10.歩み寄る二人
「シャーロットはウィリアムと愛称で呼び合っているのだね」
アルフレッドがぽつりとつぶやいた。
「初めてお会いした時殿下は14歳で、生意気な弟のように思えて、気安く愛称呼びを受け入れました。不敬だったかもしれません」
「いや、それにウィリアムはレーゲンスブルク家と貴方のことを正しく認識していた」
「成長されて、社交辞令がお上手になったのでしょう」
「シャーロット、数々の失礼をしていた、私の謝罪を受けてくれるだろうか」
「そんな…王弟殿下が謝罪する必要などありません。兄を救っていただいた恩人ですのに」
「…なんだか貴方に王弟殿下と呼ばれると、とても距離を置かれてる気がする。フレッドと、呼んでもらえないか?そして私にシャーリーと呼ぶ許可を」
「それは…」
「どうか私の願いを聞き入れてほしい」
「…では、こちらの屋敷に滞在中だけそう呼ばせていただきます」
諦めてそう答えると、少しだけフレッドの表情が明るくなった。
「その、ドレスを着たシャーリーはとても美しいと思う。ウィリアムに押されて、用意してきた言葉をシャーリーに伝えられなかったのが残念だ」
シャーロットは真っ赤になった。
「私など…殿下…フレッド様の認める美女が現れれば、自然と口にできるかと」
「気持ちを伝えるには、時間がかかりそうだな」
急に距離を縮めて来たアルフレッドにシャーロットは戸惑うばかりだった。
ドレスを着替えに戻ると告げると、まだ見ていたいと言われそのまま2人で応接室に戻ることになる。
そこへマックスがいくつかの箱を持ってきた。
フレッドに促されて開けてみると、アクアマリンやエメラルド、ルビー、とても高そうな宝石のアクセサリーだった。
「10年間仕舞われたままだったものだ。シャーリーが受け取ってくれると嬉しい」
(それは、第二妃様の形見と言うことでは?)
「こんな高価なものいただけません!」
「なぜ?使わないと意味がないだろう」
「フレッド様、宝石は妻や婚約者、恋人に贈るものです。贈る方が現れるまで大事になさってください」
「私はシャーリーに贈る権利がほしい、まだ無理だろうか?」
「…困ります」
シャーロットは本当に困っていた。自分には向けられるはずのない好意を、このままでは勘違いしてしまいそうだ。
断ってもフレッド様は引かず、王宮のパーティーの時は借りて着用することに落ち着いて、執事のマックスに預かってもらった。
「おやすみ、また明日」
その後シャーロットを部屋まで送ったフレッドは、しっかりと手に口づけを落としていった。




