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ドSな俺と、ドMなアイツ  作者: 下弦 鴉
第四章 メインディッシュは体育大会
116/117

115、舞うのはアナタ!?


放置しまくってごめんなさい……。

久しぶりの更新、どうぞお楽しみいただけたらと思います。


 俺たちの出番はしばらくないらしい。とりあえずウザかった小橋をさらにいたぶってから、そう聞いた。というか、聞き出してから溜まったストレスを発散させてもらった。

 「さて、暇だなぁ」

 「やっぱ暇人だったな」

 聞き覚えのある声に振り返ると、褐色肌の友人が笑っていた。

 「やっぱとはなんだやっぱとは」

 「いやぁ、どうせ暇してるだろうから、ちょっと頼みごとをしにな」

 狩燐はちょっと真面目な顔でそういうと、俺の肩を叩いて豪快に笑う。

 「いやはや、やっぱお嬢様ってのはこうでなくっちゃな!」

 どこの変質者だ。てか俺はお嬢様じゃねぇし。

 「で、お前も結局暇人なんだろ」

 「おう、よく分かったな」

 「頼みごともないだろ」

 うんうんと頷く。もっと予想外の行動をとってくれる人間は俺の傍にいないのか? てかあきれてものも言えない。

 「とりま、暇つぶしにきたんだけど、小橋は?」

 「俺が懲らしめてきた」

 「ちぇー、俺も小橋で遊びたかったのになぁ」

 暇つぶしで友人をいじるつもりだったお前は相当なSだよな。

 「てか、狩燐も出る競技ないのか?」

 「たぶん、瀬川と大体種目一緒だと思うからないと思いたい」

 ……。そんなアバウトでいいのか? そんなやる気なくていいのか? 人の事言えないけどさ!

 「分かってたつもりだけど、想像以上に狩燐も異常だよな」

 「何それ、褒め言葉か?」

 「そうかもしれねぇしそうじゃねぇかもな」

 「そういう瀬川も変わってるから安心しろよ」

 お前に言われたかねぇよ。お前に!

 「そーいえば、お前のフィア」

 「ンセなんかいねぇよ!」

 「そんなに否定しなくてもいいじゃん。お似合いだぜ」

 そんないい笑顔で言われても嬉しかねぇよ! 逆にめちゃくちゃむかつくよ!

 「で、森野がどうした?」

 「みとめ」

 「認めてねぇよ! 察しただけだよ!!」

 「そう照れなさんな」

 なんだろう、この気持ち。すごく、すごく胸が熱いです。今なら何だって破壊できる気がするよ。

 「ま、ジョーダンだから。で、森野がお前を探してたみたいだぞ?」

 「え?」

 アイツが俺を探す=ストーカー行為がまた始まる!?

 「そういうことじゃないらしいぜ」

 「心を読むな!」

 「いや、口で言ってるし」

 くっ……、なんだか悔しい。

 「なんでまた俺なんかを―――」

 ハッ、この感じ! この悪寒は!

 「みぃぃぃぃぃつけったあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 「やっぱりか!」

 「おー、反応早ぇ」

 狩燐の暢気な呟きを背中で聞いて、俺は走り出した。

 「待って! 舞ってよ、愛しのダーリン!!」

 「誰が舞うか! てかダーリンじゃねぇ! つか追いかけてくんな!!」

 ハチマキをちゃんと巻いているストーカーが、なんかの紙切れを持って追いかけてくる。俺は人を上手にさけながら逃げる。

 「用事があるの! 愛の告白並に大切な用事なのぉぉぉぉ!!」

 「知るかんなもん! てか告白なら答えはノーだ!!」

 「そ、そんな! ダーリンはYES、マイスウィートハニーって言ってくれるって信じてる!」

 「信じんな!」

 言いながらも逃げる。逃げる。逃げる。アイツもアイツでうまい事人を避けて追いかけてくるし。くそ、これじゃキリがないな。

 「用事は何だよ!」

 「え!? だ、ダーリンがデレた!? わちょ、どうしよ! あっ、今の表情を写メ撮らせていただいても」

 「やっぱ聞かん! そして断る!!」

 「あぁ、やっぱツンッツンなダーリンって好き! だけどデレたダーリンも好きよ!」

 「俺の言葉は無視か! てかキモいからやめてくれ!」

 学校全体にこんなストーカーにつけられているなんて知られるのは苦痛だ! 今日は体育大会だし、保護者の方々とか来賓的な人たちだっているんだぞ!!

 「やめないわ! 私の愛がダーリンを満たすまで!」

 「満たされたかねぇよ!! 断固拒絶する!!」

 さすがにしゃべりながら全力疾走はきつい。そろそろ疲れてきた……。

 「もう、ちょっと疲れてるダーリンの横顔すら愛おしいわ!」

 「キモい!!!」

 急ブレーキをかけ、右ひじに全体重を任せる。おそらく追ってきているであろう、ストーカーがスピードを緩める前に、このひじをその腹に、

 「めり込ませるっ!」

 「ぐっは!」

 狙い通りに入ったそれで、ストーカーは吹っ飛び悶絶している。

 「ひ、久しぶり、この感じ……! 美咲は、美咲は幸せです!」

 「うぜぇよ! もういいよ黙っとけよ!」

 「でもね、この快感に酔いしれている暇はないの」

 ドM発言はもう聞き飽きたよ。てか俺だってお前と追いかけっこするほど暇じゃねぇよ!

 「ねぇ、ダーリン」

 いつになく真剣な顔で森野が言う。

 「な、なんだよ」

 思わずどもってしまったが、所詮森野は森野だった。

 「借り物競争でね、『大切な人』って指令が」

 「うん、葛野木に頼んどけ」

 「えっ」

 「えっじゃねぇだろ。親友だろ、アイツ」

 「で、でも、でもでも、大切な」

 「家族とか来てるだろ、母親とかそのあたりでいいだろ」

 「えっ」

 「だから、えっじゃねぇだろ!」

 スパコーンと頭を叩くと、森野はにへらにへらといい笑顔をしやがった。

 「あぁ、やっぱりダーリンの罵声と愛のムチは心地いいわ」

 うん、キモいからね。一般的であろう上級生の皆様が引いてますからね。

 「じゃ」

 「えっ、ちょっとまっ……ギャッ」

 キモいやつに関わるべからず。さっさと立ち去るべし。運よく足もつらせて、立つのにすら手間取ってるし、今のうちに全力で逃げるべきだろう?

 そして、その後に森野が時間切れで失格になったのは言うまでもない。

 「舞ってぇ、舞ってよぅ、ダアァァァリーーーーーーーン!」

 「だから舞わねぇよ!!」

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