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ルナ姫の受難  作者: 東吉
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今月中で終わる予定でしたが、もう少し、かかりそうです。

思いのほか、王子がヘタレでした……。

 「で?」


 「で? って、ミーナ! 最近貴女の、私に対する態度、酷くない?」

 「ルナ、毎日毎日、フィリップス殿下が、笑いかけてくれただの、そうでなかっただの、挙句の果てに、服が似合っていて素敵だった……とか、聞かされているこっちの身にもなってよね! これだから恋する女って……」

 ミーナは首を左右に振りながら、溜息をついている。


 「つまらない? そうなのよね……私も、殿下とたくさんお話したいのに、彼の前に出ると緊張して何も言葉が出てこなくなっちゃうのよね……」

 「そうそう、ルナの場合、殿下の前だと全然違うわよね。真っ赤になって、可愛いわよ」

 「可愛くなんてない! だって、殿下の表情が段々無表情になっていくんだもの……」


 自分でも表情が暗くなるのがわかる。

 ミーナもそれもそうね……などと言いながら、否定してくれないし……。


 「とにかく、もう、こんな時間なんだし、寝たら?」

 「……そうね。では、ミーナ、お休みなさい。明日こそ、いいことがありますように!」

 「おやすみなさい、ルナ。また、明日、いいことがありますように」

 ミーナは、私に『頑張って!』という意味のウィンクをして、部屋を出た。




 私はベッドで横になったものの、なかなか眠りにつけずにいた。

 これはもう、温かい飲み物でも貰いに行こうかなどと、考え起き上がった時に異変に気づいた。


 部屋の中に誰かいる!


 咄嗟にベッドから横へ転がるようにして降り、相手との距離を取る。

 ベッドをはさみ向かい側に男がいるのがわかった。


 「へぇ、大したものだ! 俺の気配を察知したか? だが……」

 目の前の男が消えた! そう思った次の瞬間、羽交い絞めされていた。

 耳元で男の声が聞こえたことで、その男の仕業だと気付いた。

 「気配を感じたなら、すぐに殺すべきだったな!」


 男がニヤリと笑った気配がする。

 私は、声を出そうにも、男に喉を圧迫され、息をするのがやっとだった。

 「意識があったんじゃ、俺の邪魔をしかねないので、お姫様には眠っていてもらいますよ?」

 男は、いつの間にか、剣ではなくハンカチのようなものを手に持っており、それで私の鼻と口を塞いだ。


 ツンと鼻にくる匂いだった。

 嗅ぐものか! ここで意識を手離すということは、男に好きにさせることになる。

 殺すつもりなら、さっきの間合いで殺されている。

 ならば、拉致される? 


 しかし、呼吸を止めていられるのも時間の問題だった。

 先程から、男に喉を締め付けられていたため、すぐに息を止めていられなくなったからだ。


 そのため、意図せず、大きく息を吸うことになり、抵抗する力さえ失ってしまった。

 そして、膝が崩れ落ちると思った時を最後に、暗闇に意識を手渡していた。



 **********



 気づいた時には、両手両足を縄で縛られており、猿轡さるぐつわまでされていた。

 「……んっ、んっ!」

 何とか声を出すが、言葉にならない。


 「気が付いたのか? 思ったより早かったな! なら、薬を追加しておくか?」


 男の言葉に、私は慌てて首を左右に振り、嫌だと訴えた。

 男はニヤリと表情を緩ませ、私に近づいてきた。


 「なら、逃げようなどと、無駄な事をするなよ?」

 男の言葉に誰が従うか! とは思ったが、ここは、従ったふりをした方が得だろうと思い、私は、首を縦に振る。


 「ふんっ! 誰が従うか! っていう目をしておいて、面白い姫さんだな、あんた!」

 ゆっくりと男の手が近づいてきた。


 何をするつもり?

 目を大きくみはる。

 

 その手は、私の頬を触り、いや、猿轡をだ!

 そのまま、後ろへと手がまわる。

 男は、両手を私の頭の後ろへまわし、猿轡を外しにかかった。


 良かった! これで、何故こんな真似をしたのか聞ける!

 そう思った。

 しかし、猿轡を外されて、大きく息を吸った瞬間、男の左手は私の後頭部を支えて、右手は顎を掴まれ上を向かされていた。


 「あっ!」

 男の顔が初めて、はっきり見えた!

 この男は!

 と思った時には、もう既に、唇を塞がれていた。


 私は、叫ぼうとしていたこともあり、口を大きく開けていた。

 そこを上手く利用し、男の舌が口の中に入り込んできていた。


 口腔内を舐めまわすように探られて、気持ち悪い!

 手足が自由にならないため、男の舌を思いっきり噛もうとしたが、男の舌はそれを察知したのか、私の舌へ絡みついてきた。


 吐きそう!

 うぷっ!

 声にならない声を聞き取り、やっと離れてくれた。


 「おいおい、いくらなんでも、吐くこたないだろう? これでも俺は、女殺しの異名もとっているんだぜ?」

 「男のくせに、弱い女を手にかけるなんて、それこそ、男の風上にも置けないヤツだな!」

 「はっ?」


 男は、私の言葉に虚をつかれ、ボーっとしていたが、すぐに立ち直り、ニヤリと下卑た笑みを向けた。

 その顔を見ていたくなくて、すぐに横を向き、口を開いた。


 「そんなことより、貴方は何者なの? 何のために、私を拉致したの?」

 「おやおや、姫さんは、俺のことをもう、お忘れですか?」


 「忘れてなどいない。けど、あの時、崖下で貴方は、名乗らなかった。しかも、審判者の指示で動いているようなフリをしていたでしょう? 何故、そんなことしたの?」

 「質問が多いな。だが、俺がその質問に答えてやる義理など、一つもない。何なら、見返りを何かくれるって言うなら、考えなくもないけどな」


 私は、男の顔など見たくもなかったが、睨みつけずにはいられなかった。


 「何かなら、もうしたじゃないっ! しかも勝手に!」

 私のファーストキスだったのに……。

 ファーストキスは、王子としていたけど、あれは、額にチュッくらいだったし!


 唇の……あれは、夢オチだったし……。


 「そんな目で睨んで、俺を煽っているのか? もっとして欲しかったのか?」


 この男は、バカだ!

 どうして、私がこんな男を!

 私は、怒っているのに!


 「バッカじゃないの? なんで私が、貴方を煽っていることになるのよ? 私は、怒っているのよ!」

 「そんな、潤んだ瞳で見上げられたら、男の目からは、誘っているようにしか見えないね!」

 「そんなこと思うのは、貴方だけでしょっ! 普通の男の人は、思わないわよ!」


 男は、

 「はぁっ、やれやれ!」

 と、呆れたように言った。


 「何よ? 本当のことでしょっ?」

 「ここまで、お子ちゃまだったとは! こりゃ、あの王子様とも、何にもねーな! まぁ、その方が、俺にとっちゃ好都合だが」


 「な、何言ってんのよ? とにかく、貴方は何者なの? 審判者、つまり、王妃様の手の者ではないの?」

 「王妃? なんだそれ? 審判者っていうのは、王妃だったのか?」

 



長くなったので、二つに分けます。

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