反逆者
但馬の口端から一筋の血が流れた。同時に甘酸っぱい臭いがエヌマルイチの鼻を衝く。
青酸化合物を体内に入れたようだ。
死が目前の歳だというのに、いまだに服毒用の薬物を持っていたのか…エヌマルイチは但馬の組織へのゆるぎない忠誠に身震いした。
その毒薬は組織の秘密を守るため、万が一の時、自らを始末するためのものだった。
しかし、但馬はその組織に全てを奪われ絶望の中で自らの命を絶ったのだ。
周りの部下たちは、但馬とエヌマルイチのやり取りを聞いていた。
エヌマルイチは部下に命令を下した。
「この屋敷を跡形もなく焼き払おう」
部下の一人が隠し部屋がまだ発見できないことを訴えた。
全て焼き払えば隠し部屋を捜す手間も省ける。そこにジョーカーがいれば焼け出されるまでのことだ。
そう述べると、もう一人の部下が尋ねた。
「私服組にその事を伺わなくてもよろしいのですか?」
「かまわん。私の独断で行う。責任はすべて私がとる。何か意見があるか?」エヌマルイチは質問してきた部下に尋ねた。
忠誠心の強い自分に似た部下だった。
「その行為は反逆者とみなされます」その部下は少し語調を強めにエヌマルイチに告げた。
エヌマルイチは冷ややかな笑みで答えた。
「いつも現場で作戦を遂行し、身を危険に晒しているのは我々だ。いちいち私服組に意見を聞いていたら時間を無駄にするだけでなく勝つチャンスを逃がし、目的を達成できなくなる場合もある。事実、そういうことが過去に何度もあった。違うか?」
部下たちはその言葉に反論しなかった。
「言っておくが、これは反逆行為じゃない。…これは…改善行為、…改革だ」




