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ただ、抱きしめられていたはずだったのに、いつの間にか唇が柔らかい何かで塞がっていた。
大きく見開いて視界に入ったのは、王子の碧色の瞳だった。
「んっ、んーっ……!」
声をあげようとするが、唇が塞がっているため、変な声しか出せない。
そっか! 私が口を開けばいいのか!
「あっ……!」
だが、開いた口の中に、暖かい何かが侵入してきた。
その何かが、私の歯列を探る様に舐める。
そして、その奥へと侵入し……。
自分でも、目の前が暗くなり、気が遠くなるのがわかった。
すると、口を塞がれていたはずなのに、急にそれが離れた。
しかし、相変わらず、王子の顔は近くて……。
何とか、王子の顔へ焦点を合わせる。
「ルナ、キスする時、息を止めないで」
クスッと笑みをこぼし、今度は軽くチュッとリップ音を立てて、唇にキスを落とした。
私の頭の中は、真っ白で、言葉など何も浮かんでこない。
あれが……キス?
夢の中で過激すぎると思っていたが、実際のキスは、比にならない!
キスしながら、息ってするものなの?
「……では、いつ息をすればいいの?」
「鼻で……。理屈で考えるよりも、実践で身につけた方がいいだろ」
フィリップスの唇で私のそれを塞ぐ。
今度は、唇と意識しているためか、甘く感じられた。
いや、先程も甘かったのだが……。
初めてのキスは、それと感じるよりも、あまりの熱さに驚いたのだった。
唇から痺れてくるような気がする。
「ルナ、息して……」
少しだけ、唇が離れて甘く呟く声が聞こえる。
フィリップスの吐息も甘いが、何より、暖かい唇が離れてしまったことを残念に思っていた。
また、塞いで欲しい……。
その暖かな唇で……。
「も……っと……」
「……! 誘うのが上手だね、ルナは」
「あっ……!」
今度のキスは、噛みつかれるのかと思うほど、獰猛なキスだった。
いきなり、唇を軽く噛まれて、舌を口の中に入れられたあげくに、内側を探られる。
そして、舌に絡みつけて、唾液と共に吸い上げられる。
直接触れ合っていたのは、口だけなのに、何故か、腰、両脚の間まで痺れてきたような気がする。
今まで感じたことのない身体の中が疼くように主張する。
フィリップスが少しだけ、唇を離し、顔の向きを変える。
その隙に私の唇から、甘い吐息が漏れる。
「はっ、ぁっ……んっ!」
今度は違う角度から、口腔内を攻めたてられる。
私は、だんだん、膝の力が抜けてきて、これでは、立っていられないと思った。
しかし、崩れ落ちることはなかった。
身体に意識を少し向けると、フィリップスの両手でしっかりと背中と後頭部を支えられていた。
そして、私の両脚の間に彼の片脚が差し込まれ、かなり密着していた。
意識したとたんに、両脚の間の疼きが増したような気がした。
何だか、粗相をしたようで、自分で濡れているのがわかった。
恥ずかしい! 私、もしかして、お漏らししちゃったの?
嫌だ! これをフィリップスに知られるわけにはいかない!
何とか、離れなくちゃ!
私の意識が他所へいっているのを感じたのだろう。フィリップスは、
「俺のことに集中して!」
と注意を促し、口づけを深くしてくる。
私は、一刻も早く何とかしなくては! と気が焦るばかりだったが、フィリップスとのキスは気持ちよすぎて、止められない状態だった。
せめて、お漏らししたことだけは、バレない様にと思い、脚の位置を変えようとモゾモゾする。
すると、フィリップスは、私を壁に押し付けて、左手で片脚を上げさせて、右手を腿の内側へすべらせてきた。
私ったら、いつの間に、こんな破廉恥な格好をしているのかしら!
フィリップスがしていることだと、頭がまわっていなかった。
「ルナ……」
フィリップスの甘い呼びかけの後の言葉は、突然の乱入者のおかげで聞くことはできなかった。




