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生まれつき女ですが、なにか?  作者: 周
小学校 編
13/43

女子力

※2014/11/18 『ご拾得は計画的に③』の文末に樹里子の決意を追加しました。

※匂わす程度ですが、腐女子的表現が出てきます。ご不快に思われましたら、ご一報頂ければと思います。

家族が増えるって、良いですね。


あれから洸は、本来の子どもらしい我儘さをどんどん取り戻し、ちょっと生意気で神経質なとても愛らしい少年に育ちました。

独立心も旺盛で、「キィコお姉ちゃん」から「キィちゃん」に呼び方が変わったあたりから、お風呂も寝るのも部屋すらも別になりました。世のお父さんの気持ちがちょっと分かる気がします。僕と父ですか?一緒に入ったことは一度もありませんが、なにか?

成長を喜びつつ、お姉ちゃんとしてはちょっと寂しいです。

彼の今の悩みは、同年代と比べて小さい事。

こればかりは出足が遅れた分、しょうがありません。

僕が抜かれるのは高校に上がる頃かな?と言ったら、「あと四・五年も掛かるの?」と悔しそうに呟いていました。

同学年の中でも背の高い僕を、早く追い越したいようです。

男は二十五歳くらいまで伸びる可能性があるらしいですから、まだまだ取り返せますよ。

いっぱい食べて、たっぷり眠って、大きくなるんですよー。


対して僕ですが、髪は相変わらず短いままです。

伸ばそうとは思ったんですよ?

しかし、こう……人には向き不向きがあるというか……ありていに申し上げれば、似あわなかったんですっ。試しにかぶったカツラがっ、全くっ、これっぽっちもっ!

自分で言うのもなんですが、この凛々しい美少年顔がっ!髪型を選ばせてくれないのですっ!!

お陰様で、美容室に行けば問答無用でショートカットにされ、学校ではその髪型で大絶賛、女子たちには「キリ()」と呼ばれる始末。

カツラ試着の際、あまりに似合わない気まずさを誤魔化すために、一緒に鏡を覗き込んでいた洸にかぶせた所……きょとんとした美少女に見上げられました。

ウホッ!


「ちょっと!ボクが可愛いからって怪しい目つきで見蕩れてないで、少しは女らしく見せる努力をしなよ!養母かあさんは手をワキワキさせないっ!やっやめてっ。あっ、あっ、いやぁ……らめぇ……」


ああ、弟にすら色気で負けた僕……小学生にして、女子力の無さをちょっとだけ嘆きたくなりました。


第二次性徴、早く来ないかな……ボソッ


周囲の女子たちにはソレ(・・)が訪れ始め、花畑の中のススキな気分を味わっていた最高学年の秋、来年から通う龍光(りゅうこう)中学校の学校祭開催のポスターを見かけました。

気分転換がてら学校見学に行くことにしましょうか。

誘わずともついてくる洸と共に、飾り付けられた中学校の門をくぐります。


「キィちゃん。休みの日にまで名札なんか付けてないでさ、たまには可愛い恰好してあげなよ。養母(かあ)さんの持て余された魔手が、再びボクに伸びそうで怖いんだけど」

「名札、大事だよ?」


主に、小学生に見られない僕の身分証明的に。

心の中で付け足しつつ祭り特有の喧騒を見回し、設えられた案内カウンターへと向かいます。

『生徒会』の腕章をした学ラン姿の少年が、営業スマイルでパンフレットを手渡しながら、僕の顔と名札を二度見しました。

ほらね?名札、大事。


はまぐり、小学校の子?」

「はい」

「なら、これをあげるね」


手渡されたのは食券二枚×二人分。

小学生以下に配られるウエルカムドリンク的な特典で、ジュースと焼き菓子に交換できるそうです。


「他に食べたいのあれば、このお姉さんから食券を買ってね」


と、隣の同じく腕章をしたセーラー服の少女を指しました。


「ようこそ、龍光祭へ!」


輝く笑顔を向けられます。

女子力の宿る胸元から目を逸らし、後ろに話を振りました。


「洸はなにを食べたい?」

「んー、焼きそば、おでん、アメリカンドッグ。あ、あんみつも食べたい!」


するりと腕をからめて来ます。

かっ、可愛いじゃないか。これはあれか?『む、胸が当ってるんですけど』『当ててんのよっ』か?洸に胸は無いけれど。

でも、ここは年長者としてたしなめましょう。


「……食べきれるの?」

「キィちゃんも一緒に食べるでしょ?半分こ、しよ?」


首コテン付きで、春の若草色の瞳をウルウルさせて見上げて来ました。

お姉ちゃん、ノックアウトです。ちょっとデレデレしそうです。

受付から「けっ、リア充爆発しろ」とか低い声が聞こえてきましたが、関係ありません。

可愛いは正義です。


「仕方ないなぁ。じゃあ、いま言ったの下さい」


話を振ったセーラー女子から返事は無く、ただキラキラした瞳で僕たちを見ていました。


「あの……?」


僕の不審そうな声を受けて、少々不機嫌な学ラン少年が肘で小突き、彼女はようやくハッと我に返ります。


「あっ!はい、喜んで!!」


前世の居酒屋で馴染みのある挨拶の後、わたわたと無駄な動きを交えながら食券をまとめ、少年に助けられながらお金の受け渡しまでなんとか済ませました。


「お手数おかけしました」


一段落付いたので、軽く頭を下げます。

ちょっと子どもらしくないかな?とは思いますが、言わずにはいられない程、時間が掛かったので……ええ。


洸に腕を引かれ、会計少女の「楽しんでいってねー」に笑顔を返して、校舎へ向います。


「あー、目の保養になった。下の名前、聞きたかったなー」

「受付でナンパしようとすんな。ってか、生意気にも彼女持ちだろ?」

「はあ?なに言ってんの。両方とも男の子だったわよ?」

「えっ?!あの可愛い子も男だったのかよ」

「将来有望な二人よね。片やスラリとしたイケメン、片や小生意気そうな美少年……来年、入ってくるのかしらー」


そんな受付二人の会話を、背で聞きながら。


※ウホッと喜ぶ主人公、「オジサン過ぎる」と言われてしまいました(笑)

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