115、舞うのはアナタ!?
放置しまくってごめんなさい……。
久しぶりの更新、どうぞお楽しみいただけたらと思います。
俺たちの出番はしばらくないらしい。とりあえずウザかった小橋をさらにいたぶってから、そう聞いた。というか、聞き出してから溜まったストレスを発散させてもらった。
「さて、暇だなぁ」
「やっぱ暇人だったな」
聞き覚えのある声に振り返ると、褐色肌の友人が笑っていた。
「やっぱとはなんだやっぱとは」
「いやぁ、どうせ暇してるだろうから、ちょっと頼みごとをしにな」
狩燐はちょっと真面目な顔でそういうと、俺の肩を叩いて豪快に笑う。
「いやはや、やっぱお嬢様ってのはこうでなくっちゃな!」
どこの変質者だ。てか俺はお嬢様じゃねぇし。
「で、お前も結局暇人なんだろ」
「おう、よく分かったな」
「頼みごともないだろ」
うんうんと頷く。もっと予想外の行動をとってくれる人間は俺の傍にいないのか? てかあきれてものも言えない。
「とりま、暇つぶしにきたんだけど、小橋は?」
「俺が懲らしめてきた」
「ちぇー、俺も小橋で遊びたかったのになぁ」
暇つぶしで友人をいじるつもりだったお前は相当なSだよな。
「てか、狩燐も出る競技ないのか?」
「たぶん、瀬川と大体種目一緒だと思うからないと思いたい」
……。そんなアバウトでいいのか? そんなやる気なくていいのか? 人の事言えないけどさ!
「分かってたつもりだけど、想像以上に狩燐も異常だよな」
「何それ、褒め言葉か?」
「そうかもしれねぇしそうじゃねぇかもな」
「そういう瀬川も変わってるから安心しろよ」
お前に言われたかねぇよ。お前に!
「そーいえば、お前のフィア」
「ンセなんかいねぇよ!」
「そんなに否定しなくてもいいじゃん。お似合いだぜ」
そんないい笑顔で言われても嬉しかねぇよ! 逆にめちゃくちゃむかつくよ!
「で、森野がどうした?」
「みとめ」
「認めてねぇよ! 察しただけだよ!!」
「そう照れなさんな」
なんだろう、この気持ち。すごく、すごく胸が熱いです。今なら何だって破壊できる気がするよ。
「ま、ジョーダンだから。で、森野がお前を探してたみたいだぞ?」
「え?」
アイツが俺を探す=ストーカー行為がまた始まる!?
「そういうことじゃないらしいぜ」
「心を読むな!」
「いや、口で言ってるし」
くっ……、なんだか悔しい。
「なんでまた俺なんかを―――」
ハッ、この感じ! この悪寒は!
「みぃぃぃぃぃつけったあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「やっぱりか!」
「おー、反応早ぇ」
狩燐の暢気な呟きを背中で聞いて、俺は走り出した。
「待って! 舞ってよ、愛しのダーリン!!」
「誰が舞うか! てかダーリンじゃねぇ! つか追いかけてくんな!!」
ハチマキをちゃんと巻いているストーカーが、なんかの紙切れを持って追いかけてくる。俺は人を上手にさけながら逃げる。
「用事があるの! 愛の告白並に大切な用事なのぉぉぉぉ!!」
「知るかんなもん! てか告白なら答えはノーだ!!」
「そ、そんな! ダーリンはYES、マイスウィートハニーって言ってくれるって信じてる!」
「信じんな!」
言いながらも逃げる。逃げる。逃げる。アイツもアイツでうまい事人を避けて追いかけてくるし。くそ、これじゃキリがないな。
「用事は何だよ!」
「え!? だ、ダーリンがデレた!? わちょ、どうしよ! あっ、今の表情を写メ撮らせていただいても」
「やっぱ聞かん! そして断る!!」
「あぁ、やっぱツンッツンなダーリンって好き! だけどデレたダーリンも好きよ!」
「俺の言葉は無視か! てかキモいからやめてくれ!」
学校全体にこんなストーカーにつけられているなんて知られるのは苦痛だ! 今日は体育大会だし、保護者の方々とか来賓的な人たちだっているんだぞ!!
「やめないわ! 私の愛がダーリンを満たすまで!」
「満たされたかねぇよ!! 断固拒絶する!!」
さすがにしゃべりながら全力疾走はきつい。そろそろ疲れてきた……。
「もう、ちょっと疲れてるダーリンの横顔すら愛おしいわ!」
「キモい!!!」
急ブレーキをかけ、右ひじに全体重を任せる。おそらく追ってきているであろう、ストーカーがスピードを緩める前に、このひじをその腹に、
「めり込ませるっ!」
「ぐっは!」
狙い通りに入ったそれで、ストーカーは吹っ飛び悶絶している。
「ひ、久しぶり、この感じ……! 美咲は、美咲は幸せです!」
「うぜぇよ! もういいよ黙っとけよ!」
「でもね、この快感に酔いしれている暇はないの」
ドM発言はもう聞き飽きたよ。てか俺だってお前と追いかけっこするほど暇じゃねぇよ!
「ねぇ、ダーリン」
いつになく真剣な顔で森野が言う。
「な、なんだよ」
思わずどもってしまったが、所詮森野は森野だった。
「借り物競争でね、『大切な人』って指令が」
「うん、葛野木に頼んどけ」
「えっ」
「えっじゃねぇだろ。親友だろ、アイツ」
「で、でも、でもでも、大切な」
「家族とか来てるだろ、母親とかそのあたりでいいだろ」
「えっ」
「だから、えっじゃねぇだろ!」
スパコーンと頭を叩くと、森野はにへらにへらといい笑顔をしやがった。
「あぁ、やっぱりダーリンの罵声と愛のムチは心地いいわ」
うん、キモいからね。一般的であろう上級生の皆様が引いてますからね。
「じゃ」
「えっ、ちょっとまっ……ギャッ」
キモいやつに関わるべからず。さっさと立ち去るべし。運よく足もつらせて、立つのにすら手間取ってるし、今のうちに全力で逃げるべきだろう?
そして、その後に森野が時間切れで失格になったのは言うまでもない。
「舞ってぇ、舞ってよぅ、ダアァァァリーーーーーーーン!」
「だから舞わねぇよ!!」