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第23話 万黒迫乱

 神殿庭園の広場は黒樹女王によって生み落とされた黒い玉から

次々と生まれる体長2メートル超えの黒き樹人兵で溢れていた。

その軍勢を満足そうに聖霊使徒ヴィオラエールは眺めている。

それに対し距離を取り敵を伺うエイミーとロイドであった。


「カハハハハ、暴虐の時間の始まりです。黒樹兵(ブルータリアン)よ蹂躙せよ」


樹陣突撃(ジュタクティクアタック)


聖霊使徒の号令で黒き軍勢が動き出す。


「あの黒いの全部樹人兵みたいだけど、黒樹兵?樹人兵よりデカい・・・

 だから何って話だけどね。行くわよロイド」


「お嬢様腕が鳴りますな、サイコブレードを試すに丁度良い相手」


『ドドダダー』と迫る黒樹兵の大軍に対しゆっくりとロイドは細剣を構える。

敵は手足を使い猿のような走りで飛び掛って来た。


「まずはご挨拶代わり、執事流念動細剣術『念理剣・覇濤』」


『ズバーーーーーン』とロイドの横薙ぎの一閃がサイコブレードより

放たれるとそれは波濤の様な念動波を生み出して数百の敵を呑み込み

散り散りに吹き飛ばした。一方エイミーの方にも殺到する黒樹兵たち。

腕を棍棒の様に変形させて殴り掛かって来る。


「はぁーっ、『鎌風拳』、『鎌風脚』!」


 棍棒の暴打で襲い来る敵を渦巻く風の刃で次々と倒していくエイミーだった。

己が繰り出す黒樹兵の軍勢が倒されているにも関わらず『ニヤリ』と笑みを

浮かべながら聖霊使徒は戦いを眺めていた。


「流石はSランクといったところですか。フフフフフいずれ気付くでしょう。

万黒迫乱(ブラックインベイジョン)』の恐ろしさに。では次の一手と参りましょう」


樹陣杭打兵牢攻(ジュタクティクジェイルドパイルドライバー)


 聖霊使徒の号令により動きが変わる黒き軍勢。エイミー達に攻撃を

仕掛ける部隊と囲う様に展開する部隊とに分かれ囲いが完成すると

一斉に攻撃を仕掛けて来た。


「敵の動きが変わった。倒しても倒しても湧いて来る、どれだけいるのよ。

 風舞『鎌威断(カマイタチ)』」


激しさを増す敵の数の暴力を渦巻く風の刃で斬り飛ばしていくエイミー。


「何を企んでいるのやら・・・楽しみですな」


 ロイドの方でも敵は数の力で包囲網を築き上げていた。

倒しても倒しても囲みを狭め圧力を増す敵の後方で黒樹兵達が

互いに絡まり合い樹の壁を作り出すとそれが一気に二人を覆い閉じ込める

樹の牢獄を作り上げた。


「閉じ込められた・・・」


 そして樹の牢獄を囲む黒樹兵達は両腕を杭に変形させ

それをエイミー達を閉じ込めた牢獄に一斉に打ち込んだ。l


「これは・・・吹き飛べ『覇天衝』!」


 縦に構えた細剣の青い刀身が一瞬煌めくとロイドに後少しという所まで

迫っていた杭と一緒に樹の牢獄までもがサイコブレードから放たれた

念動爆裂により粉々に吹き飛んだのだった。『ドゴーーーン』という

衝撃音と共にバラバラになって吹き飛ぶ黒樹兵達、ロイドの周りには

ポッカリと何も存在しない空間が広がっていた。


「こんな杭視えてる私には意味ないし、これで閉じ込めたつもり!

『風道刃路刃渡り』」


迫る杭を避ける様に上方へと風の刃と化し牢獄を切り裂いて逃げたエイミー。


「敵に囲まれるのも面倒ね。それなら風老八仙扇変万化ーっ!

 我が拳は林を吹き抜ける風なり第三仙『風影隠老』。風の如く忍び

 敵を絶つ『風影拳』」


 エイミーが『風影隠老』となり『風影拳』を使うと姿が風に溶けた様に消える。

黒樹兵達は突如としてエイミーの姿が消えた事で足を止め周りを見渡していた。

敵を見失った軍勢の中で突然混乱が始まる。軍の至る所で黒樹兵が次々と

倒されている。存在が薄くなったエイミーが風の様に忍び寄り敵を始末していた。

『風影拳』とは風に身を隠し吹き流れる様な歩法で敵の死角から攻撃する

拳技であった。


「ヤーッ、トーッ、ハッ!いいわこの風の様に流れる感じ」


 声はすれども姿は見えず、気が付けば倒され、そこには誰もいない。

本来は声を出さずに忍ものだがそんな事御構い無しに敵を倒していく。

エイミーがロマン溢れる拳法に満足しているとロイドもサイコブレードで

敵を薙ぎ払い闘いを楽しんでいた。


「どうした?黒樹兵どもこんなものか。『破濤』!」


 大技の後は中技の『破濤』を繰り出し敵数10体を纏めて薙飛ばすロイド。

しかし、黒樹兵は次々と襲ってくる。正に終わらぬ戦いであった。


「フフフフフッ、順調ですね。より圧力を強める事にしましょう」


樹陣黒樹将攻(ジュタクティクジェネラルアタック)


 黒樹兵が倒され続けているにも関わらず余裕の笑みを崩さず

聖霊使徒は次の号令を発するのだった。


 エイミーとロイドが黒樹兵を倒していると敵軍の後方より新たな敵が現れた。

体長5メートル程の巨体を揺らしながら黒樹兵の間を抜けて来る五体の黒樹将。


『ドシンッ、ドシンッ、ドシンッ、グルォーアーーッ!』


「新手の敵?デカイの出て来たね。でも敵が尽きない・・・それなら」


「今度は楽しめそうな敵だといいのですが」


風に隠れているエイミーの所為で五体の黒樹将はロイドへと集まって来た。


『ロイドそいつら任せるね。私は黒樹女王倒しに行ってくる。いくら倒しても

 キリがないから元から断つ』


『お嬢様、こちらは安心してお任せ下され』


 エイミーは念話でロイドに指示を出し風の様に敵軍の中を吹き抜けると

黒樹女王の前に躍り出た。眼前に立つ女王は次々と黒い玉を生み落とし黒樹兵を

生み出していた。


「無限?・・・これじゃいくら倒しても終わらないはずだよ。

 竜巻けん・・ワオっ、危なー」


「させるか!『種子散弾(シードブラスター)』」


 エイミーが技を放とうとした瞬間それに気付いた聖霊使徒が日輪の様な

枝葉から種子弾を雨霰の如く打ち出し邪魔をしてくる。

それを技を中断して躱したエイミーだった。


「黒樹女王を狙って来るとは・・・気付いたか。『種子散弾(シードブラスター)

 さらに、聖霊スキル『樹球長征(ジュローリンクラッシュ)』」


 聖霊使徒は種子弾のブラスターを放つと蛸足の様な根から二つ樹球を生みだす。

直径5メートルはありそうな樹球がエイミーに襲い掛かる。味方の黒樹兵も

巻き込んで『ゴロゴロ』と猛烈なスピードで転がり迫って来たのだ。

そして、それに合わせる様に種子弾で逃げ場を塞いで来る。


「私ピンチ!?『風影拳』」


 鎌風拳の技を放つ為に解いた風影拳に移り風の様に敵の攻撃を

吹き抜けるエイミー。


「また姿が掻き消えた・・・面妖な技を」


「厄介ね、それなら。我が身は転現自在にして捉える事能わず

 第四仙『風転虎老』」


『風転虎老』と化し突如姿を現したエイミーに黒樹兵が殺到する。


「姿見せればもうっ、『風爪』、『風牙』」


 襲い掛かる黒樹兵を手に纏う風の気で出来た風の爪で斬り裂き、風の気で

虎の口を形作り風の牙で食い破り倒しているとそれに気付いた聖霊使徒が

散弾攻撃を浴びせてくる。


『風転身』


 風流れる先へと瞬間移動して躱すエイミー。神扇バールから自在に流れ出る

風の先へ転移する『風転虎老』の奥義であった。自らの攻撃を転移によって

躱された事に驚きを隠せぬ聖霊使徒であったがエイミー目掛けて樹球を

ぶつけてくる。


「さあ転移するがいい。フフフッ、当たりが出るか外れを引くか

 我が運を試すとしましょう」


聖霊使徒はエイミーが転移した瞬間に無差別種子弾掃射を狙っていたのだ。


『風転掌』


 左右からタイミングをずらしエイミーを押し潰そうと迫る樹球に

エイミーが両手の平を向けると樹球が掌に触れた瞬間に消えてなくなる。


『ドゴォーーーン』と消えた二つの樹球が突然現れ聖霊使徒に直撃した。


「ぐぉーーっつつ・・・何が起きた?」


『風転掌』とは触れたものを風吹く先へ転移させる奥義であった。

そして、ダメージを負い何が起きたのか分からず混乱する聖霊使徒。


「よーし決まった。やっと入ったよ。追撃チャンス!」


 一方、その頃ロイドは周りを樹氷に囲まれて黒樹将と闘っていた。

実はマーラが遂に戦闘に参加し氷の縛鎖で黒樹兵達を樹氷に変えたのだった。

敵の樹砲の集中攻撃がロイドを襲う。


「ロイド頑張るのー」


「『念動障壁』!マーラ嬢の声援、力に変えるとしましょう」


 執事は樹砲による種子弾攻撃をサイコバリアで防ぐが黒樹将達は樹剣、

樹鞭、樹砲、種殻の盾などを持つ何本もの腕を使い攻撃してくる。

ロイドは飛んでくる樹鞭や種子弾を中技の『破天衝』の小爆裂を

タイミングよく合わせて防ぎ攻撃への展開を速くする。それに対し

黒樹将はロイドの強力な攻撃を何本もの種殻の盾を犠牲にし次々と盾を

新たに繰り出す事で防いでいた。


「楽しい黒樹将との戦いもこれで終わりと致しましょう。『覇天引』!」


 ロイドが縦に構えたサイコブレードから放たれる全てを引き寄せる念動力が

抗う黒樹将達を無慈悲に引き寄せそれに樹氷も巻き込まれる。


「『念動障壁』を敵後方に展開、これで終わりだ『覇天衝』・『覇滅閃』!」


 強力な念動力により自由を奪われた黒樹将の背後に本来なら防御に使う

念動障壁を敵の逃げ場を塞ぐ様に展開し、そこへ念動爆裂波が襲う。

そして、障壁に叩き付けられ逃げ場のない爆裂の嵐に揉まれた黒樹将達が

盾を失い大ダメージを負ったタイミングに合わせ放たれたロイドの不可視の力を

帯びた一閃が敵を塵と変えたのだった。

粉々に砕けた樹氷を前に執事はエイミーへと目を向ける。


「追い討ちのーっ『風転爪』、『風転牙』!」


「グフゥオーーッ・・・なんだ今のは?」


 聖霊使徒は突然切り裂かれ、食い破られた事に動揺していた。

これは『風爪』、『風牙』を風の先へと転移させる技であった。


「このままではマズい。黒樹女王よ『種殻操舵(シードピット)』」


 エイミーの次の攻撃を邪魔する様に女王の手が振り下ろされる。

その腕に掴まる様に絡み付く聖霊使徒を胸まで持ち上げると

女王の胸から種子の様な物が現れ『パカリ』と上部が蓋の様に開く。

そして、そこへ乗り込む聖霊使徒だった。


種殻格納(シードイン)


 聖霊使徒が搭乗する種殻が黒樹女王の胸部に納まると女王の胸に

日輪とその中心にヴィオラエールの顔の刻まれたレリーフが浮かび上がる。

そして、顔のレリーフが口を動かし話し出す。


「ここまで追い込まれるとは予想外。黒樹女王と一体となった我が力で

 今度こそゴミ虫を始末する」


樹陣樹巣(ジュタクティクジュノス)


樹蜿掌蛇(ジュネイクハンズ)


 聖霊使徒が唱えると女王から黒い玉が四方八方へバラバラに飛び散り

落ちた玉から全長20メートル程の巨樹が生まれる。残った黒樹兵達も

姿を巨樹へと変化させる。エイミー達の周りは突如として巨樹の森へと

生まれ変わった。これが『樹巣』であった。


「うそっ、森が出来た」


「フフッ、中々の大演出でございますな」


 突然現れた森に驚くエイミーと楽しむロイド。森が誕生すると

エイミー達を取り囲んだ巨樹が変化を始める。『ウネウネ』と

蛇の様に蠢き幹の先は掌へと変化してエイミー達に襲い掛かって来た。


「フハハハハッ、我が掌で哀れに舞い踊るがいい」


 無数の樹掌が蠢く森に囲まれたエイミーとロイド、マーラ。

森が騒めく中、黒樹女王との戦いはヤマ場を迎えようとしていた。

黒樹女王の繰り出す数多の兵を倒したエイミーとロイド、マーラ。

女王との戦いは終盤戦へ向かいます。

次回は「ロマンvs浪漫」です。

読んで頂いた方ありがとうございました。

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