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魔法使いになるっ!  作者: 東メイト
第七章 魔道競技祭(2年目)編
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第47話:2年目の魔道競技祭

大変永らくお待たせしました。


ようやく書く気力が戻ってきたので物語を再開します。


待ってくれていた方、本当にありがとうございます。


(僕は何に参加しようかな?)

僕は水の上に立ちながら自分の参加すべき競技について悩んでいた。


遥は短距離のスカイレースに参加することが決まっているが、僕自身はまだ何も決められないでいた。


(今年はやはり重力魔法を使う競技に参加すべきかな?)

僕は2年生で先生達から注目を浴びやすい競技に参加することを考えていた。

魔法の評価を少しでも高くしてもらうには2年生で学んだ重力魔法を生かした競技に参加すべきであった。


(それなら・・・参加すべき競技は『スカイウォーカー』か、それとも『ウォーターフラッグ』か、もしくは『玉入れ』、『綱引き』か・・・)

僕は重力魔法を使う必要があり、かつ、集団で行われる競技について思い浮かべた。

重力魔法をメインで使う個人競技では他の生徒よりも魔力が弱い分、僕の方が不利であった。だが、集団競技であれば他の生徒の力を上手く利用しながら自分の力を充分に発揮することが可能になる。


「高見澤さん?」

僕が参加すべき種目について考えているとクラスメイトの『鈴木直美¨すずきなおみ¨』が話し掛けてきた。


「えっ・・・うわっ」

僕は不意打ちで声を掛けられて水の中へと沈んでいった。


「ごめんなさい。突然声を掛けてしまって・・・」

僕が水面に這い出すと直美は申し訳なさそうに頭を下げてプールサイドから手を差し出してきた。


「・・・いえ。ぼ・・・私の集中力が足りませんでした」

僕は気にしないように促すとプールサイドへとよじ登った。


「えっと・・・鈴木さんでしたっけ?」

「直美でいいですよ」

「直美さんですね。それじゃ、私のことは茜と呼んでください」

僕は微かに口許を緩めると直美に笑顔を浮かべた。


「それで・・・私に何か用ですか?」

僕は直美に話しかけられる覚えがなかったため、不思議そうに首を傾げた。


「はいっ、茜さんのお力を借りたくて・・・」

「私の力をですか?」

「そうです。茜さんには是非ともウォーターフラッグの指揮官になってもらいたいのです」

直美は両手に力を込めると期待した眼差しを向けてきた。


「・・・ウォーターフラッグですか?」

僕は丁度参加しようと考えていた競技に誘われて都合が良いと思った。


「でも・・・何で私が指揮官に?」

僕は自分が指揮官に選ばれた理由がわからなかった。


「それは・・・天城さんが夏海様に勝ってたのは・・・茜さんの指導のおかげなのでしょ?」

僕は遥と夏海先輩の勝負のおかげでクラスメイト達から一目置かれる存在となっていた。


「なるほど・・・」

僕は首を縦に振ると自分がウォーターフラッグの指揮官に選ばれたことについて納得した。


「それに・・・」

直美は神妙な面持ちを浮かべると話を続けた。


「去年の騎馬戦でも私達の高校が勝てたのは茜さんの作戦のおかげと聞いております。麗奈様がそう仰っていましたから」

「藤ノ宮さんが?」

まさかあの麗奈が僕のことを褒めるなんて思いもしなかったため、目を丸くさせた。


『あの騎馬戦の最後の作戦は高見澤さんの立てた作戦のおかげで相手の意表を突くことができました・・・』


「そうおっしゃられておりましたよ」

「そんな・・・」

僕は嬉しさのあまり顔を赤く染めた。人に褒められるとは何ともこそばゆいものであった。


「そんな茜さんだからこそ・・・お願いしたいのですっ!」

直美は改めて承諾を求めてきた。


「どうかよろしくお願いします」

直美は丁寧にお辞儀をした。


「・・・わかりました。お引き受けします」

僕は少しだけ考えた後に直美の申し出を受けることにした。正直、人に頼られるのは悪い気分ではなかった。

以前の僕ならば、二言で断っていたが、冬休みに遥達と過ごした教会での経験のおかげで人付き合いがそれほど苦手ではなくなっていた。


「それではよろしく頼みますね」

直美は嬉しそうに手を振ると一目散に教室の方へと戻っていった。


(ウォーターフラッグか・・・重力魔法を使いながら筋力を使う競技となれば僕にとっても好都合かな)

僕の個性が一番生かせそうな集団競技であった。

それに苦労して身に付けた『水渡り』も他の選手達にどれだけ通用するのか、試してみたかった。

僕は遥との特訓のおかげで10分以上、水面に立ていられるようになっていた。


(よしっ、絶対にうちの学校を勝たせてみせるぞっ)

僕は拳を強く握り締めると気合を漲らせた。そして、その日から水の上で新体操を踊るようにアクロバティックな動きを繰り返した。

ウォーターフラッグの基本は立ちはだかる人の波を如何にかわすかが重要なポイントであった。


(・・・僕達が対戦校に勝つためには)

夜になると僕は机の上で学校の人達を勝たせるための作戦を必死で考えた。


「相変わらず、頑張っているようね」

僕が考え事をしていると遥が話し掛けてきた。


「遥さんの方こそ調子はどうですか?」

僕は遥の方に視線を向けると彼女の近況について訊ねた。


「ぼちぼちってところね。基本的には茜と一緒にやった基本練習の繰り返しだから」

遥は自信満々な様子で余裕の笑みを浮かべた。まぁ、彼女の実力からすれば余裕なのだろう。


「だけど・・・麗奈の奴には何度勝負を挑んでも勝てないのよね」

遥は麗奈のことを思い出すと歯痒そうに口を顰めた。


「まぁ、藤ノ宮さんは遥さんと同じく特別ですから」

僕は不機嫌そうな顔をする遥を宥めた。

麗奈も遥と同様にX染色体を3つ持っており、かつ、遥よりもスカイレースの経験を多く積んでいる。その上、魔法を扱うセンスも抜群であったため、到底遥が敵う相手ではなかった。まさに完璧な存在である。


「茜はあたしよりも麗奈の肩を持つのね」

遥は表情を曇らせると不満そうに口を尖らせた。


「いえ、そういうわけではありませんが・・・」

僕は苦笑いを浮かべると遥の質問をはぐらかした。正直、僕も遥よりも麗奈の方が強いと思っていた。


「まぁいいわ・・・何時かあいつの高い鼻を明かしてやるんだから」

遥は鼻を鳴らすとベッドの上でうつ伏せになった。

彼女は自分よりも強い麗奈のことをライバル視していた。


(遥さんの諦めの悪さは大概だからな・・・。もしかしたら、何時の日か本当に麗奈さんに勝ってしまうかもしれないな)

僕は布団で横になる遥を見ながら密かな期待を寄せた。


(僕も負けないぞっ)

僕は机の上に意識を集中させるとウォーターフラッグの作戦について思考を張り巡らせた。


こうして僕達はそれぞれで練習を積み重ねながら2年目の魔道競技祭を迎えようとしていた・・・


「この作戦ならば・・・」

僕は魔道競技祭の2週間前になってようやく作戦が固まった。そして、直ぐに作戦の内容を紙にまとめるとそれをウォーターフラッグに参加する予定の生徒達へと配布した。


「なるほど・・・流石は茜さんですね」

直美は配布した資料を確認すると感心したように首を縦に振った。


「それほどでもありませんよ」

僕は照れ笑いを浮かべながら両手を左右に振った。


「この作戦ならば、きっと私達が優勝できますわ」

直美は僕の考え出した作戦に大きな信頼を寄せてくれた。


「そういうわけで・・・皆さん。これからこの作戦の練習をするために協力してください」

僕は作戦の概要を伝えると参加者のみんなに協力を求めた。

教室のあちらこちらから拍手が鳴り響いた。どうやら、参加者達は僕の考えた作戦に同意してくれているようであった。


「それじゃ、よろしくお願いします」

僕は教壇の前でみんなに頭を下げると感謝を示した。


こうして僕達はウォーターフラッグで優勝を得るために必死で呼吸を合わせた。僕の作戦には連帯感が絶対不可欠であった。


そして、魔道競技祭当日・・・


(今年もたくさんの人が集まっているんだな・・・)

僕はバスから国際競技嬢へと降り立つと心臓を高鳴らせた。


今年で2回目の参加なのだが、この高揚感や緊張感はどうにも止められなかった。


「いよいよね・・・」

遥は奥歯を噛み締めると軽く身体を震わせた。まるで武者震いをしているようであった。


(無理もないか・・・)

遥は短距離とはいえ魔道競技祭の花形であるスカイレースに参加するのである。

僕が参加するウォーターフラッグとは比べ物にならないほど多くの人達の期待に晒されているのだ。緊張するのも無理もない話であった。


「・・・大丈夫ですか?」

僕は震える遥の手を優しく握り締めた。


「・・・大丈夫よ。ちょっと気持ちが昂っているだけだから」

遥は口許を緩めると凛々しく微笑んだ。


「それよりも・・・茜の方こそ大丈夫なの?」

「僕ですか・・・」

僕は自らの胸に手を当てると心臓の音を辿った。


とくっ・・・とくっ・・・とくっ・・・

僕の心臓は優しく脈を打っていた。


「・・・大丈夫です」

僕は頬の筋肉を緩めると優しく微笑んだ。遥のことを考えている内に僕はすっかりと平常心を取り戻していた。


「今日はよろしくお願いしますね」

僕が遥と話をしていると直美が話し掛けてきた。


「直美さん、こちらこそよろしくお願いしますね」

僕は直美の方に振り返ると爽やかに微笑んだ。


「それでは後ほど・・・」

直美は挨拶を済ませるとそのまま他のクラスメイトの下へと歩いていった。


「今のは?」

遥は直美が立ち去ると話し掛けてきた。


「直美さんですか?」

「そうそう・・・」

遥は何やら複雑そうな表情を浮かべていた。


「彼女は今日、私が参加するウォーターフラッグの参加者の1人ですよ。彼女に誘われて僕もウォーターフラッグに参加することになりました」

「へぇ、茜も随分と顔が広くなったわね」

遥は感心したように驚きの声を上げた。


「それもこれも遥さんのおかげですよ」

遥は良い意味でも悪い意味でも目立つ存在であったため、僕もその影響を少なからず受けていた。


「あたし何かしたっけ?」

遥は惚けた表情を浮かべると首を傾げた。どうやら彼女自身には自覚症状がないようであった。


「色々と協力してもらっていますよ」

僕は無邪気な遥に微笑みながら八重歯を光らせた。


「相変わらず、仲が良いようね。お二人さん」

僕達が会話をしていると再び別の人物が話し掛けてきた。


「あなたは・・・高田さん」

僕達に話し掛けてきたのは『高田遊馬¨たかだゆま¨』であった。彼女とは去年の魔道競技祭で色々とあり、訳あって親しくなった人物である。


「何よっ!また、茜にちょっかいを出すつもり?」

遥は眉をひそませると怪訝そうな表情を浮かべた。


「そんなに警戒しなくても何もしやしないわよ」

遊馬は両手を開くとナンセンスとばかりに首を横に振った。


「それなら一体なの用なの?」

「別に・・・ただ顔を見に来ただけよ」

「顔を?」

遥は意外そうな表情を浮かべると口を半開きにさせた。


「そうよ。高見澤さんとは同じ出身の中学の仲だからね」

遊馬は片目を閉じて可愛らしくウィンクしてきた。


「挨拶ならもう済んだでしょ?さっさと自分の高校に戻りなさいよ」

遥は遊馬のウィンクを遮ると彼女の居るべき場所へ戻るように注意した。


「仕方がないな・・・もう少し話をしていたかったけど・・・それじゃ、またね、高見澤さん」

遊馬は遥に追い立てられてその場から退散していった。


「全くもう・・・」

遥は両手を軽く叩くと複雑そうな表情を浮かべていた。


「そろそろ開会式が始まりますね」

僕達は所定の位置に移動すると魔道競技祭の開幕を待った。

ちなみに今年の開催宣言を行うのは『南郷早百合¨なんごうさゆり¨』である。早百合さんは智早紀さんの妹で姉妹揃ってトリップルエックスの持ち主であった。


(今年こそは・・・絶対に勝つぞっ)

僕は拳を握り締めると気合を込めた。


結局、去年の魔道競技祭は接戦するも王城に優勝を持ち去られていた。今年も優勝されると王城に3連覇されてしまうため、うちの学校としては何としても連覇を阻止したいようであった。

学校の教師達も何時も以上にピリピリとした雰囲気を醸し出していた。

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