99、はちゃめちゃな打ち上げ!?
「(下から数えて)一番にかんぱーい!」
「かんぱーい!!」
ほぼ全員が大合唱。
「(下から数えて)一番最高!」
「イェーーー!」
またまた大合唱。
「(下から数えて)一番になれた事を光栄に思う!」
「イェーーーー!!」
……以下同文ってことで。
つーかさ、小さな声で言ってるつもりの『下から数えて』はっきり聞えちゃってるから。堂々と公表しちゃってるから。小さな声で言う事は小さく言いましょうねぇ。
という事で、俺らのクラスはめでたく最下位であったらしい。先生が「らしい」つーから、らしいんだ。
まあ、そんな事はどうでもよくて。
喜んじゃいけねぇよな、普通。最下位なのにはしゃいじゃいけねぇよな、普通。打ち上げとかもう論外だよな、普通。
「フフ、暗い顔でどうしたの?美咲がいないと寂しい?」
「んな訳あるか」
「瀬川、大丈夫だ」
「何がだ影薄小太郎之介」
「無駄に長いあだ名付けるな!」
「で、何が大丈夫なんだ。んでもって引っ付くな、酔っ払いかこの野郎」
「ん?とっても可愛かったから、心配する事はねぇと―――づだっ」
「黙れ、そしてこのまま死ぬがいい」
「酷くね!?」
「ちょ、ヒロインがそんな事しちゃいけないよ!」
「誰がヒロインだよ阪下!」
「まあまあ、楽しもうや、姫君」
「誰が姫君だ神郷。そして何故お前も引っ付いてくるんだコラ」
「フフ、モテモテ?」
「嬉しくねぇぞ」
左右男って、花がねぇだろうが。
「大丈夫よダーリン!ハニーがちゃんと守ってあげ―――あべしっ」
「何でオメェがいるんだよ!」
「だって、だってぇ」
「すみませーん、不審者が」
「ただ不審者じゃないわ!鯉の不審者よ!」
字がちげぇよ。
「ちょ、放しなさいよ!私、アナタみたいな可愛くない人に興味ないんだから!」
ニヨニヨしながら言うことじゃない。店員さん引いてるだろうが。
「まあ、折角の打ち上げだしさ、楽しまないと損だと思わないか?」
「……まあ、そうかもな」
「そうだよ!ヒロイ……今回活躍してくれた瀬川君がいなくっちゃ!」
ヒロインって言いかけなければ最高だったぞ。
「フフ、楽しみましょう。はい、ジンジャーエール」
「……お前が持つとビールにしか見えない俺はなんなんだ?」
「フフ、何かいった?もしかして、私に酔った?」
「んな訳あるか!」
「フフ、ジョーダンよ」
……なんかムカつく。
「なあ、偽ヒロインー」
「誰が偽ヒロインだ影薄小太郎之介」
「よく噛まないで言えるよな、それ……」
「俺様に不可能は多分ない」
「自信ないのかねぇのか分からねぇし」
「すみませーん、また不審者」
「ごめんなさいもう二度とこのようなご無礼は致しません」
「うむ、それでよろしいのだ」
「……悪代官だな」
「……悪魔っぽい」
「……フフ、黒いわねぇ」
なんとでも好きなように呼べばいいさこの野郎。
「ねぇねぇ、瀬川君」
「んだよ」
「写メ撮らせてー」
「しゃめ?なんだそれ。サメとシャケの融合体か?」
「フフ、まさかの発言ね」
なぜだ、何故みんな驚いているんだ。そして読者の皆々様よ、何故引いているんだ!
「瀬川、写メって言うのはな……」
と、小橋から長い説明。実は長くなかったりするけど、それは気にしてはいけない。
「ふーん」
「なんだ、そのあからさまにどうでも良さそうな返事は」
「どうでもいい気がするからな」
「お前にかかれば、なんでもどうでもいい事に早代わりだな」
「そうかもなー」
「またそうどうでもよさそうに……」
「まあ、どうでもいいからな」
「……無限ループが始まりそうだ」
「それもそれでいいんじゃねぇの?」
「で、撮らせてもらってもいい?」
まだいたのか、名もなき女子生徒A子さんよ。
「いいぜ別に。減るもんじゃあるまいし」
「ありがとう!」
そこまであからさまに喜ばれるとは思わなかったぞ。
「じゃ、わた」
「帰れ変質者」
「なんで!何故私はダメなの!」
「普通の人は植木鉢から出てきたりはしねぇだろ。てか、少しは周りの目を気にしろってんだ」
ここに来てる人、みんなどん引きじゃねぇかよ。あ、ちなみにここはファミレスでございますな。
「嫌よ!ダーリンと夢のツーショットのチャンスじゃない!」
「知るかんな事。すみませーん、また変質者がー」
「やめて!放しなさい!私とダーリンの恋路を邪魔するなんて、最低よ!」
うん、ニヤニヤして言う事じゃねぇよな。んでもって、俺はダーリンじゃねぇっての。
んで、なぜか始まった撮影会。シャッターが眩しいのなんのって……。
「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
で、乗り込んできた不審者2。
「私の、俺の1人息子の魂を、そんな小さな画面に納められてたまるかぁぁぁぁぁぁ!」
何の話だ。
「あの子はなぁ、本当は持病があってだなぁ、写真を撮られると魂が磨り減っていくんだよぅ」
どんな持病だ。
「だから、だから……」
おーい、嘘泣きするなぁ。
「俺の携帯とカメラ以外で、写真を撮っちゃあいけねぇんだよう!!」
……変態親父め、何を言い出すかと思ったら……。
「ごめん、ちょっと……」
「瀬川、ほどほどにな」
大丈夫だ小橋。お前が思ってるほどの事はしねぇから。
「さてと、そろそろデザートの時間かな」
「フフ、そうね」
「まあ、そうだな」
「わーい♪」
嬉しそうだなぁ、阪下。だがしかし、周りのみんなを見てあげましょう。お腹一杯、たすけてちょーだい!って感じじゃん。
「でもゼリーかプリンしかないねぇ」
「フフ、少ないわね」
「二種類だけって、ファミレスのくせに……」
「パフェぐらいあったっていいのにぃ」
そこ、わざと大きな声で、しかも店員さんが通った時を見計らって言うんじゃない。
「瀬川はどうする?」
「フフ、あんみつとかくずきりとか、そーゆー類もないわよ」
「和食万歳のお前には過酷かもな」
「ファミレスの分際で、ふざけてますよね!」
ふざけてる?言いすぎだよ、阪下。
「あぁ、ふざけてる!こんな店、ファミレスの名をかたる資格はない!」
あぁ、事実が、本音が漏れてしまう……。
「いや、あんみつとかないくらいで……」
「神郷!それでもお前は日本男児か!!」
「え、あ、なんかごめん……」
「フフ、まあまあ、落ち着きなさい。たかがデザートじゃない」
「たかがデザート!されでデザートであるぞ!食後の小さな楽しみが、二種類であっていいはずがない!!」
「フフ、まぁ、そうかもしれないけど……」
「和食も少なかったし、怒る気持ちは分かるけど」
「とりあえずお前は黙れ」
「何故俺には冷たいんだ!?」
「もういい!このお店選んだのが間違いだった!ちょっと有名だからって奮発するんじゃなかった!」
「そうだな、阪下!さあ、もう今日は解散だ!こんな店、二度と来るか!!」
散々大声で騒ぐなといっていた本人が、勇者阪下と去っていく背中を見て、ふと思い出した事が一つ。
「……そういや、瀬川って昔から甘いものが好きだったな……」
「フフ、だからこんなに怒っているのね」
「されどあんみつ、されどくずきりって訳だね」
「今度から、コイツがイライラし始めたら、甘いもので釣るのもアリかもしれない」
「フフ、そうかもね」
「そうだねぇ」
まあ、この店がそれ以来打ち上げなどを禁止したのは、また別の話。かもしれない……。
と、言う訳で、文化祭編最終話!
なんだか、とっても長かったですが、楽しんでいただけたのでしょうか……?私はそれが心配で心配で仕方ありません。
そして、ちょっとこのお話の最終話っぽい感じはなんでしょうか?
あ、終わりませんので、ご心配なく。もうちょっとは続きます、ハイ。
まあ、一区切りついたということで、一言。
ここまで読んでくださった方、有難うございます。
私、下弦 鴉は読者の皆様に笑って笑って、また笑っていただけるように、頑張っていきます!
これからも、ご愛読していただける事を願うばかりでございます。
あはは……長くなってしまいましたね。
ではまた、次話お会い致しましょう!
これからも、『ドSな俺と、ドMなアイツ』をよろしくお願いいたします!