プロローグ
ソレは縋った。
ー過去の記憶に。
ソレは思い出した。
ーあの小説の魔法世界を。
ソレは思った。
ー自由になりたいと。
ソレは考えた。
ー力が要ると。
ソレは願った。
ー思うがままになれと。
ソレは命じた。
ー世界よ我が願いを叶えよ、と。
世界は応えた。
まず、ソレが持つ力が小説を元に、「魔法」として再定義された。
次に、その「魔法」で世界は魔法世界へと再構築された。
今度は、生物たちが魔法世界へ適応するように姿形を変えた。
最後に、人々は超人的な力を手にした。
ソレは、自由になった。
苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。
もう、足が上がらない。
疲れた。
立ち止まってしまいたい。
でも、死にたくない。
気がついたときには、既に周りは赤が揺めき、朱があちこちに飛び散っていた。
誰かの帰るべき場所は見るも無惨に崩れ、なにも残らずに沈黙している。
雲一つ無い澄んだ青に向かって、灰色の柱が何本も立ち上っている。
人々の泣き叫ぶ声に混じって、巨大なナニかの咆哮が平和だった街に響き渡る。
その中を必死に走る。
死にたくない、と。
生きたい、と。
自分が何者なのか、ここが何処なのか、自分が何処から来たのか、なぜ走り続けていたのか。
何も分からず、ひたすらに走っていた。
地獄の中を、ひたすらに走っていた。
足を前に出す。その先に、何が在るのかも分からず。
走って。
走って。
走って。
走って。
走って。
走って。
走って。
走って。
走って。
走って。
走って。
走っ
大きな黒い塊が建物を突き破って、吠えた。
気がつくと、瓦礫の中だった。
ぼやける視界の中、大きな黒いモノが、一歩、また一歩と、近づいてくる。
その時に湧いた感情は、絶望でも、後悔でも、恐怖でもなかった。
ただ、ただ、''生きたい''と、それだけを願った。
「だれか、助けて...。」
目の前のモノが大きく腕を振りかぶった。
どこかで、何かが破裂する音と、鋭く空気を裂く音がした。
いつまで経っても、衝撃が来ない。
もう死んでしまったのかと固く瞑った目を、ゆっくりと開ける。
目の前には、''天使''と地に向かって倒れ込む獣がいた。
''天使''はその綺麗な銀色の髪をたなびかせ、銃を片手に落ちてきた。
灰色のその目は獣を鋭く捕らえて離さない。
薄紅色の小さな唇からは、フゥーっと、小さく息を吐いている。
小柄な体躯ながら、力強さを感じる背中に守られ、目覚めたときから常に張っていた気が一気に緩んで...
-◇-
どうしたものか...
目の前で泣きじゃくる少女を見ながら、ため息をつく。
まったく、気絶したと思ったら、起きて泣き出して、忙しいやつだ。
「キミ、名前は?」
少女に問いかける。
「わからない。」
記憶喪失らしい。
「親は?」
「わからない。」
「ここが何処か分かる?」
「わからない。」
「今が何年か分かる?」
「2028年。」
今は、2033年。
2028年はもう、5年前だ。
うーん。
どうやらこの娘は、ある日付からの記憶と、自分に関する記憶を失ってしまっているらしい。
しかし、困った。
私はそんなに人付き合いが得意ではない。
ましてや、初対面の泣いている少女を相手するなどもっての外だ。
もう一度、少女を視る。
だけどこれは、放置しておいてはまた襲われるな...
かといって、自警団に任せるのも難しいだろう。
彼らはあくまで自警のための組織。
全てが不明の少女は引き取る余裕など無いはずだ。
善性だけでは、この世界は生き抜けない。
ここは、私たちが引き取るしかない。
ここで見捨てたら、アイツが怒るだろうからな...
しょうがない。同居人が1人増えたところで、何も変わりわしないだろう。
「娘、お前は私たちが引き取る。安心しろ、この世界を一人でも生きていけるように、ちゃんと教えてやる。」
少女は少し驚いた表情をした後、口を開いた。
「ありがとうございます、天使様。」
感謝されるのも悪くはない。だが、
「私は天使なんていう、高貴な存在じゃない。ちゃんと名前を持ったニンゲンだ。」
「私は、白狩。」
「白狩紫苑。」
「この終末世界最強の狩人だ。」
どうも皆さん初めまして。bea-ya 、という者です。ベアーヤと、読ませます。
小説を書くのは初めての経験なので、ぜひ間違いや改善点などありましたら、教えてください。
では、今後ともよろしくお願いします。




