるし。どこをどう見ても、全然違う動物なのに。

 「私の勝ちね、お馬鹿さん」

 「私、おかまじゃないわっ!!」

 おーーーい!!どこをどう間違えた!どうしてお前は聞き間違いするんだ!?どうして変な方向に変換されんだ!?

 「……ふふ、あなたとは付き合いきれないわ。帰るわね、じゃあね」

 本当に、銀座のママみたいに疲れきってる!タバコ吸いながら家に帰ってそうだよ!!そんでもって、家で、焼酎水割りで飲んでそうだよ!!いや、ブランデーを一人で飲んでるかも!!

 「やった、勝ったわ、ダーリン!!」

 「抱きつこうとすんな!!」

 飛び掛ってきた野良猫を払って、俺はそいつをほっといて、家に帰ることにしました。

 もし、道端で、半べそかいてる怪しい奴を見かけても、声を掛けないでください。怪しい世界へ連れ込まれますよ。

 そんな奴を見つけたら、こう言ってやってください。

 「もう、帰れば?」

 きっと、期待通りに返事してくれますよ。

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