10、最期の晩餐!?
やっと一日が終わった。俺の戦いも終わった。でも、また明日が来る……。はあ、こんなにも明日が楽しみじゃないの、久しぶりだな……。
「ただいまぁ」
「オカエリナサシ」
……は?今なんて言った?
「ア、マチガエチャッタヨ。オカエリナサイ」
……こ、この見事なまでのカタコトは!?も、もしや―――!!
「ミッチェルさん!?」
「ア〜イ、ソウデス!ミッチェルデェス!!」
謎の外国人じゃなくて、この人は母方の叔母です!変質者じゃありませんから、ご注意ください!!
「帰ってきたの?」
「ハイ。キノウ、ナイジェリアカラ」
嬉しそうに笑ってるけど、随分と遠くまで行ってきてるよね。てか、金持ちっていいよね。外国行けて。
「……ア、ソウダ!コレ、オミアゲデェス!」
差し出されたのは、呪いの仮面……じゃなくて、民族が良くつけてるような仮面。
う、嬉しくねぇ……。
「あ、ありがとう」
「ソンナニウレシイデェスカ?ダッタラコレ、ガッコウノオトモダチニモ」
ありがた迷惑だよ、このやろー!!
てか、どんだけセンス悪いんだよ!民族の仮面なんてもらっても、嬉しくねぇよ!心から!!
「マッチャンハ、キョウカエッテコナイソウダカラ、ミッチェルトイッショニゴハンタベルデェス!」
え!?マジ!?気まずいというか、嫌なんですけど。
あ、そうだ。まっちゃんっての、母さんの事なんで。
……って、今はそれどころじゃない!!だってミッチェルさんの料理は―――。
「イタダキマスデェス!」
恐ろしいほど下手だから!!
それ、食べられるの?ミッチェルさん!それ、炭じゃないの?ミッチェルさん!それ、食べてはいけない何かではないの!?ミッチェルさぁーーーん!!
今日の献立。鮭の炭仕立て。というか、炭。イカ墨ご飯。てか、炭。黒い味噌汁。腐った何かの臭い付き。てか、廃棄物。野菜いためつけ。野菜をいじめてはいけませんよ!!真っ黒になるから!!ていうか、すでに灰。
……た、食べられるものが、一つもねぇーーー!!
「ドシタデェスカ?シンゴノスキナモノ、マッチャンカラキイテツクッタデスヨ?」
いや、確かに好きだよ。和食万歳だよ。だけどさ、これ何よ?炭じゃん、廃棄物じゃん、灰じゃんかよ!!このどれを好きになれと?このどれを食えと?こんなもの食うくらいなら、テーブルひっくり返して、「こんなもの食えるか!!」って言う、かみなりおやじになったほうがマシだよ!幸せだよ!!
これが本当の最期の晩餐だよ!こんなに不味そうな料理は見たことない!!というか、食べ物に見えない食べ物、見た事ないよ!!
どうしたら、あの食材たちをこんな風に穢せるの!?どうして全てが黒くなるの!?純白のご飯は!?どう炊いたら真っ黒くなるんだよ!!そこが知りたいよ!!
「……ちょっと、今日は調子悪いから、いらないや」
「ソウデスカァ?じゃあ、ナニカチンシテモッテイキマスヨ」
「あ、ありがとう」
そういうのがあるんなら、作らないでチンしとけば良かったじゃん!レンジに入れて待ってれば、すぐ終わりだよ?何も焦げずに終わるはずだよ?
「う、上行ってるね、ミッチェルさん」
「アイ。アトデゴハンモッテクカラネ」
……せめて、レンジの食材が焦げませんように。神様、哀れな食材達を助けてあげてください。
「シンゴォ!モッテキタヨ!!トビラヲアケテ!!」
「はい、はぁい」
扉を開けた途端、扉を閉めたくなりました。どうしようもなく、現実逃避がしたくなりました。というか、逃げさせてください!お願いです!!
「ジャ、ワタシ、シタイッテルネ。タベオワッタラ、ジブンデカタシテネ」
「……はい」
今日の献立、パート2。黒焦げから揚げ2個。ていうか、やっぱ炭。チンピラごぼう。誰もこの黒さには、勝てませんっ!だって、炭だもん。サトウの黒ご飯。というか、灰。(さっきのご飯より、3%くらい救われてる。)すみそ汁。墨にしか見えないよ!!これ!!
やんばいよ、やばいって!!こんなに食材を無駄に出来る人は、この世の中に、ミッチェルさん以外いないでしょ!!
奇跡的だよね!!ここまでくると、奇跡としか言いようにないよね!!
「……これ食べなきゃ、俺、死ぬのかな?」
いや、食べたら死ぬかな?きっと、死ぬだろうな。一口食べて、人生に終わりを告げるよ。
そんなのヤダーーー!!しかもダサいっ!!とてつもなくダサいっ!!
ああ、母さん。あなたの料理が懐かしいです。そして、早く帰ってきてください。でないと、大切な一人息子は、死に至ります。食中毒で。
ああ、母さん。カム・バァァァーーーーーーーーーークッ!!