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短いですが、何とか時間ができたのでUPします。
「失敗しただと?」
底冷えのする声音に、白服の男の身体が、一瞬ビクッと震えた。
それを、声を発した人物が目を細めてジッと見つめる。
「申し訳ございません。今一度、チャンスを頂ければ……」
「チャンスをあげたとして、どうする? もう既に、あの娘はヴィルヘルムへ入り込んでしまったというのに?」
あの娘は、余の思惑通りヴァンデル国に嫁がず、勝手なことをした。これは、このまま放っておくわけにはいかない。
「……姫様をどうなさるおつもりですか?」
「そなたらが知ってどうする? どちらにせよ、そなたらはしくじったのだ。今後は、銀狼の仕事だ! 関係なかろう? ヤツならば、あの赤毛の始末を、ちゃんとつけてくれよう?」
ヒュッと男が息を吸い込む音が聞こえた。
「ルナ様は、この国唯一の巫女様の資格のあるお方でございます。あの見事なストロベリーブロンドの髪と銀色の瞳は、巫女の証でございますれば……!。最後の巫女様は、ルナ様のっ……」
「黙れ! もうよい、下がれ!」
白服の男、神官は、一礼して、部屋を下がった。
ルナは、忌々しいほど、産みの母に生き写しだった。
王の娘、そして、ライオネルと双子の妹姫としての環境を整えてやった。
そんな義理などないのに!
それもみな、愛しい女であり、ライオネルの母の遺言でなければ、絶対に聞き入れられないことだった。
恩を仇で返すようなやり方など、流石、あの女の娘だ。
報復が必要だ。
そう、私の愛しい女を悲しませた罪は重い。
この国の巫女として、一生幽閉すべきだったのだ!
そうだな……。
そうすれば、神官どもも、何も文句は言わまい。
とりあえず、銀狼へは、連れ戻すようにと、指令を変更することにしよう。
既に、息の根が絶えていた時には……仕方ない。
それも、あの女の時の運、ということか。




