19、朝から元気なドM!?
朝っぱらから森野に会い、ちょっと不機嫌な俺。それはいつもの事だけど、やっぱ不機嫌な俺。会うだけでさえイライラするのに、話までしたら、もう沸点に到達してしまいますよ。まったく、どうしてあいつはこりないんだか……はぁ。
「見つけたわ!愛しのダーリン!」
「げ!!二話連続森野かよ!!」
「そんなに嬉しい?私も嬉しいよ、ダーリン」
「……お前さ、学習能力ってのはない訳?ハートマーク付けんなって言ってんだろ?」
「じゃあ、ダーリンはOKなんだ」
「んなわけねぇだろ!!」
「まぁ、そんなに喜ばなくてもいいじゃない」
「俺のどこが喜んでいるように見えんだよ!?」
「ん?全てが」
「んな訳あるかぁぁぁぁ!!」
イライラが頂点に達した時は、投げるに限る。楽しいし、なんか、スッキリする。これって、Sだけの特権ですよねぇ。
「この痛みが、私の生きる糧となるのよ」
「あっそ」
「そして、その言葉は私の力になるの」
「そうですかぁ」
「……ねぇ、ちゃんとツッコんでよ」
「気が向いたらねぇ」
「そんなの、私の愛したダーリンじゃない!!」
「愛された覚えねぇし」
「愛してるわ!四六時中貴方の事を見てる!!レンズの奥から!!」
「お〜い、チラリと爆弾発言したよなぁ。何だ?レンズの奥からって?盗撮か?」
「だとしたら何?愛する人を見張るのは、家政婦の仕事よ!!」
「家政婦かよ!!てか、いつお前は家政婦になった!!」
「今、この瞬間に」
「……あっそうですか。これ以上俺はツッコんじゃいけない気がするからさ、一人でやっとけよ?頼んだぜ」
「あ、いや。頼むとかそういうの、気まずいんでやめません?」
「……」
「あのぉ、聞いていただけてます?」
「……ふぁぁ、ねみぃ」
「あ、確かに眠いですよね。まだ登校中ですもんね」
「……」
「あのぉ、ツッコんでもらえないと、私のいる意味なくなっちゃうんですけど」
「……」
「この話も、成立しなくなっちゃうんですけど」
「……あ、数学持ってきたっけな?」
「なかったら貸すよ?ダーリンの為なら、なんだってするわ」
「ま、いっか。他のクラスから借りてこよ」
「だから、私の愛がこもった教科書達を、貴方に貸してあげるわ、ダーリン」
「……ああ、ねみぃ」
「……また、放置プレイですか?」
「……」
「ねぇ、ダーリン!無視しないでよ!ダーリン、ダーリン、ダーリン!!」
「うっせぇな、消えうせろや、この世から」
「ああ、やっとツッコんでくれた。それでこそ、私のダーリン」
「……」
勝手にウットリしている森野の隙をついて、俺は駆け出す。逃げるなら、今がチャンスだ!
「ああ、待って!私だけの人!!!」
「だぁれがお前なんか好きになるか!!!てか、勝手な思い間違いしてんじゃねぇよ!!」
「思い過ごしなんかじゃない!本能よ!!」
「何のだよ!!」
「愛の野獣の」
「お前、やっぱ死ね」
「貴方のそこの言葉で私は癒されるのよ!さあ、私を助けて、ダーリン!!」
「お前は傷おってねぇだろ!!俺はずいぶんと前から、癒えない心の傷が、お前に会う度に疼くんだよ!!」
「まあ、それはきっと、恋の病だわ」
「ゼッテェにありえねぇ!!いや、あってたまるかよ!!」
「ああ、待って!私を置いていかないで、ダーーリーーーン!!」
森野のこの元気さ、異常じゃね?