出立
「ユゥリィ………無事に帰ってきてくださいね?
必ず………必ずですッ!」
ミリアムの言葉に 王は、無言のままで頷いた。
そして 彼を伴った一団は、城を後にする。
後に残された面々は、何かを願うようにして その姿が見えなくなるまで 見つめていた。
「大丈夫ですよ ミリアム王妃。
王は、必ず 帰られます。
勿論 貴女の大切な友人のリーン嬢もご一緒に」
その言葉に 王妃は、涙を流したままの顔を上げて 頷く。
「ありがとう………その言葉は、何よりも わたくしの心の励みになるわ?」
涙を拭いながら ミリアムは、微笑んだ。
「それでは、そろそろ お部屋に戻りましょう。
お体に 触ります」
シャーリーは、そう言うと ショールを 王妃にかける。
そして 他の侍女達に指示をする ルチアに視線を送り そのまま 建物の中へと入っていった。
「彼方方は、こちらに来ていただきます。
お部屋の方も 用意しておりますので 着替えてください」
侍女頭の言葉に ジャンヌとイヴは、背筋を伸ばす。
「我々の話を、全て 信じてくださっているわけでは、ないということでしょうか。
確かに 信じられない 内容かもしれませんけど………」
ジャンヌは、別室に案内されて 目を細めた。
逆に イヴの方は、城の中で日の当たらない場所だということに気が付いていないのか どこか ひゃいでいるらしい。
「確かに その通りです。
けれど それと同時に………符合する事柄を、理解しているつもりです。
わたくし達の務めは、ミリアム様を精神的にも 身体的にも お守りすること。
あの方は、ずっと 辛い思いをして参りました。
今 ミリアム様のお心を支えているのは、陛下への愛なのです」
「ルチア様の気持ちは、お察しします。
我々にも 命を賭けて お守りしたいと思う方がおりますから」
「そぉですよぉ~?
主を思う気持ちは、同じなんですぅ」
2人の真剣な眼差しに ルチアは、息を呑んだ。
彼女が、口を開こうとした時 部屋の扉が、勢いよく 開いた。
「「「ルチア様!!!」」」
3人は、あまり 見知られた侍女ではないが 申し分のない仕事をこなす 新米の侍女の3人娘だ。
彼女達は、上級貴族の娘達だが 他の傲慢な令嬢達とは、違い 礼儀を弁えている。
敢えて 問題を指摘するならば 身分に関係なく人に接する事と素直すぎるということだろう。
思ったことを、そのまま 口に出してしまうことも多々あり 助かることの反面 面倒に巻き込まれることも、少なくない。
「一体 どうしたというのです。
3人共 落ち着きなさい。
王宮侍女なのですから」
年配の侍女頭は、動じることもなく 落ち着きを払っている。
「<ローズ>さんのお部屋の掃除をしていたんですけど………」
「そうしたら 突然 声が聞こえて………」
「声の聞こえる方も振り向いてみたら………」
「「「<ローズ>ちゃんが、目を覚ましたんですッ!!!」」」