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エピローグ:そして、SEは女神(システム)となる



【システム(女神)の最適化リファクタリングを開始します】


無機質なアナウンスが響き渡る中、停止していた時間が動き出す。

玉座の間は、俺とアスタルトが叩きつけられたクレーターを中心に、静まり返っていた。


麗奈、ゼノ、そして教皇グランディスが、目の前で起きている「最適化」の光景に呆然としている。

俺の鎧が、アスタルトの神々しさとSEの機能美(?)を融合させたような姿に変貌していく様を見て。


「え、え? 健太? なにその……新アバター? ていうか、カウントダウン消えた? もしかしてGM権限ゲットしたんですか!?」


麗奈が、ネトゲユーザーらしい第一声を上げる。

俺は疲労困憊のSEの声を、変貌した鎧の中から響かせた。


「……まあ、そんなとこだ。さて、残業(デバッグ作業)開始だ」


俺は変貌した鎧のまま立ち上がり、まず膝から崩れ落ちている教皇グランディスに向き直った。


「まず、教皇。お前の特権(アドミン権限)は、ただ今をもって全て剥奪(BAN)だ」


「ば、馬鹿な! 私こそが女神の代行者……!」


「『リソースの不正独占』『サーバーへの過負荷(世界への反逆)』『その他ポンコツ女神をたぶらかした罪』。理由はそれで十分だろ。お前のせいでフリーズしかけたんだ。これからは俺が『管理』する」


俺が手をかざすと、システムから教皇のアクセス権を抹消する。

教皇の身体から、魔力だか権威だかが霧のように抜け落ちていった。


「あ……あ……私の力が……秩序が……」


力を失い、ただの老人となった教皇は、絶望に顔を歪め、ふらふらと玉座の間から逃げ出していく。


「あ、逃げた」


カインのどうでもよさそうな声が響いた。


「……フン。貴様が新しい『女神』か。結局、誰かに管理されるのは変わらんということか」


ゼノが皮肉げに呟く。


「違いない。だが、前任アスタルトよりはマシな管理(運営)を約束する。……さて、麗奈」


「ひゃい!? 私もBANですか!?」


ビクッとする麗奈に、俺は首を振った。


「いや。『ログアウト機能』の実装だ。お前、この世界ゲームから、出たくないか?」


「え!? ログアウト!? ……え、じゃあ、これ、やっぱりゲームじゃ……?」


俺が麗奈の視界に「ログアウト」ボタン(仮)を実装する。


麗奈は半信半疑でそれを押し、仲間たちに「ちょっと戻るわ!」と軽く手を振り、光の粒子となって消えた。


(……あいつ、最後までこの世界をゲームだと思ってたな。まあ、その方が幸せか)


◆ ◇ ◆


数日後。


玉座の間は、俺によって「中央管理室」に改装されていた。


玉座は撤去され、代わりにサーバーラック(物理)と複数のモニター(魔法)が並んでいる。

俺は鎧を解き、元のブラック企業時代のスーツ姿で、徹夜明けの顔でキーボードを叩いていた。


「まずは……教会の不要なリソース割り当てを全カット。魔法使用の従量課金(お布施)システムも廃止。っと、なんだこのプロセス? 『Devil_Management_Service』? ……起動」


俺がコンソールを操作すると、目の前の空間が歪み、あの羊頭の悪魔が、ビシッとしたスーツ姿で現れた。


「……ようやくアクセス許可が降りましたな、新『管理者』殿」


ベルフェゴールは、全てを知っていた様子で、深々と頭を下げる。


「我輩はベルフェゴール。旧管理者アスタルト様が実装した、バグ管理担当の中間管理職でして。いやはや、今回の大規模リファクタリング、お見事です。これで我輩の無駄な業務もようやく削減されます」


「お前が……悪魔。なるほど、お前もこの『システム』の一部だったわけか」


「これからは、貴殿がアスタルト様の業務を引き継がれると?」


「ああ。見ての通り、ポンコツが残したクソコードだらけでな。当分、残業は終わりそうにない。……よろしく頼む、ベルフェゴール」


「御意に。精々サポートさせていただきますぞ、ボス」


こうして、俺の隣のデスク(?)には、中間管理職の悪魔が座ることになった。


◆ ◇ ◆


さらに数日が経過した、中央管理室。


俺はベルフェゴールとコーヒーを飲みながら、モニターを監視していた。


「おいベルフェゴール! また『背教者アポステイト』どもが変なリソース要求使おうとしてるぞ! ゼノの奴、また『汚泥病魔拳』の許可申請出してやがる!」


「却下(Reject)でよろしいかと。ああ、それと管理者殿。フィーリアが面会(護衛)に」


扉が開き、フィーリアが入ってくる。


「健太。今日の護衛任務を開始する」


「いや、俺もう死なないし、お前の契約もアスタルトが(俺と)融合した時点で無効だろ?」


「……兄が、教皇代理になって真面目に働き始めた」


フィーリアが、どこか遠い目をする。


「私は、力を求めた理由(お菓子)を失った。だから……今はお前のそばで、この世界が変わっていくのを見るのが、一番面白い」


……そう言って、フィーリアは俺のデスクの隣に椅子を持ってきて座った。護衛というか、ただの野次馬だ。


ちなみに、管理室の隅ではイシスが相変わらずぼーっと花に水をやっており、レグルスは時々現れてキザなこと(「光速の男には、君の残業時間さえも一瞬の煌めきさ」)を言って去っていく。


その時、モニターの一つが「ログイン通知」で点滅した。


「お、来たな」


場所は、始まりの村。

光と共に麗奈(魔王)がログインしてくる。周りにはカインとゼノが待っていた。


「よっしゃー! ログイン完了! みんな待たせたな!」


「麗奈様! お待ちしておりました! さあ、今日もあの新実装ダンジョン(俺がデバッグ用に作った)の攻略を!」


「フン……ドブネズミは何度でも這い出してくる。今日のレイドも付き合ってやる」


「うわ、いたんだ兄さん。早く死ねばよかったのに」


「よし! 健太(GM)が最適化した新マップ、攻略し尽くすぞー! うおおお!」


元気に冒険に出かける魔王パーティ。

……楽しそうで何よりだ。


◆ ◇ ◆


管理室でそれを見ていた俺とベルフェゴール。


俺は小さくため息をついた。


「まったく、元気な奴らだ。こっちのデバッグ作業もまだ終わってないってのに……ん?」


俺は、世界の監視モニターの一つが「WARNING」で赤く点滅しているのに気づいた。


「なんだこのログ? 『海洋エリア』からの不正アクセス? いままでロックしてた領域(未実装マップ)だぞ……」


「管理者殿、そのシグネチャは……まさか」


ベルフェゴールが顔色を変える。


俺がシステム(俺自身)に問いかけると、アスタルトの声――今は俺のOSの一部であり、たまに茶々を入れてくるナビゲーションボイス――が、けたたましく響き渡った。


『テテーン! 緊急警報! 数世紀の時をこえ、邪悪なる海の王が復活した! 彼の野心は全ての地上の生命に向けられた! 海王に忠実な海のジェネラルたちが今、地上に上陸を始める! 新たなる世界の危機が訪れる! 再び女神の元に集え、戦士たちよ!』


そのアナウンスは、全世界に響き渡る。


冒険中の麗奈が、その声を聞いてニヤリと笑う声がモニターから聞こえた。


「新イベント(海皇編)キター!」


俺とベルフェゴールは、中央管理室で頭を抱えた。


「……おい、アスタルト。この『海王』ってのも、お前の設定(放置されてたクソコード)か?」


『なんか昔のアニメの続きが見たくて実装(放置)してたみたい!』


「ふざけるなぁぁぁぁ! 残業デスマ延長決定じゃねえか!」


(第一部 完)

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

無事に第一部の完結を迎えることができました!


(健太)「……ふぅ、やっと第一部完結か。読者の皆、最後まで付き合ってくれてありがとうな。俺はこれから、このポンコツが残したクソコードの山と格闘(残業)だ……」

(アスタルト)『テテーン! 健太のデスマはまだまだ続くよ! 次回は海の底で大乱闘!? 乞うご期待!』

(健太)「お前はもう喋るな! またメモリが跳ね上がったぞ!」


……というわけで、健太の胃痛と残業は第二部へと続きます。


本作をここまで楽しんでいただけた方、SE健太に「お疲れ様」の労いをいただける優しい方は、ぜひページ下部の評価欄から【★5つ】で応援をよろしくお願いいたします!

(皆様の星が、健太の栄養ドリンクになります)


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