4、大阪弁男に注意!?
朝から疲れて、中学生のハードな生活がのりきれるだろうか。生きて、またあの家に帰れるだろうか。
「どうしたの、ダーリン?」
「……はぁ」
こいつのせいで俺は疲れてるって言うのに、何でこいつは元気なんだよ。何で一緒に学校行かないといけないんだよ。普通に考えたら、何で今日に限ってこいつは俺の家に来たんだ?なんか特別な日でもないのに。
「ダーリンってば、無視しないでよ!美咲、すねちゃうよ。プンプン」
ぶりっ子して、さとう○緒の真似してる。でも、今日はこれ以上ツッコムと、生きていけない気がするから、やめておこう。
「ねぇってばぁ、ねぇ、ねぇ〜。無視しないでよ、ダーリン」
「……」
「ダーリン、聞こえてる?聞こえないなら、私、ドリカムの『君にしか聞こえない』歌うよ?歌っちゃうよ?」
「勝手に歌ってろよ、つーかなんで、そんな歌知ってんだよ」
「あ、やっとツッコミいれてくれた!今日はもうだめかと思ったゾ」
「だぁかぁらぁ、語尾にハート付けんな。しかも、何でカタカナ?ディグレの千○伯爵気取りかよ」
「マニアックなところついてくるね、慎ちゃん」
「その呼び方もやめろ」
「嫌よ、これがなきゃ私、死んじゃうよ!?」
「じゃ、いっその事死んでくれよ、頼むから」
「それはダメやで、瀬川」
うわっ。新キャラ登場だよ。てか、こいつ誰?何で俺の名前知ってんの?
「誰ですか、アンタ。私とダーリンの幸せの時間を奪わないでください」
「な……そ、そんな関係だったんかいな。……知らんかったわ」
「誤解しないで!そんな関係じゃ、一切ありませんから。ついでに、君、誰?」
「あてかいな?わての名前は坂井稔だす。今後とも、ヨロシュウたのんまっせ」
な、何故に大阪弁!?しかも、全然なまり消す気ねぇし!
「で、小堺君私たちに何の用?」
名前ちげーよ、森野。お前、ホント記憶力ねぇな。
「小堺じゃなくて、坂井だす。用っちゅう用はねぇんだけど、暇なんで、一緒に学校行きません?」
「いい訳ないでしょ!私の幸せを奪う気!?」
「じゃあ、俺と一緒に行こうよ、坂井君」
「ほんまかいな!おーきに!じゃ、誰かはん、ほなさいなら」
本当に嬉しそうだな、こいつ。無邪気すぎて、怖いくらいだ。それに、なんか、あれっぽい気がする……。
いや、そんな事を思っちゃいけないぞ、慎吾。こいつは、この坂井様は、俺を森野の魔の手から救ってくれた、いわば勇者様だぞ?そんな優しい奴に向かってホ……なんて言えないだろ!そうだろ、俺!しっかりするんだ、慎吾!立て、立つんだ慎吾!
……て、アレ?なんか、いつの間にか他のものが混ざってきてるぞ。きっと、森野と朝っぱらから会ったからだろう。うん、きっとそうだ、そうに違いない。だから落ち着いていけ、自信を持って生きるんだ、慎吾!
「待って、待ってよダーリン!この私を、婚約者の私を置いて行こうって言うの!?」
「だぁれがフィアンセだよ!お前と結婚の約束をした覚えはねぇよ!」
「酷い!私を裏切るのね!」
「裏切るも何もねぇだろが!」
「裏切ってるじゃない!何で私の愛妻弁当を食べてくれないのよ!何で私の愛を受け取ってくれないのよ!そんなの……酷いじゃない!」
「愛妻弁当じゃねぇだろ!自分で食ってたじゃねぇか!愛なんて欲しくねぇし、受け取る気もねぇし!」
「小腹が減ってたから、……つい。テヘ」
「テヘ。……じゃねぇだろ!知ってるか、テヘって真顔で言う女に、ロクなのはいないんだぜ?」
「え!?ほんまかいな!」
「……変なところで首突っ込むのね坂井君」
照れているのかよく分からない表情で笑ったけど、やっぽりなんだかアレのにおいが強くなっただけな気がする。
「いいから行こうよ、坂井君」
強引だけど、腕を引っ張っていったら、何だかかなり重かった。そんなに重そうな外見じゃなかったのに。……もしや!アイツか!?
振り返ってみると、予想どーりに奴はいた。坂井君のもうかたっぽの腕を握ってる。てか、掴んでる。
「離さないわ。この手だけは、離さない!」
「……それって、坂井の腕だろ?好きにしろ」
そう言って、腕を離して、逃げるように走った俺を、森野の声が追いかけてきた。
「どうして逃げるの!?マイダーリーーーン!!」
「追いかけてくるな!ストーカー女!!」
とりあえず、俺はホモとストーカーから逃げたかっただけなんです。そして、これ以上そこにいたら、本当に命が尽きる気がしたんです。
ああ、神様。こんな哀れな俺を、何故助けてくれないんですか……。




