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「いったい、どういうことっ!?」
私は、ライラと名乗った魔女に詰め寄る。
返答次第では、息の根を止めてやる!
「く、苦しい……首、締めすぎ……」
これでは、話もできないか……少しだけ手を緩める。
「それで、どういうことなの?」
「私のせいじゃないわよぉ! これはきっと、審判よ」
「……はっ?」
「だからぁ、貴女を審査するって、言っているでしょ!」
「どうして、私が審査を受けなければならないの? 意味がわからない!」
「そんなこと、私だって知らないわよ! ただ、私は、言われたことをしているだけ! ちょっと、アリ! 貴方ねぇ、ご主人様が危ない目に遭っているんだから、助けるとか何とかしなさいよねっ! 全くもう、使えないんだから!」
私がライラから手を引くと、彼女は服の埃を取るようにパタパタと払う動作をしながら、従者に向かって小言を言い始めた。
「……必要ない」
ライラの言を最後まで聞いた後に放った彼の言葉は、呆気ないほど一言だけだった。
それに対しライラは、その言葉にも反応し、
「キーーッ! 必要ないですって? どういうことよっ!」
「……殺気がなかった」
「だからってねぇ…………」
延々と続きそうな会話を打ち切るべく声をかける。
「とにかく私は、ミーナを助けに行く。それが、審判だというなら、受けて立つ!」
一瞬、私の周りに風が立ち、風の精霊の祝福を受ける。
「どうしたの、二人とも? 口が開いているわよ?」
「べ、別に、あんたなんかに、見惚れていたわけじゃないわよ! 大体、私の方が綺麗だしっ!」
「…………?」
「いいのよっ、わからなくても! ほらっ、小娘を助けに行くんでしょ! 仕方がないから、私もついて行ってあげるわよ」
ライラの頬が、ほんのりと赤くなっているのが気にならなくもないが、一人でミーナを助けに行くよりも、同行者がいるのには、心強い。
ミーナ、待っていて。
必ず、助けに行くから。
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(閑話)
「殿下、呆けてないで、ちゃっちゃと仕事して下さいね! はい、次は、これです」
ドサドサッと目の前に書類が積まれる。
「おいっ! まだあるのか!?」
「仕方ないじゃありませんか。殿下がかの国の王女様に振られてしまって、王様と王妃様が傷心旅行に行かれてしまったのですから」
「はぁ!? あれは、傷心旅行じゃない! というか、何で、俺が振られて、本人が行くんじゃなくて、両親の傷心旅行なんだ? それに、俺は振られてないっ!」
「まあまあ、いいじゃないですか、そんなことどうでも! それに、どちらにしても王様と王妃さまの仕事の穴埋めは、誰かがしないといけないのですから。その穴埋めは、必然的に殿下がされるしかないのです!」
俺は、ルナを探しに行きたいのに……。
ルナ……見つけた時には覚悟しておけよ!