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最終話 昔のあたしと優


 これは今年の春にあった話で、優とダチになる前の話だ。

 この頃のあたしは、ただただ退屈していた。

 だから学校に来る意味も、正直言えばなんとなくだった。

 勉強はできる方だったから、暇つぶしの一つが勉強なだけ。


「あー、つまんね。なんかおもしれーもんはねーのかな?」


 なーんて思っても、誰もあたしに興味を持つやつはいなかった。

 そう、優が現れるまではな。


「ちょっとあなた、学校でゲームをしないこと!」


 そう言って話しかけてきたっけな。

 そこからだ。優に興味を持ったのは。


 適当に流して、そのときはスルーした。

 でもそれ以降、あたしは優に興味津々になり、あらゆる情報を調べ尽くした。

 だから、とりあえず他人に聞いた。聞いて聞いて聞きまくった。


 その結果、勉強オタクと言っていいほどの勉強バカだということを知った。

 朝一番に来て、黒板を綺麗にしたり、いろんなことをしてることも知った。


「あいつ、マジの優等生じゃねーか……」


 そう思うと同時に、趣味の話をまったく聞かないので、あたしは居残りするようになった。

 そう、あいつに会うためにな。


 すると、本当に放課後に居残りしているようだった。

 宿題のあとは毎日予習や復習ばかり。

 あいつ、人生楽しいのか?

 そう思ってしまうほど、優は勉強に夢中だった。

 いや、勉強に夢中に見えたんだ……。


 それからある日、あたしは話しかけられる。

 くだらねー話だけど、このとき話しかけられて、すっげーうれしかった。

 でもよ、ゲームばっかりしてるやつが、コミュ力高いわけねーだろ?

 だけど、頑張って言葉を振り絞って、なんとかあたしの家に誘った。

 でも、そのあと普通に断られたから、逃げるように帰ったよ。

 ま、突然だったから、当然っちゃ当然か。


 そしてある日、あたしは学校にゲームのコントローラーを持ってきた。

 もちろん、優のやつに見せつけるためだ。

 『あいつにも、ゲームをさせてやりてーな』って、心の底から思ったから。


 だがあいつは、コントローラーをぶち壊しやがった。


 内心、少しイラッとした。ゲーム機を粗末に扱うやつは嫌いだからな。

 でもそのとき、優自身の……なんつーか、尊厳とか正しさとかが崩れる音がした。

 周りからの扱いが変わり、優を見る目も一瞬で変わった気がした。

 それが不憫というか可哀想で、あたしは言ってやった。


「あたしとダチになれ」


 ――ってな。


 それからは、退屈な日常が、楽しい日常に変わった。

 優が初めて昼休みに膝に乗ってきたときは、バカをやってるみてーで楽しかったな!

 そのあと、勢いで「絶交だ!」って言ったけど、優は『それがどうした』と言わんばかりにあたしと仲直りした。

 いや、あたしが『させられた』と言うべきか?

 なんにせよ、喧嘩しても、バカやってもいいダチってのは、いいなと思った。


 そんな日常を過ごしていると、いつもと同じく放課後がやってくる。

 この日は文句を言ってやったっけ。

 

「はい、宿題終わり!」

「おっ、終わったか? あたしの方ももうすぐ終わる」


 といっても、ゲームのことだけど。

 そしてあたし自身、優に唯一ムカついていたことがあったので、それを注意してやった。

 それは……口調だ。

 優のいつもの優等生口調が、あたしは嫌いだった。

 なんつーか、壁を作られてるみてーだったから。

 だからあたしはそれを注意した。


 それ以来、優は別人のようになった。

 あたしの前では普段の優等生から、あたふたしたり、天然だったり、バカみたいなことをしたり……

 なんつーか、自由なやつになったんだ。

 そうなった優を見るのが、あたしは大好きだ。

 ……だなんて、本人に直接は言えねーけどな。恥ずいし。


 優とはずっと一緒にいてぇけど、多分無理だ。

 優は一人でも輝ける。でもあたしは優がいねーと、多分ダメになる。

 だからこそ言う。優には幸せになってほしい。

 そこにあたしなんていてもいなくてもいい。幸せになってくれ。

 

 あたしはいつも、そう思ってる。


 ◆◇◆◇◆



 目が覚めると、辺り一面がオレンジ色だった。


「――ん? 柄にもなく、授業中に寝ちまったのか?」

「おはよう、宙ちゃん!」

「いや、いま夕方だろ。帰らなかったのかよ」


 机の下から顔を出す優。

 そんな姿の優に、つい顔が綻んでしまう。


「ふっ……」

「どうかした?」

「いや、かわい……可愛げねーなってな! 前にコントローラー壊されたの、夢で見てイラっとした!」

「でもさ! あのときわたしはコントローラーを壊しちゃったけど、もし時を巻き戻せても、同じことをすると思う!」

「いや、絶対に巻き戻さないでくれ。せっかく進めたゲームのデータを、最初からやりたくねーから」

「ふふっ……宙ちゃんらしいね!」

「でもま、記憶を引き継がねーんならどっちでもいいけどな」

「うん! アレがあったから、親友になれたんだもんね」

「おう、そうだな」


 ま、アレがなくても、どうにかして友達になろうとしただろうけどな。


「まあ、そんなことはどうだっていいかな。おめーが幸せなら、あたしはいなくても……」

「なら、二人で幸せになろうよ! わたしも頑張るから!」

「お、おう。どうした? 急に……」

「だって、宙ちゃんが寝言で、『優、幸せになってくれ~』って言ってたから!」

「そそ、そんな恥ずいこと言ったのか!? でもおめーは嘘つかねーし、本当なんだな?」

「うん……! わたし、すごくイヤな気分になった」

「は? なんでだよ?」

「自分のことを考えない人は幸せになれないけど、幸せになってほしいと思われていないわけじゃないから」

「うーん……だな! すまん。ただあたしは、優が幸せならそれでいいかなーって」

「なら、わたしは宙ちゃんにも、幸せになってほしい!」

「『にも』か。優らしいな……」

「じゃあ、帰ろう? それで、久しぶりにわたしもゲームしたい!」

「二人羽織でやるやつか? あれ疲れるんだよな……」

「わたしは楽しいけどね」

「それが疲れるんだよ!」


 そんなことを話し合いつつ、いつもどおり帰るあたしたちだった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

『百合ではなくて、友情です!』は、これにて完結です!

最初は完全に息抜きのつもりで書きました。

でも、次第に書くのが楽しくなり、気づけば10話まで続きました。

個人的には、優と宙の日常をうまく描けたと思います!


最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

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