表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドSな俺と、ドMなアイツ  作者: 下弦 鴉
第一章 彼の周りの不思議人物たち
21/117

21、親馬鹿の親馬鹿!?

 森野の被害に遭う事もなく、やっと家にたどり着く事が出来ました。ちょっと嬉しいっすね。

 「ただいまぁ」

 いつもの如く、そう言った。なのに、返ってくる言葉は―――。

 「慎吾ぉ!!会いたかったよぉ!!」

 「ゲ!親父!!」

 そう、涙目をして飛びついてくるキモ……ウザい人こそ、俺の親父。世界一嫌いな人物。……あ、森野も嫌いだな。まあ、両方世界一嫌いな人物って事で。

 「帰りが遅いから、パパ、心配しててんだぞ?」

 「……いつもと変わらないんだけど」

 いかつい顔してるくせに、『パパ』ってありかよ……。しかも自ら言いやがった。

 「パパ、あまりにも心配すぎて、学校にTellしようかと思っちゃったよ」

 「……いちいちTellなんて言わないで、電話って言えよ」

 「それぐらい心配だったんだぞ?ああ、無事に帰ってきてくれて、パパ、本当に嬉しいぞ」

 「……無事に帰ってこられない学校なんて、あるのかよ」

 「ああ、慎吾。もっと顔をよく見せておくれ」

 「……十分近いと思うんだけど」

 もうそんなに離れていない位置に、親父の顔はある。いつもは怖い顔してるのに、こういう時は、気持ち悪い程に笑顔になる。

 「……離れてくんない?」

 「イヤだよ、せっかくの再会じゃないか。パパ、ずっとお前の事を考えてたんだぞ」

 「……ありがたくねぇよ、バカヤロォ」

 「コラ、パパに向かってそういう言い方はしちゃいけないだろ?」

 「……じゃさ、離れてよ。とりあえず」

 近い、近い、非常に近い!!もう、目の前が親父の顔しかねぇんだけど!親父以外のものが、何も見えないんですけど!!

 「離れたら、消えたりしないよな?慎吾は、ずっと傍にいてくれるよな?」

 何なんだよ、この親父。女か?メッチャダンディな顔した女なのか!?

 「……キモッ」

 「慎吾!」

 「……んだよ」

 急に声を出すな!怖いだろ?いくら親父でも、元から怖い顔してんだから、それ以上怖い顔するなよ!!寿命が縮むだろ、コンニャロッ!!

 「いけません、いけませんよ!パパに向かって、暴言はいけません!」

 じゃあ、この距離はどうすればいいんだよ?いくらなんでも近すぎるだろ?ドアップはキツいだろ?

 「分かった?」

 「……」

 「聞いているのか、慎吾?」

 脅しですか?これは脅しなんでしょうか?

 親なのに、誘拐犯に見えるんですけど。俺、誘拐されそうなんですけど、親なのに!

 「わ、分かったよ、親父」

 「親父じゃない!パパと呼びなさい!帰ってくる度に、いつもそう言ってるでしょうがぁ!!」

 それだけは出来ねぇーーーー!男としてのプライドがっ!Sとしてのプライドが、消えてなくなってしまうぅ!!

 もし俺がこの子離れ出来ない親父の言いなりになってみろ。


 「ただいま、パパ」

 「ああ、お帰り、慎吾」

 「パパ、やっと帰ってきたんだね。ボクも嬉しいよ」

 「そうかそうか。そんなにパパに会いたかったか」

 「うん!ボク、パパだぁいすきだもん!!」


 的な、とてつもなく気持ち悪い展開になってしまう恐れがあるぞ!鳥肌が、世界を制すぞ!嘔吐の並が、世界を破滅へと誘うぞ!!

 ダメだ!そんな事させる訳にはいかないぞ!そんな惨めな世界破滅、いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 「……誰がお前なんか、パパって呼ぶかよ」

 よく言った!よく言い切ったよ、俺!偉いぞ、お前は偉い!よく勇気を振り絞って言ってくれた!!

 「……それにさぁ、俺はもう中一だぜ?パパなんて親父の事呼んだら、とんだ笑われもんだ。ハズいったら、ありゃしねぇよ」

 「……」

 ……親父黙っちゃったけど、大丈夫だよな、これ。何とかなるよな、これ。願いは通じてくれるよな、これ!

 「ああ、慎吾。よく分かったよ。慎吾はパパのことが嫌いなんだね?」

 そんな事一言も言ってねぇ!!

 いや、確かに嫌いだよ?森野並に嫌いだよ?だけどさ、嫌いなんて、まだ一言も言ってねぇじゃん!

 思い込みすぎか?そうなんだよな、そうだと言ってくれ、親父!!

 「嫌いなら、はっきり言って欲しかったな、パパ」

 「……え、いや、その―――」

 「嫌いなんだろぉ!?パパの事、とっても嫌いなんだろぉ!?」

 じ、自爆だぁぁぁ!!あまりに深く考えすぎて、思考がマイナス方面へと一直線だ!!もう曲がれねぇよ!もう止まれねぇよ!!ただ走る事しか出来ねぇよ!!!

 「あわ、慎ちゃん。お帰りなさい」

 神様ぁ!!ナイスタイミングで母さんを投入してくれましたねっ!!心から感謝申し上げます!!

 「た、ただいま、母さん」

 「もうすぐご飯できるから、着替えたら降りてきてね」

 「……う、うん」

 ヤバいっ!母さんが、神々しく見える!そう、まるで菩薩だ!!全ての事を優しく包み込む、まさに菩薩だ!!

 「ホラホラ、俊さん、慎ちゃんが困ってるわ。もう少し離れてあげないと」

 「だけどさ、麻理。パパは慎吾と離れたくないんだよぅ」

 「コォラ。甘えた事、言わないの。さあ、俊さん。私を手伝ってくれない?」

 「……慎吾と話したい」

 「なら、私、家出しちゃうかも」

 「それはイヤだよぉ!麻理、お願いだ!どこにも行かないでおくれぇ!!」

 「よしよし。全く、俊さんったら甘えん坊さんなんだから」

 ば、番犬ケルベロスが、女神様に頭よしよしされて微笑んでるぅ!!

 何だこの光景!?子供は見ちゃいけないんじゃないのか!?仮面ライダーショーとかが終わったあと、すぐにキグルミ取っちゃって、それを見てた子供の夢を壊す的な!!そんな光景じゃないですか!?

 「あ、そうだ慎ちゃん。今日は塾を休んでいいからね。久しぶりに、親子揃って楽しくお食事しましょ」

 「……分かった」

 今、この状況が、幸せなのか不幸せなのか、分からなくなってきました……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ