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生まれつき女ですが、なにか?  作者: 周
小学校 編
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14/43

あるのは大人の都合だけ

※おばちゃん、ボロが出る。の回

背中を煤けさせながら、賑わう校内を移動します。

特に目的は無いので、ぐるっと見て回りましょうかね。

そこで、何故(・・)か不思議(・・・)な事に僕は女子から、洸は男子から声を良く掛けられます。

解せません。ええ、納得できませんとも。

最近ではすっかり社交性も身に付けた洸が、そつなくあしらってくれました。

頼もしいです。うちの子、テラカワユス。

飲み食いして、展示を見て回り、体育館でのステージ発表を見ようということになりました。

扉や窓を開け放した体育館は開放的で、涼やかな秋風が人いきれをすすいでくれます。

舞台はちょうどお芝居が始まったばかりのようで、壁際に設えられた椅子から見る事にします。

と、ここで自然に呼ばれました。


「洸、一人で見ててくれるかな?ちょっと手を洗いに行ってくる」


さすがにそこまでは付いて来れない弟は、ちょっとつまらなさそうに口を尖らせ頷きます。


「あとで内容聞かせてね」


長毛種の猫のように柔らかい緑髪を混ぜっ返して立ち上がりました。

体育館入り口の、来客用と張り紙されたトイレで用を済ませます。

手を洗いながら窓の外をなんの気なしに見ると、黄葉し始めた緑に交じって揺れる、燃えるような赤が目の端に引っ掛かりました。

視線でたどれば、しゃがんだ赤髪の学生服姿の少年が、熱心にライターで何かに火を付けようとしているではないですか!

考えるより先に窓枠を乗り越え、相手の左手首に手刀を振り下ろしていました。

手の物を取り落としビックリ眼で見上げてくるのは、緋色の眼差し。


「放火、ダメ!絶対!!」


落ちたライターを取り上げ、仁王立ちで鼻息荒く捲し立てると、髪の下から覗く困惑顔がちょっと情けなく歪み、最後はムッとした顔を取り繕いました。


「放火じゃ、ない」

「じゃあ、なんですか?花火?焚火?芋でも焼くの?枯れ葉の吹き溜まりが出来ている場所で?考え無しにも程がある!」


ここは一息に畳みかけます。

猫の喧嘩と一緒です。

気迫で押し勝つ積もりです。


「違う。オレは……」


眉間に苦悩を刻み言い募ろうとする少年の右手には、紙を筒状にして何かを巻いた細長い物が。

思わず決めつけ口調で吐き捨てます。


「タバコ?五年以上早いんじゃない?どっちにしても、考えが足りない」

「お前に、何が分かるっ!」


苛立ちも露わに立ち上がった少年は、思ったより背が高く、威圧的に見下ろしてきました。

しかし、ここで負ける訳にはいきません。

勢いに任せましょう。


「分かるわけがない。陰でこそこそ不良を気取って、慣れないタバコに火をつけようと悪戦苦闘している、ボウヤの考えていることなんてさ」


あ。つい、おばちゃん口調が出てしまいました。

でも、お相手の少年はそれ以外の点に食い付いたようなので、セーフです。


「慣れないって、決めつけんな」


歯を噛み締めてギリリと睨んで来ました。


「いやぁ、普通に分かるねぇ。だって、タバコのつけ方、なっていないもの」


鼻先で笑ってあしらうと、緋色の眼光はますます鋭くなります。


「お前は、知ってるってのか」

「タバコ、寄こして」


手を差し出すと、意外と素直に渡してきます。

受け取ったタバコを銜え、息を吸いながらライターの火を近付けました。

ライターを消し、僕よりも二十センチ近く上にある彼の顔に向かって、ふかした煙を吹きかけます。

当然ながら、少年は盛大に咽ました。


「こうやってつけるの。ちなみに初心者は肺に入れたら今みたいに咽るから、口に入れたら吐き出す」


嗤って土の上に捨て、直ぐに踏み消します。

『火をつけた あなたの責任 最後まで』ですよ。


「もっとも、お酒とタバコはハタチになってから……なんて、年下に説教臭いこと言われても、ムッとくるだけだよね……」

「……年、下……?」


お小言を言いながら気付いてしまいました。

今の僕は小学生だってことに。

見た目は子ども、中身はおばちゃん……あぁ。自分で言うと、ちょっと嫌なキャッチフレーズですね。


「生意気言ってすみませんでした。あ、これ、お返しします。火だけは、気を付けて下さいね」


呆気に取られている相手にライターを押し付け、とっととトンズラこくため背を向けます。

が、襟首を掴まれてしまいました。


「ぐえっ」


乙女にあるまじき声が漏れました。

これだから女子力が低いのか?悪いのは、僕か。僕なのかっ?!

ってか、そんなところまで探偵少年を再現しなくていいですっ。

顔だけ振り向いて涙目で元凶を睨み上げると、睨み返されました。


「待て。オレの下って、お前、小学生か……?」

「あー、いえいえいえ、とっ年下に見える年増?」

「蛤《はまぐり》小《しょう》、青野」


後ろから伸びてきた手が名札を持ち上げ、弾きます。


「は、ははは」

「どういうことだ?」

「と、言いますと?」

「ばっくれんな。吸い方が板に付いてた。お前、何者?」

「小学生?」

「『年下に見える年増』は、どこ行った?」

「あー、いずこか、へ?」

「ふざけんな」

「いちいち、気にすんなよ!」


言いながらクッと屈んで、襟を取り返します。


「タバコの吸い方なんて、巷《ちまた》にわんさかあふれてるでしょ!テレビとか映画とか小説とか。そういった情報を蓄積して、イメージして、再現しただけ!これでいい?じゃ、僕は人を待たせてるんで……」


片手を上げて華麗に立ち去ろうとしたら、またしても襟首を取られてしまいました。


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