13、復活のドS!?
「ねぇ、ダーリン!」
「あん?ウゼェな。ダーリンじゃねぇよ、黙ってろ、ボケ」
「も、戻ってる!性格が戻ってるわ!美咲、嬉しい!」
「あっそ。てか、ウザいから消えろ」
「その刺激的なお言葉、美咲は何日我慢した事か」
「泣きまねすんな、キモいから」
学校からの帰り道、しつこく着いてくる森野を避けながら言った。てか、距離が近い。
「近いんだけど」
「私とダーリンの心が?」
「それは遥か遠くに薄っすらと見える程度だろ!違うよ、馬鹿!!」
「ああ、もっと言って!もっと私をいじめてください!」
「……」
「黙っちゃいやぁ〜!美咲、生きてらんないよ」
「……その台詞、何回も聞いたと思うんだけど?」
「そんなに私の言葉を覚えててくれたの?美咲―――」
「それも聞き飽きたぁーーー!」
隣に迫ってくる森野に、アッパー。見事に決まったとき、かなり嬉しかったっす。
「い、痛いわ。痛いけど嬉しい」
「ハート付けんなっ!キモいって言ったよな、俺、この前もキモいって言ったよな!?」
「……そのお言葉が、私の生きる糧です」
「じゃあ二度と言わねぇよ。金輪際、俺に近付くな」
「……ねぇ、『金輪際』って、なんて読むの?」
「お前はふき出しを見て会話してたのかぁーーー!」
もう一度、アッパー。さっきより強めで。
「……ふふ、やっぱりダーリンは、私にツッコんでくれるのね」
「したくてしてる訳じゃねぇぞ。てか、どちらかというと、かなりしたくない。平凡な生活に戻りたい」
「平凡って、この時、この瞬間の事を言うのよ、ダーリン」
「それはお前限定だろ!?」
「……意外と違ってたら?」
「ありえない」
「……案外そう思ってなかったり?」
「それもない」
「……実は、私にこ―――」
「おーい、それ以上言葉を発してみろぉ。今すぐここで川に突き落としてやるよ」
「それは嬉しい!!けど、ちょっと汚いわね。美しい私には、似合わ―――」
「何がどう似合わないんだ、あん?小汚くてネバネバしてる感じ、お前そっくりじゃねぇか。クリソツだよ、クリソツ」
「クリ……何小学校を卒業したのかな?」
「その卒じゃねぇーーー!馬鹿だろお前、馬鹿だろ!!」
「そうよ、私は馬鹿よ!!貴方のための、世界一の馬鹿!!」
「自分から世界一って言うか?やっぱお前、脳みそねぇんじゃねぇの?」
「そう、その代わり、ダーリンの愛が―――」
「その代わり、何だって?」
森野のプクッとした頬を掴んで睨みつける。嬉しそうに頬染めてる馬鹿は、何を考えてるか、さっぱり分かりません。分かりたくもありません。
「ダーリンの愛がたくさん詰まってます」
ハートマーク付きの馬鹿発言。もう疲れたというか、飽きたといいますか。
とりあえず、すべき事は分かっています。それは、森野を川に落とす事。それが、使命です!
「ああ、待って!川にはやっぱり落とさないで!!私、泳げないの!!1メートル泳げたら奇跡なの!!」
「へぇ。だから?」
「落とさないで!愛しい美咲が死んで―――」
「大いに結構。それ以上に嬉しいことはないぜ?」
「あ゛〜っ!ダメダメ!!危機的状況、大いに結構だけど、嬉しいけど」
「一思いに、死んでくれや」
「はい。……なんて嘘です!!ごめんなさい!!申しません!!」
「もうしませんの字がちっがぁう!!落とすぞ、本気で落とすぞ」
「それは、本気と書いて、マジと読ませるのですか?」
「好きにしろぉーー!てか、正直言って、そんな事どーでもいいわ!!」
「やめてっ!ホントにゴメンなさいぃ。盗撮写真も渡しますからぁ」
「テメェ、なんて事してたんだよ!!犯罪だぞ、犯罪者だぞ!!」
「もとから犯罪者です!!ダーリンの愛を盗みました!!」
「盗まれてねぇよ!盗まれた覚えすらねぇよ!!どこがどうくるったら、そんな事になるんだよ!!!」
「入力ミス?」
「それは作者の原因だろ!?俺らかんけーねぇし!!」
「そんなこといったら、作者が傷付くでしょ!!可哀相じゃない!!冷たい言葉は、私だけのものでいいの!!」
「ウゼェよ、もうかったるいよ、めんどくせぇよ!お前の存在、そしてこの作品の存在が信じられない!!」
「何で!?」
間抜け作者と、キモ森野の声が重なる。綺麗にハモッた。でも、それさえもウゼェ。
「とりあえず、俺はお前に構ってる暇はねぇんだよ!!お前はとっとと家に帰りやがれ!!」
「その前に、金輪際の読み方を……」
「読み仮名振っておいたから、後で見とけ、この馬鹿!!!」
「……ねぇ、じゃあ。川に、落としてくれないの?」
「落として欲しいか、じゃあ遠慮なく―――」
「嘘です!!これはマジと書いて本気と読むです!!」
「意味分からねぇよ。これだから、馬鹿は嫌いなんだ」
「馬鹿じゃないもん。愛すべき馬鹿だもん」
「結局馬鹿なんじゃねぇかぁーーー!!」
最後に強烈なアッパーを。そして、森野は川に落ちたとさ。チャンチャン♪