114、二人三脚は障害だらけ!?
影薄が崩壊する場面がありますが、気にしなくてもいいんだと思いまふ。
小橋を好きな貴重な方はごめんなさい……。
影薄太郎の言ったとおりに、二人しゃんきゃ……ごほん。二人さ・ん・きゃ・くの前に、100m走、ハードル、2年生の学年競技の3つがあった。とりあえず、二人三脚のとこで笑ったやつ、俺の代わりに小橋と二人三脚してこい。
「あぁ、やだやだ。小橋と二人三脚なんて信じられない」
「お前はどんだけ俺のこと嫌ってんだよ……」
「あぁぁぁぁぁ、帰りてぇ」
「俺が嫌いってか、体育大会自体嫌いだろ」
「え、いや。お前も嫌いだぞ?」
「なぁ、そこ否定されると俺が辛いんだけど?」
「だって小橋だし」
「存在から否定に入るのか?!」
あーあーあー。頼むからそれ以上騒ぐな。ただでさえ片足を手ぬぐいで繋がれて、接近してんだから、普段より大きい声だすとうぜぇんだよ、いつも以上に。
「てかお前、ルール理解してるよな?」
「おぅ。拘束を解くために、どれだけ早く相手を捻り潰せるk」
「それどこの格闘競技だ!?」
「なんだ、違うのか」
「俺ら2人で1つ。つまりチームだぜ? それをおま、捻り潰すとか……」
あぁ、なるほどなるほど。理解したぞ。
「つまりはあれだろ。より多く敵チームを潰したチームg」
「まず潰す事から離れようぜ」
ちぇ、そんな冷静に返されるとつまらねぇじゃんかよ。
「分かってるって。リレーみたいなもんだろ」
うんうんと頷く馬鹿が、分かり切ったルール説明してるのをがん無視する。俺たちは2年生の学年競技が結果が出るのをおとなしく待っているいい子なんだぜ。小橋の独り言がただちょっとうるさいだけなんだぜ。
ちなみに、今2年生が行っている競技は、30人31脚みたいなもの。男女別で行われて、一番多く勝ったチームが優勝となる。30mくらいを息を合わせて横一列に走ったタイムで勝敗が決まる。まあ、黄組がやけに早かったから、そこが文句なしの優勝だった。
楽しげに退散して行く2年生を、誘導の体育委員が見届けると、俺らに立つように命じる。帰りたい。まじで帰りたい。なかったことにしたい、今を。
「はあぁぁぁ……」
「んな壮大にため息ついても無駄なんだから、頑張ろうぜ」
「えー、だって小橋だし」
「……なぁ、瀬川。俺、お前に何かしたか?」
影薄が何か言ったような気がするときは、だいたい何か言ってるけど言ってないことにした方が楽だから、なかったことにして入場した。
「で、なんでアンカーなんだよ、クソ影薄」
「全部俺のせい!? てか悪口に悪口プラスしてくれてんじゃねぇよ!!」
「はあ? んなこと知ったことか!」
そう、この薄らハゲ影薄のせいで、俺らがアンカーを任されてしまったんだよ。じゃんけんで順番を決めたそうだが、初っ端から負けるとかマジで信じられねぇわ。
「パ○コも追加だからな」
「なんで!?」
「何でも何もお前の責任だろ」
ちなみに、もうリレーは始まっていたりする。今2番目がバトンを受け取って走ってる。
「練習に来なかったのはどこの誰だよ!」
「勝手にやったじゃんけんで負けたのはどこの誰だよ」
「あぁ、もう。俺が悪かったって言えばいいんだろ!? そうだろ!?」
自暴自棄になるなや。扱いが余計に面倒くさくなる。こんな状態でゴールできる気がしない。こんなんじゃなくてもゴールできる気がしねぇけどな。
「とりあえず、仕方ないから頑張ってやるよ」
「……アンカーは障害を乗り越えてゴールしなくちゃいけないんだぜ」
いまさらそんなこと言われても、俺にはどうしようもねぇんだが。
「なんだ、殴ればいいのか?」
「暴力で解決はよくないぞ」
そんな会話をしながら位置につく。何気に俺らトップじゃん。
「じゃあなんだ。言葉攻めをお望みか?」
「……お前に一欠片の優しさはないのか?」
「ねぇ」
少しずつ走り出す。そろそろ3番目がくるぞ。
「障害は小橋を犠牲にして乗り越えて見せるから、安心しろよ」
「そんな優しくない優しさいらねぇよ!」
掛け声と共にバトンが渡される。俺らは足並みそろえて走るだけ―――。
「キャハ☆ そーはさせないんだぞ♪」
「うわあ!」
「ぎゃ、ででで出た!?」
思い切り走り出した俺たちを抱きしめるように受け止めた人物は、特徴的な笑いから察するに、笑先輩に間違いない。
「キャハ☆ 私は瀬川っちだけ抱きしめられればそれでよかったんだけど、それじゃ邪魔にならないんだよね、アハハ!」
「いや、とりあえず邪魔です」
「いや、なんでお前は冷静にツッコめんだよ」
「他のやつらも同じような邪魔されてるし」
「げ、マジだ……」
それぞれ敵対チームが邪魔してる。柔道部っぽい男のゴツい先輩に抱きしめられてる緑組に比べれば、俺らはまだ幸せなほうだよな。てか、緑が哀れすぎて楽しいな。
「まあ、うん。離してください」
「キャッハハ、無理なこと言うね君ぃ! 楽しい、合格ぅ~♪」
どこがどう楽しかった!? どこがどう笑いのツボにハマった!? で、でもまあ、解放されたからよしとしようか。
俺らよりもうまく切り抜けたのか、赤が先にいた。追い越せない距離でもない。他に障害がなければ
「今度は私が抱きしめてあげるわ! ダーリぐふっ」
何もいなかった。何もいなかった。何もいなかった。何もいなかった。何もいなかった。
「にしても小橋。よく俺が蹴り飛ばすって分かったな」
「いつも傍で見てるからな……」
障害物として選ばれたのであろう、少女Aがいたのだが、俺にとっては障害でもなんでもないんだよ。読みが甘い、宇治金時に練乳と黒蜜をかけるように甘い!
ゴールはもう目の前だ。他のやつらはまだ障害物、いや障害になる人物の処理に手間取ってる。これはもう圧勝決定だな。
「これは楽勝だぎゃ?!」
すまん、小橋。マジですまん。俺も急に脚止めて痛かったからおあいこにしてくれ。
「車は急に止まれねぇんだぞ……」
「車じゃねぇし。二人三脚だし」
少々奇妙な動きで立ち上がった小橋よ、今のお前の顔が最高に面白い。綺麗に地面と濃厚なキスをしたらしい。
「いつもより存在感のある顔してるぞ……くふっ」
「顔見て笑われるような存在感なんていやだ!」
いやだって、面白いものは面白いんだぞ。誇りに思え。
「で、何で止まりやがった」
「え、だって無理だろ」
「何がだよ!」
「お前、子犬嫌いだろ」
「犬? 犬がどこに……ぎゃわはうだがねくちぇ!?」
なぁ、日本語で頼む。そして声のボリュームの調整も頼むわ。
さて、ここで世界一優しい俺様から説明してやろう。もうちょっと進んだとこに、杭に繋がれた子犬が数匹。正直、めちゃくちゃ可愛い。一番の俺らと遊べると思って、短い尻尾を懸命に振ってキャンキャンいってる。隣で小橋がこの世の終わりみたいなことを言ってるけど、まあ気にしない。
「じゃ、忠告したから進むぞ?」
「いやいやいやいやいやいやいやいや! 忠告したからって進んでもいいってわけじゃないんだぞ」
「あんな可愛らしい動物に、人間様が恐れをなしてどうする」
「黒き流星のGに怯えるお前は例外なのか?」
「あれは全人類の敵だからな。子犬は人畜無害だ」
「いやいや、だって噛むよあいつら。噛むんだぞ?」
「それは影薄を嫌いなだけだろ」
そういって、引きずってでも進んでやろうと思ったら、逆に引っ張られて進めなかった。
「んだよ」
「マジ犬だけは無理なんだよ。犬はマジで無理なんだよ」
「てか動物全般苦手だよな」
「分かってるのに進もうとするのか! 分かってるのに進もうとするのか!!」
あーもー、うっせぇなぁ。
「2度も言わなくたって分かるっつーの。決心はついたな? ついたかじゃあ進むz」
「頼む! 待ってくれ!」
足にへばりついて動こうとしない影薄太郎だが、これなら引きずりやすくていい。
「こわくなーい。こわくないぞー。めっちゃかわええぞー」
「棒読みでそんなこと言うなよ! 逆にこえーよ!!」
うるせぇよ。じゃあ全力で駆け抜ける努力をしろよ。何引きずられてるんだよ。なんで引きずられてるだけなんだよ。でもまあ、これなら進めそうだ。赤が第二関門抜けてきそうでまずいんだよ。他のやつらも抜けてきそうなんだよ。
「ぎぃやぁぁぁ! 犬近い犬近い犬近いひぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「いだだだだだだ! やめろ、おま、ちょ、やめろって!!」
関節があらぬ方向に曲がろうとしてる! 本来曲がってはいけない方向に膝が逝こうとしなさっている!!
「もうヤダマジ無理うわぁぁぁぁぁ!」
「おま、人の膝で泣くなよ! うわ、鼻水つけんな!!」
あぁぁぁっ! 我慢ならん! こうなったら強行突破だ!!
「はーい、わんこたち。ちょっとうるさいオマケがついてるが、通らせてもらうぞ~」
「じぇぎゃわぁ、ぎょわいよぅ」
「分かったから黙ってろ」
俺、ゴールに着いたら、全力でこいつを殴ってやるんだ。もし気絶でもしてくれちゃったりしたときは、わんこの群に放り込んでやるんだ。
赤もこのわんこゾーンにやってきて、少々戸惑いながらも着実に進んでる。遊んでくれ遊んでくれと飛びついてくるわんこたちは、可愛いけどこういうときはちょっと鬱陶しいな。あ、でも今の小橋に比べればあしらい易いかもしれない。
影薄太郎が終始ウザかったが、なんだかんだでわんこゾーンを抜けて、一番でゴールすることができた。赤とはホントちょっとの差だったけどな。
「ごめんなぁ、しぇがわ。おりぇ、ほんっといにゅは無理にゃんだよぅ」
さぁて、次の競技の前に、この馬鹿をどうしてくれようかな。
時々、瀬川たちが何色の組なのか本気で分からなくなる。順位とかもぽろっと忘れる。え、ナニコレ病気?
間違ってるところなどございましたら、ご報告お願いします……。




