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「ここは、どこ? 私たちは、森の中にいた筈よね?」
私とライラとアリの3人は、ミーナが落ちた深淵へと降りたはずだった。
それなのに、ここは、海が広がっている。
「おバカさんねぇ! こんなの幻影に決まっているじゃあないのぉ! 触ってご覧なさいよ」
「……本物の海だ」
ライラの言葉に律儀に返したのは、ライラの従者、アリだった。
「えぇ~? そんなはずないじゃないのぉ!?」
「……まぁ、いいわ。ご丁寧にも、この場所に踏み入れた瞬間から結界が張られているみたいだし。
ここのからくりなり、何なりを解かなければ、出ることさえできないみたいよ?」
「あらっ、お嬢ちゃんも気づいていたのぉ? エライ、エライ!」
「何だか、小ばかにされているような気がするのだけど……? それに、私の名前はルナ。お嬢ちゃんなんて、呼ばないで」
「あら、そ~お? ざぁ~んねん! で、ルナお嬢ちゃんは、どうするのかしら? お手並み拝見?」
結局、この魔女は「一緒に行く」と言いながら、本当についてきただけなのか!
まぁ、最初かから当てになどしていないけど!
ここなら、都合よく結界も張られていることだし、私の魔法力を解放しても差支えなさそう。
なら……手加減無用よね?
私は、自分の魔力の制御をヴェールを外すかのようにとって解放する。
私の周りに風、水、火、地の精霊たちを集める。
「お願い、私の大切な友人、ミーナがどこにいるのか探して! そして、私をミーナの場所まで連れて行って!」
ふわりと私の身体浮いたかと思うと、景色が突然変わった。
目の前に広がっていた海が消え、ごつごつした岩間が現れたのだ。
そして、その奥で横たわる人物は……ミーナだった。
「ミーナっ!」
すぐにミーナのそばへ駆け寄る。
とりあえず、息をしているのを確認して、へなへなと彼女の横へ座り込んでしまった。
ミーナの全身を調べて、怪我がないか探っていく。
擦り傷一つも許せない……私のために……。
あんなに高い所から落ちたにしては、ミーナの身体は何一つ傷ついていなかった。
私の頭の中は、
『なんで?』
とリフレインする。
「……っうん……」
「ミーナ! 気が付いた? いったい、どうなっているの?」
ミーナを押し倒さんばかりの勢いで縋り付いた。
「ルナ……私は大丈夫よ。それよりっ……」
ミーナが最後までいうことはできなかった。
「ほうっ! これはこれは……極上の魔力の持ち主だな」
私の真後ろから聞こえてきた声に、パッと振り返り剣で切りつける。
しかし、男は余裕で交わし、私の腕を掴んだ。
「お前……魂も美味そうだな」
男の言葉に、ザァと鳥肌が立つ。
「気色悪いこと言わないで!」
言葉と共に、男の手を払いのけ、お互いの手が届かない距離まで後退する。
「ククッ、逃げるのか?」
「相手の力を見極めるための後退は、負けではないわ」
こちらに余裕があるように見せるため、わざと微笑んでみせる。
「子猫が強がって、牙をむいているようだな」
「ライオンの子を子猫と見違い手を出して、大怪我するのは、とんだ馬鹿者だと思わない?」
「それは……俺のことか?」
「さぁ……心当たりがあって、審判者様?」
しばらく、睨みあっていたが、私の言葉に男がニヤリと口角を上げた。
「俺が審判者かどうか、わからないだろう? 他の者かもしれんぞ」
「そうね、貴方は審判者のただの使い捨てのコマかもしれないわね? だとしたら、私、結構困るかも……」
目の前にいる男の魔力は、この辺の結界と先程の幻覚魔法を見ただけでも相当なものだ。
その上、こうして剣を構えているのはこちらの方で、相手の剣は鞘に収まったままだというのに、この威圧感だ。かなりの手練れであろうことが予想される。
男の魔力と私のそれとでは、力の差は戦ってみるまでわからない。
だが、剣の腕は、明らかに男の腕の方が上だろう。
「困る……? どうしてだ?」
「貴方よりも強い審判者だと、勝てるかどうかわからないから」
私の言葉を聞いた男は、ニヤリと口角を上げた。
「俺に勝てるのか? それに、俺よりも弱い審判者とは思わないのか?」
「勝てるわよ。 それに、貴方が自分よりも弱い相手の下につくとは思えない!」
「ククッ、その気の強さ、気に入った!」
「別に気に入ってくれなくてもいいわよ」
「その気の強さ、極上の魔力と魂……俺の嫁にならないか?」
男との間の距離を一瞬で詰められ、視線を絡めとられる。
「ちょっとぉ、ここにも極上の魔力と容姿をした美女がいるでしょう! 私を無視しないでよぉ!」
ライラが、私を自分の後ろへ遠ざけ、男へしなだれかかった。
早っ! 私にとっては、助かったけど。
しかし、男は、一瞬でライラの手を跳ね除け、かなりの距離をとって後退した。
「あらぁ、どうして逃げるのぉ? 私みたいな美女だと緊張するのかしらぁ?」
「誰が美女だ? お前の後ろにいる女なら美女だと認めるが? 俺は、抱き付くのもその反対も女がいい! 俺にそっちの趣味はない! 今度、俺に抱き付こうとしてみろっ、殺すぞ?」
ライラには、殺気もあらわに言い切った男が、今度は私へ極上の笑みを向ける。
「また、会おう! 今度の逢瀬は二人きりで。できれば、寝台の中がいいな!」
私が、絶対にない! と否定する前に男の姿は消えてしまっていた。




