第19話 とある場所で
お待たせしました。
ここはサハール川上流にあるとある場所。周囲を密林に囲まれた中に
開けた場所があり、そこにはピラミッドが2基存在し大きな格納庫まであり
その前に大きな舗装された広場があった。そこへ円盤状の飛行物体が舞い降り
静かに着陸した。ピラミッドの中から出て来た出迎えの者達が見守る中
飛行物体から降りて来るプラチナの衣装に身を包んだ謎の一団。
「出迎えご苦労、短い視察だ形式張った挨拶は不要に願う」
「ようこそお越し下さいました至主徒様」
挨拶を終えた出迎えの者達と一団はピラミッドの中へと入って行った。
そして、ピラミッド内のとある広い部屋に案内された至主徒は大きな円卓の
上座にある椅子に腰掛けると状況報告会の開始を合図した。
「まず作戦の第一段階であったメロア侵攻作戦は失敗に終わりました。
投入した魔導ゴーレムは全滅。派遣された使徒メッターリエール様は
聖霊アメータル様と共に戦死した模様。その場にいた兵士からの報告によれば
Sランク冒険者との戦闘になり討たれたとの事。尚、メロアの西方の砂漠にて
大規模な戦闘があった模様。詳細について現在確認中であります」
「次に「待て」・・・」
次へといこうとした報告を止める至主徒だった。
「魔導ゴーレム『ドグゥーラ』が全滅?信じられん数百は投入したはず・・・
使徒と聖霊が討たれた?Sランク冒険者がいた?メロアには侵攻直前に
金持ち共に情報を流し高ランク冒険者が護衛に付いて街から出るように
仕向けたはずだが。そもそもあの街にSランク冒険者が居るという情報は
なかった筈、一体どうなっている」
「それが情報不足の為に皆目分かりませんが上がって来た情報には2名の
冒険者によってなされたらしいとの事」
「2名の冒険者か、素性は分からぬのだな」
「はい残念ながら・・・」
至主徒の静かなる怒りの威圧が場を支配した。
緊張に包まれる会議室、報告者の額には汗が浮かんでいた。
「それで今作戦の失敗の影響は?」
「はっ、はい・・・当初予定したメロア制圧による上ギュークス地域の確保は
困難になり計画の遅れは不可避かと。また連動して動いていたファイでの
作戦にも影響が出ております・・・」
「これではファイでの作戦が宙に浮いてしまうな。全体の再構成が必要か。
樹人兵の育成計画は継続しスタンピードなどの下ギュークス南部地域の
混乱化作戦はメロア再侵攻の準備が整うまで延期とする」
「了解しました」
この様な会議がサハール川上流のとある場所で行われていたのだった。
そんな事など露ほども知らぬエイミーとロイドは敵の計画等お構い無しに
地下水路迷宮を攻略していた。すでに最初のフロアと似た構造の2番目の
マーマンフロアをマーラの活躍で素早く攻略を終えた三人は次のフロアへと
続く地下水路を進んでいた。
「サハギンのフロアと同じで数だけは異常だったね。やはり変だよ。
殲滅出来たんで良かったけど。マーラのお陰でフロアボスのキングは
楽に攻略出来たよ」
『マーラ、お姉ちゃまのためにガンバったのー』
「うん、次のフロアも頼んだよマーラ」
「ですな、しかし迷宮のタダならぬ雰囲気は要注意ですぞ」
そんな会話をしながら三人が進んで行くと次のフロアが見えてきた。
『ザザーーッドブォボォボォブォーンザザーーッ』と目の前で大量の水が
流れ落ちている。
「滝?の裏側に出たね」
『凄いのー』
楽しそうに跳ねるマーラの前に地下水路から続く半円形の大きな窪みがあり、
そこへ滝の水が飛沫をあげ流れ落ちている。滝の裏側から続く通路を右へと
進み表へ出ると滝の全体が明らかになった。
「おー、天井から落ちて来てる!その100メートルくらい先また滝?」
三人の目の前にはドーム状の高い天井から降り注ぐ大量の水が滝となり
それが幅50メートルの水路へと流れ落ちて下り、その先100メートルくらいから
また滝となって流れ落ちる光景があった。
「先へ進むにはあの滝を下る?リッカ開扇『探リート』」
エイミーが糸を水の中や滝の先へと送り出したその時、大量の水が天より
流れ込み三人を滝へと押し流した。
「えー!何これ・・・あわわわ・・チェンジ水装セーラー服」
『わーい、流れるのー』
「ぐぁはっ、これは手荒い歓迎ですな・・・水中モードへ移行」
水中へと呑み込まれた三人は滝を下り落ち滝壺へと流されたのだった。
エイミーとロイドはそれぞれ水中装備へと変身し念動により態勢を整えると
念動水中航行で移動し周りに見える影を警戒する。水の流れは早く三人は
流され続けていた。
『風は守護の陣、カゼハアナタノミカタなのー』
『マーラありがと・・・何か来るわよ、リッカ開扇「網ミート」』
『舞刀両断「水中舞刀会」』
マーラの魔法陣が二人に素早さの大幅上昇をもたらし水中での自由度を上げる。
エイミーが素早く張り巡らせた網に次々と捕らえられる魚型モンスター。
水に流される三人にまた迫る影。
『念刀両断、塵となれ「滅細剣」』
一気の噴射で襲い掛かって来たドリルの様な殻を纏う貝型モンスターを
必殺の薙ぎ払いでロイドは粉々に切り捨てた。更にドリルの攻撃は
続いたがそれもエイミーの糸の盾やロイドの斬撃で防いでいく。
糸の盾に次々とブチ当るドリルの衝撃音が水中に木霊していた。
速い流れが三人を押し流し行く手にまた滝の様な下って行く流れが見えて来た。
エイミーとロイドは何とか態勢を整え次を警戒するのだった。
『このフロア、まるでジェットコースターね!』
『休む間もありませんな』
『マーラ楽しいのー』
お気楽なマーラをよそに三人はまた滝を下り落ちて行くが、そこには大きな口を
開けた巨大な怪魚が待ち受けていた。
『次から次に・・・その口。リッカ開扇「塞ギート」、ロイド後は任せるわ』
エイミーの糸が怪魚の口を覆い尽くす様に塞ぐとそこへ降り立つロイド。
『我らを喰おうなど・・・散れ「裂細剣」』
執事の不可視の力を帯びた斬撃が三人の落ちて行く道を切り開き
斬り分かたれた怪魚は無惨に沈んで行ったのだった。
『ドヴォーーーーン』とまた滝壺に落ちた三人に別の怪魚が巨大な口を開け
迫って来る。怪魚の体に貼り付いていたのかドリル殻の貝型モンスターまで
飛んで来る。
『うーっ、もう!「探リート」、「斬リート」よ「網ミート」と化せ。
ロイド、マーラ掴まって扇移「突ピート」閉扇』
『パンッ!』
怪魚とドリルは突然消えたエイミー達の後に残された鋭利な網に突っ込み
バラバラに体を裂かれる。怪魚の後方に『扇移』した三人は水路を激流に
流され下って行く。『ゴォーーーッ』と流されて行く三人に次々と迫る
魚型モンスターを蹴散らしているとまた滝が見えて来る。
『何回落とせば気が済むのよ!』
『流石に懲り懲りですな』
『マーラは楽しいのー』
『ゴォーーーーードボォドバッドッバーーーーン』
楽しそうに滝を落ちて行くマーラと嫌そうな二人はまたまた滝壺に
落とされたのだった。三人が水面まで辿り着き顔を覗かせると
そこはドーム状の天井を持つ巨大な貯水池の様な場所だった。
滝の流れ落ちる音がドーム内に響き渡る中に感じる不穏な気配。
「ここフロアボスがいそうな感じね。早く倒してこんな場所終わりにしよう」
『いましたぞ』
水中の様子を伺っていたロイドが水底に並ぶ無数の巨大な卵とその中心に座す
巨大なオクトパスを見つけたのだ。それを見て水中へと潜行する三人。
『なんかアレ思い出したよ。オクトパスクイーンってとこかな。先手必勝!
出て来る前にっと、リッカ開扇「斬リート」よ切り刻め「縦横舞刃」』
エイミーが縦横無尽に張り巡らせた糸の刃が一帯のクイーンの卵を殲滅した。
そこから逃れた一部の卵が『パカリ』と割れて中から2メートル程の子型の
オクトパスが飛び出し襲って来る。
『舞刀両断「水中舞刀会舞技」、「水千踏斬」』
脚を広げ襲い掛かる子型オクトパスを水中舞技による鋭い水の刃でロイドが
次々と仕留めていく。エイミーも残りの卵を次々と飛び出した子型諸共に
倒していくのだった。子供を蹴散らされクイーンは怒りに身を震わせると
遂に動き出した。全長30メートルはあろうかという巨体をうねらせ水底から
踊り出すと脚を一振りさせ水刃を放って来る。それを糸の盾の多重展開で
凌ぐとエイミーは糸を四方八方へと張り巡らせる。
『マーラ、クイーンをノロマにして!ロイドは私と一緒に攻撃ね』
『ハイなのー』
『風は呪縛の陣、カゼハアナタノテキなのー』
マーラの魔方陣がクイーンの素早さを大減少させるとノロマな8本の脚から
次々と繰り出される水刃の攻撃を楽々と読み切り扇移で躱しながら攻撃する
エイミーとロイド。
『「斬リート」よ切り裂け「十糸裂衝」』
『水万踏斬』
二人が扇移を繰り返しながら次々と攻撃を加えクイーンにダメージを与えていく。
堪らずクイーンは墨を吐き出し闇に身を隠すのだった。
危険を感じた二人は咄嗟に水中から水上へと『扇移』すると元いた場所を
クイーンの水流ブレスが突き抜ける。
「あぶなー、油断大敵ね」
「マーラ、次で決めるから弱らせて!こっちは火力アップね」
『火は守護の陣、ヒハアナタノミカタなのー』
『土は呪縛の陣、ツチハアナタノテキなのー』
マーラの魔方陣が展開しエイミー達には攻撃力大強化、クイーンには
防御力大減少、耐久力大減少の効果が付与された。
クイーンはそんな事などお構いなしにエイミー達を追って浮上すると
8本の脚を掲げそこに8つの魔方陣が展開する。
「何かする気みたいだけど手遅れね。『斬リート』よ竜巻となりて
敵を呑み込め『切り斬り大竜巻』。扇移『突ピート』閉扇」
エイミー達とクイーンの間に糸の大竜巻を残し『扇移』するとクイーンは
大竜巻ごと消し去ろうと氷結の魔法が魔方陣から吹き荒れた。
『パキパキ』に凍る大竜巻をクイーンの背面に現れ確認したエイミー。
「リッカ開扇『包ミート』よ『釘ギート』と併せ敵に死を!
『ストリング・メイデン』」
クイーンを囲む様に現れた糸の処女が『パクリ』と巨大なオクトパスを
呑み込み糸の釘がクイーンを串刺しにすると中から『ブヒョーーー』と
絶叫が聞こえて来る。
「ロイド、消しちゃって」
「お任せあれ、念刀両断『大滅細剣』」
糸が解け中から無惨な姿を現したクイーンに執事の最期の一撃が届くと
巨大なオクトパスは塵と消えたのだった。
「フーっやっと終わった。あの氷結魔法はヤバかったね。
当分ジェットコースターは要らないくらい嫌なフロアだった」
「これはこれで楽しめましたが・・・」
「マーラ、またゴォーてやりたいのー」
「ほんとマーラったら。次来る時はレンカにも体験してもらおー、
それがいい!」
そんな会話をしてるとドームの一角が音を上げて開き次のフロアへ続く
地下水路が現れたのだった。そして宝箱があった。
「おっ、開いたね。宝箱の中身は水中呼吸の指輪か。これもレンカにお土産」
エイミーとロイド、マーラは激流ジェットコースターフロアを後にするのだった。
滝の流れ落ちる轟音が三人を次のフロアへ送り出す様に鳴り響いていた。
ジェットコースター展開で進んだフロアを攻略したエイミーとロイド、マーラ。
次回は「水の宮殿」です。
※誤字修正しました。




