20
今月中で終わる予定でしたが、もう少し、かかりそうです。
思いのほか、王子がヘタレでした……。
「で?」
「で? って、ミーナ! 最近貴女の、私に対する態度、酷くない?」
「ルナ、毎日毎日、フィリップス殿下が、笑いかけてくれただの、そうでなかっただの、挙句の果てに、服が似合っていて素敵だった……とか、聞かされているこっちの身にもなってよね! これだから恋する女って……」
ミーナは首を左右に振りながら、溜息をついている。
「つまらない? そうなのよね……私も、殿下とたくさんお話したいのに、彼の前に出ると緊張して何も言葉が出てこなくなっちゃうのよね……」
「そうそう、ルナの場合、殿下の前だと全然違うわよね。真っ赤になって、可愛いわよ」
「可愛くなんてない! だって、殿下の表情が段々無表情になっていくんだもの……」
自分でも表情が暗くなるのがわかる。
ミーナもそれもそうね……などと言いながら、否定してくれないし……。
「とにかく、もう、こんな時間なんだし、寝たら?」
「……そうね。では、ミーナ、お休みなさい。明日こそ、いいことがありますように!」
「おやすみなさい、ルナ。また、明日、いいことがありますように」
ミーナは、私に『頑張って!』という意味のウィンクをして、部屋を出た。
私はベッドで横になったものの、なかなか眠りにつけずにいた。
これはもう、温かい飲み物でも貰いに行こうかなどと、考え起き上がった時に異変に気づいた。
部屋の中に誰かいる!
咄嗟にベッドから横へ転がるようにして降り、相手との距離を取る。
ベッドをはさみ向かい側に男がいるのがわかった。
「へぇ、大したものだ! 俺の気配を察知したか? だが……」
目の前の男が消えた! そう思った次の瞬間、羽交い絞めされていた。
耳元で男の声が聞こえたことで、その男の仕業だと気付いた。
「気配を感じたなら、すぐに殺すべきだったな!」
男がニヤリと笑った気配がする。
私は、声を出そうにも、男に喉を圧迫され、息をするのがやっとだった。
「意識があったんじゃ、俺の邪魔をしかねないので、お姫様には眠っていてもらいますよ?」
男は、いつの間にか、剣ではなくハンカチのようなものを手に持っており、それで私の鼻と口を塞いだ。
ツンと鼻にくる匂いだった。
嗅ぐものか! ここで意識を手離すということは、男に好きにさせることになる。
殺すつもりなら、さっきの間合いで殺されている。
ならば、拉致される?
しかし、呼吸を止めていられるのも時間の問題だった。
先程から、男に喉を締め付けられていたため、すぐに息を止めていられなくなったからだ。
そのため、意図せず、大きく息を吸うことになり、抵抗する力さえ失ってしまった。
そして、膝が崩れ落ちると思った時を最後に、暗闇に意識を手渡していた。
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気づいた時には、両手両足を縄で縛られており、猿轡までされていた。
「……んっ、んっ!」
何とか声を出すが、言葉にならない。
「気が付いたのか? 思ったより早かったな! なら、薬を追加しておくか?」
男の言葉に、私は慌てて首を左右に振り、嫌だと訴えた。
男はニヤリと表情を緩ませ、私に近づいてきた。
「なら、逃げようなどと、無駄な事をするなよ?」
男の言葉に誰が従うか! とは思ったが、ここは、従ったふりをした方が得だろうと思い、私は、首を縦に振る。
「ふんっ! 誰が従うか! っていう目をしておいて、面白い姫さんだな、あんた!」
ゆっくりと男の手が近づいてきた。
何をするつもり?
目を大きくみはる。
その手は、私の頬を触り、いや、猿轡をだ!
そのまま、後ろへと手がまわる。
男は、両手を私の頭の後ろへまわし、猿轡を外しにかかった。
良かった! これで、何故こんな真似をしたのか聞ける!
そう思った。
しかし、猿轡を外されて、大きく息を吸った瞬間、男の左手は私の後頭部を支えて、右手は顎を掴まれ上を向かされていた。
「あっ!」
男の顔が初めて、はっきり見えた!
この男は!
と思った時には、もう既に、唇を塞がれていた。
私は、叫ぼうとしていたこともあり、口を大きく開けていた。
そこを上手く利用し、男の舌が口の中に入り込んできていた。
口腔内を舐めまわすように探られて、気持ち悪い!
手足が自由にならないため、男の舌を思いっきり噛もうとしたが、男の舌はそれを察知したのか、私の舌へ絡みついてきた。
吐きそう!
うぷっ!
声にならない声を聞き取り、やっと離れてくれた。
「おいおい、いくらなんでも、吐くこたないだろう? これでも俺は、女殺しの異名もとっているんだぜ?」
「男のくせに、弱い女を手にかけるなんて、それこそ、男の風上にも置けないヤツだな!」
「はっ?」
男は、私の言葉に虚をつかれ、ボーっとしていたが、すぐに立ち直り、ニヤリと下卑た笑みを向けた。
その顔を見ていたくなくて、すぐに横を向き、口を開いた。
「そんなことより、貴方は何者なの? 何のために、私を拉致したの?」
「おやおや、姫さんは、俺のことをもう、お忘れですか?」
「忘れてなどいない。けど、あの時、崖下で貴方は、名乗らなかった。しかも、審判者の指示で動いているようなフリをしていたでしょう? 何故、そんなことしたの?」
「質問が多いな。だが、俺がその質問に答えてやる義理など、一つもない。何なら、見返りを何かくれるって言うなら、考えなくもないけどな」
私は、男の顔など見たくもなかったが、睨みつけずにはいられなかった。
「何かなら、もうしたじゃないっ! しかも勝手に!」
私のファーストキスだったのに……。
ファーストキスは、王子としていたけど、あれは、額にチュッくらいだったし!
唇の……あれは、夢オチだったし……。
「そんな目で睨んで、俺を煽っているのか? もっとして欲しかったのか?」
この男は、バカだ!
どうして、私がこんな男を!
私は、怒っているのに!
「バッカじゃないの? なんで私が、貴方を煽っていることになるのよ? 私は、怒っているのよ!」
「そんな、潤んだ瞳で見上げられたら、男の目からは、誘っているようにしか見えないね!」
「そんなこと思うのは、貴方だけでしょっ! 普通の男の人は、思わないわよ!」
男は、
「はぁっ、やれやれ!」
と、呆れたように言った。
「何よ? 本当のことでしょっ?」
「ここまで、お子ちゃまだったとは! こりゃ、あの王子様とも、何にもねーな! まぁ、その方が、俺にとっちゃ好都合だが」
「な、何言ってんのよ? とにかく、貴方は何者なの? 審判者、つまり、王妃様の手の者ではないの?」
「王妃? なんだそれ? 審判者っていうのは、王妃だったのか?」
長くなったので、二つに分けます。




