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ルナ姫の受難  作者: 東吉
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8

 「ここは、どこ? 私たちは、森の中にいた筈よね?」

 私とライラとアリの3人は、ミーナが落ちた深淵へと降りたはずだった。

 それなのに、ここは、海が広がっている。


 「おバカさんねぇ! こんなの幻影に決まっているじゃあないのぉ! 触ってご覧なさいよ」

 「……本物の海だ」


 ライラの言葉に律儀に返したのは、ライラの従者、アリだった。


 「えぇ~? そんなはずないじゃないのぉ!?」

 「……まぁ、いいわ。ご丁寧にも、この場所に踏み入れた瞬間から結界が張られているみたいだし。

 ここのからくりなり、何なりを解かなければ、出ることさえできないみたいよ?」


 「あらっ、お嬢ちゃんも気づいていたのぉ? エライ、エライ!」

 「何だか、小ばかにされているような気がするのだけど……? それに、私の名前はルナ。お嬢ちゃんなんて、呼ばないで」


 「あら、そ~お? ざぁ~んねん! で、ルナお嬢ちゃんは、どうするのかしら? お手並み拝見?」

 結局、この魔女は「一緒に行く」と言いながら、本当についてきただけなのか!

 まぁ、最初かから当てになどしていないけど!


 ここなら、都合よく結界も張られていることだし、私の魔法力を解放しても差支えなさそう。

 なら……手加減無用よね?


 私は、自分の魔力の制御をヴェールを外すかのようにとって解放する。


 私の周りに風、水、火、地の精霊たちを集める。

 「お願い、私の大切な友人、ミーナがどこにいるのか探して! そして、私をミーナの場所まで連れて行って!」

 

 ふわりと私の身体浮いたかと思うと、景色が突然変わった。

 目の前に広がっていた海が消え、ごつごつした岩間が現れたのだ。


 そして、その奥で横たわる人物は……ミーナだった。


 「ミーナっ!」


 すぐにミーナのそばへ駆け寄る。

 とりあえず、息をしているのを確認して、へなへなと彼女の横へ座り込んでしまった。


 ミーナの全身を調べて、怪我がないか探っていく。

 擦り傷一つも許せない……私のために……。


 あんなに高い所から落ちたにしては、ミーナの身体は何一つ傷ついていなかった。

 私の頭の中は、

 『なんで?』

 とリフレインする。


 「……っうん……」

 「ミーナ! 気が付いた? いったい、どうなっているの?」

 ミーナを押し倒さんばかりの勢いで縋り付いた。


 「ルナ……私は大丈夫よ。それよりっ……」

 ミーナが最後までいうことはできなかった。


 「ほうっ! これはこれは……極上の魔力の持ち主だな」


 私の真後ろから聞こえてきた声に、パッと振り返り剣で切りつける。

 しかし、男は余裕で交わし、私の腕を掴んだ。


 「お前……魂も美味そうだな」

 男の言葉に、ザァと鳥肌が立つ。

 「気色悪いこと言わないで!」

 言葉と共に、男の手を払いのけ、お互いの手が届かない距離まで後退する。


 「ククッ、逃げるのか?」

 「相手の力を見極めるための後退は、負けではないわ」

 こちらに余裕があるように見せるため、わざと微笑んでみせる。


 「子猫が強がって、牙をむいているようだな」

 「ライオンの子を子猫と見違い手を出して、大怪我するのは、とんだ馬鹿者だと思わない?」

 「それは……俺のことか?」

 「さぁ……心当たりがあって、審判者様?」


 しばらく、睨みあっていたが、私の言葉に男がニヤリと口角を上げた。

 「俺が審判者かどうか、わからないだろう? 他の者かもしれんぞ」

 「そうね、貴方は審判者のただの使い捨てのコマかもしれないわね? だとしたら、私、結構困るかも……」


 目の前にいる男の魔力は、この辺の結界と先程の幻覚魔法を見ただけでも相当なものだ。

 その上、こうして剣を構えているのはこちらの方で、相手の剣は鞘に収まったままだというのに、この威圧感だ。かなりの手練れであろうことが予想される。

 男の魔力と私のそれとでは、力の差は戦ってみるまでわからない。

 だが、剣の腕は、明らかに男の腕の方が上だろう。


 「困る……? どうしてだ?」

 「貴方よりも強い審判者だと、勝てるかどうかわからないから」

 私の言葉を聞いた男は、ニヤリと口角を上げた。


 「俺に勝てるのか? それに、俺よりも弱い審判者とは思わないのか?」

 「勝てるわよ。 それに、貴方が自分よりも弱い相手の下につくとは思えない!」

 「ククッ、その気の強さ、気に入った!」

 「別に気に入ってくれなくてもいいわよ」


 「その気の強さ、極上の魔力と魂……俺の嫁にならないか?」

 男との間の距離を一瞬で詰められ、視線を絡めとられる。


 「ちょっとぉ、ここにも極上の魔力と容姿をした美女がいるでしょう! 私を無視しないでよぉ!」

 ライラが、私を自分の後ろへ遠ざけ、男へしなだれかかった。


 早っ! 私にとっては、助かったけど。


 しかし、男は、一瞬でライラの手を跳ね除け、かなりの距離をとって後退した。

 「あらぁ、どうして逃げるのぉ? 私みたいな美女だと緊張するのかしらぁ?」


 「誰が美女だ? お前の後ろにいる女なら美女だと認めるが? 俺は、抱き付くのもその反対も女がいい! 俺にそっちの趣味はない! 今度、俺に抱き付こうとしてみろっ、殺すぞ?」

 ライラには、殺気もあらわに言い切った男が、今度は私へ極上の笑みを向ける。

 「また、会おう! 今度の逢瀬は二人きりで。できれば、寝台の中がいいな!」


 私が、絶対にない! と否定する前に男の姿は消えてしまっていた。


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