表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/29

第18話 地下水路迷宮

 錬金術師ギルドの地下深くにある謎の施設を発見し人型樹人、正陽神教

に地下水路と船着場、そして潜水艦と色々な物を見つけたエイミー達は

地下牢に囚われていたタッカール爺さんを発見し救出する事に成功すると

二人は地下に隠されていた水路迷宮に足を踏み入れたのだった。


「ロイド戦闘準備よ、ここは水棲魔物が出そうだけどまずは調査と

 マッピングね。リッカ開扇『探リート』更に『巡リート』」


「はい、お嬢様。水棲魔物とは楽しみですな」


『探リート』により迷宮内を探りつつ『巡リート』で水路迷宮の構造を

露わにしていくエイミー。


「開扇『(マッ)ピート』」


『巡リート』が割り出した迷宮の構造を『(マッ)ピート』の糸により

迷路地図として描き出していく。それと『探リート』の情報を合わせ

この先の様子を理解したエイミー。


「この水路迷宮かなり広い。普通に歩いたら 時間かかるからこの先にある

 ドーム状の貯水池の様な場所まで跳ぶよ。扇移『突ピート』閉扇」


『パンッ!』


 二人は円形のドーム状の天井のある巨大な貯水池へ一瞬で移動した。

ここが始めにいた地下水路の側道を真っ直ぐに進んだ先にある場所だった。

巨大な円形の貯水池には幅5メートル程の側道が右外周部に続いているが

どこにも出口があるようには見えない。側道を進むエイミー達の前に

突然水中から何かが飛び出して襲い掛かって来た。


「サハギンっ!」


水中から出て来たのは3体のサハギンだった。瞬時に反応し迎撃する

エイミーとロイド。


「開扇『守リート』よ盾と化せ、斬り刻め『斬リート』」


 銛を構え突撃して来たサハギンの突きを糸の盾で防ぎ鋭利な糸の斬撃で

敵を仕留めていくエイミー。ロイドもまた細剣術でサハギンを仕留めていた。


「ここはサハギンがいるのね」


「水中からの突撃は要注意ですな」


 貯水池からのサハギンの襲撃に注意しながら側道を進み何回か戦闘を重ねると

前方に橋が見えてくる。その先には島の様なものが見える。


「橋があってその先に島?」


「あの島、何かありそうですな」


 二人は警戒しながら橋を渡って行く。幅100メートル程の円形の島が姿を現す。

何事もなく橋を通り過ぎ島へ渡ると島に置かれた燭台に火が灯る。


「何か仕掛けがありそうね」


 エイミーが呟くと体長2メートル超えの豪壮な槍を持つサハギンが現れた。

普通のサハギンを10体引き連れて貯水池より登場したのだった。


「あれサハギンの将軍?」


「サハギンジェネラルというところですかな。あれの相手は私めに」


「任せたわ。雑魚の相手は私がするから」


 サハギンジェネラル率いる部隊が攻め込んでくる。そして先制攻撃とばかりに

将軍の横薙ぎから放たれた水刃が二人を襲うがロイドはエイミーの前に立つと

細剣の一振りで水刃を弾き飛ばす。そのまま迫るサハギンを軽く跳び越えて

サハギンジェネラルへと向かうのだった。


「私は雑魚の処理ね。開扇『粘リート』よ『敷キート』となりて敵を捕らえよ。

 斬り刻め『斬リート』」


 エイミーの生み出したネバネバの敷布が10体のサハギンを捕らえると

自由を奪われた10体の敵を鋭利な糸が斬り刻んだのだった。

一方ロイドはジェネラルに斬り掛かっていた。それを敵は柄で受け止めると

口から水球弾を吐き出し不意打ちをロイドへと仕掛けるがそれを瞬時に体を

反らし躱す執事。


「舞刀両断『一踏斬』」


そして振り向きざまに一撃を放つがそれも受け止めてみせたジェネラルが

槍に魔力を纏わせ水刃の横薙ぎを放つ。


「ジェネラルに敬意を表して念刀両断『裂細剣』」


 ロイドの不可視の力を帯びた斬撃が水刃を二つに分かち、分かたれた水刃は

執事の両サイドを虚しく通り過ぎる。ジェネラルは斬撃を受け止めようとするが

それは槍の柄を分かちサハギンジェネラルの肉体すら引き裂いたのだった。


「ふーっ終わりましたなお嬢様」


「まーね、でも見て!」


 二人がサハギン部隊を倒すと島の上方の天井にある明かりが灯り貯水池より

橋がせり上がる。その向こうに島があるのが見える。


「また島・・・同じ様な仕掛けかな」


「一つずつ潰していくだけですな」


「私こういう付き合わされる系嫌いなんだよね。面倒い『透視』」


エイミーは『透視』で全てを見透すと自分達が出て来た地下水路から見て左側の

壁に隠れた地下水路があるのを発見し、その近くの側道へと糸を伸ばした。


「見つけた!ロイド掴まって扇移『突ピート』閉扇」


『パンッ!』


『念動波!!』


エイミーは執事を連れて『扇移』すると隠し壁に向かって念の波動をぶち込んだ。

『ガラガラ』と音を立てて壁が崩れるとその向こうに地下水路が現れた。

しかし、壁が崩れた途端に天井の灯りが赤く点滅を始め貯水池が騒めき出す。

無数のサハギンがエイミー達に迫って来ているのだった。二人は急いで地下水路の

側道へと逃げ込んだ。


「やっば!こんな仕掛けがあるなんて。地下水路完全封鎖、開扇『塞ギート』

 壁固定12時間」


 エイミーは地下水路と貯水池を厚さ2メートルの糸の壁で完全遮断すると

壁の向こうからサハギン達の虚しい攻撃音が伝わって来た。

前方に続く地下水路は右へと湾曲しているようだった。


「力技で何とかなったわね。でもあのサハギンの数は異常ね。

 スタンピード間近のダンジョンみたい」


「確かにあの貯水池にあの数が潜んでいようとは通常ではあり得ませんな」


 最初の地下水路でやった様に情報収集し『扇移』で一瞬にして二人は

時短移動するとまた同じような巨大な貯水池が広がっていた。


「一番目の貯水池と作りは同じみたいね。同じパターンで行ってみよう!」


「何か策がお有りの様ですな」


 ニコっと笑うエイミーとその後を付いて行くロイドは最初の貯水池と同じ様に

襲って来るサハギンを始末し橋を渡り島に到着すると今度は更にデカいのが

現れた。それは体長は3メートルを越え、手に二又の槍を持つサハギンだった。

そしてそれに従う様にジェネラル1体と通常種が10体も現れたのだった。


「ジェネラルの上のロードかな、あのデカイの」


「今度の部隊は骨がありそうですな。ロードはお任せ下され」


「いいよ!」


 ここでも先制攻撃はサハギン部隊だった。ロードの一振りで生み出された

氷槍10本が飛来する。


「塵と化せ!念刀両断『滅細剣』」


 ロイドの不可視の力を秘めた横薙ぎが氷槍10本を粉々に砕いて散らした。

氷槍10本に隠れる様に放たれたジェネラルの水刃が二人を襲うが

エイミーの生み出した糸の盾に防がれる。


「さすがロイド!」


「いえいえお嬢様こそ」


 ロイドはそう言ってロードへと爆進していく。


「『念動掌』、開扇『斬リート』よ渦の様に舞え『切り斬り舞』」


 エイミーの前で大きな渦の様に回る鋭利な糸の舞に念動により引き寄せられた

ジェネラルは呑み込まれ斬り刻まれる。残りのサハギンも念動により

引き寄せられ呑み込まれ全滅したのだった。後はロードを残すのみとなった。

そこではロイドとサハギンロードの一進一退の攻防が続いていた。


「散らせ『滅細剣』」


ロイドはサハギンロードの槍の連撃を一振りで相殺し距離を詰める。

ロードの砕かれた槍は氷の魔力によるものか一瞬で再生して元通りになり

執事の一撃を受け止めるのだった。


「やりますな、面白い」


サハギンロードとの闘いを楽しむロイド。ロイドが離れれば連撃を繰り出し

距離を詰めて攻撃すれば氷の防御を繰り出す手強い相手だった。


「グォ、グォ、グォー」


ロードが槍で突いてくると二又の槍が十又の氷の刃に分かれて襲い掛かる


「外らせ『念動掌』、舞刀両断『千踏斬』」


 ロイドは念動で敵の突きを上へ外らすと潜り込むように強力な一撃を放つが

それを氷の防御で受け止めるロード。強力な攻撃を受け後ろへ飛ばされそうな

敵を『念動掌』で引き止めると衝撃が集中して氷の防御を砕いた。

そして、その時執事の細剣は鞘へと収まっていた。


「これで決める!『千踏閃』」


ロイドの居合の一閃が煌めくとサハギンロードの胴体が二つに分かれたのだった。


「楽しそうだったねロイド」


「サハギンロードとはもっとやり合いたかったですな」


 闘いを終え笑いあう二人は次の行動へと移るのだった。

今回も前と同じ様に天井に灯りが付き新たな橋が現れるがエイミー達の

やる事は前回と同じだった。『透視』で隠し壁を見つけ『扇移』で

瞬間移動するとエイミーは前回と違うことを始める。


「リッカ開扇『斬リート』よ貯水池を縦横無尽に覆い尽くせ。

 これで準備OK!これで遠慮なく『念動波』」


 エイミーは準備万端で隠し壁をブチ抜いた。『ガラガラ』と音を立て

崩れる壁の向こうに地下水路が現れると前回と同じ様に天井の灯りが

赤く点滅し無数のサハギンが現れるが全て『斬リート』の餌食となった。

この貯水池での仕事を終えたエイミーは情報収集を始めるのだった。


「今回はスッキリと前へ進める。でもやはりあの数は異常ね。何か企みを

 感じる・・・次がこのフロアのボスね」


「このフロア最後のボスは大体予想が付きますな」


 この水路迷宮の最初のフロア最後の地下水路を抜けるとこれまでより

小さな半円形の貯水池の中央に島があり、そこへ側道から橋が架かっている。

そして島には既に巨大なサハギンが待ち構えていた。


「このキングって言いたくない気持ちは何だろう?分かりきった事を

 態々口に出す気持ち悪さ。もう言っちゃったけど・・・」


「サハギンキングですなあれは・・・」


 どうでもいい事を話しながら島へと辿り着いた二人は体長5メートルは

あろうかという三つ又の槍を持つ巨大なサハギンキングと向かいあった。


「流石にフロアボスでキングって他の雑魚とは違うわね。だけど異常ね。

 迷宮の最初のフロアにいる様なボスではないよね」


「明らかに異常な迷宮ですな。来ますぞ!」


 サハギンキングは槍で地面を打ち鳴らすと貯水池からサハギンが20体島へと

上がり襲い掛かって来た。それを『斬リート』で即座に全滅させるエイミー。

キングが更に打ち鳴らすとサハギンジェネラルが5体上がって向かってくる。

するとその前に立ちはだかるロイド。


「念刀両断、薙ぎ散らせ『滅細剣』」


パワーを漲らせロイドが放った不可視の滅尽の横薙ぎによりジェネラル等は

細切れに滅殺されたのだった。


「お前も出て来い!『念動掌』、開扇『斬リート』切り裂け『十糸裂衝』」


エイミーは念動でキングを引き寄せると十の糸の刃が敵の肉体を次々と切り裂く。


「喰らえ『気扇弾』五連射!」


『グォーーーーッ!』


 体を切り裂かれ血塗れのキングは『気扇弾』を受け呻き声を上げながら後ろへと

倒れたのだった。『グォー』と叫び立ち上がる敵の体は再生が始まっていた。

キングは三つ又の槍を構えると槍が青く輝き出しそれを大薙ぎに振るうと

槍の先から生じた巨大な水の激流が二人に襲い掛かる。エイミーは糸を張り巡らせ

『扇移』で一瞬にして躱す。


「念刀両断『裂細剣』」


ロイドに襲い掛かった激流は二つに分かれ過ぎ去ったのだった。


「何かくる!」


 エイミーには敵の背ビレが青く輝くのが見えていた。『グォンッ』と吠え

口を開けるとサハギンキングはロイドに向け水流ブレスを撃ち放った。

それを『念動掌』で左へと曲げ自身は右へと回り込む執事。


「リッカ開扇『縛リート』」


「舞刀両断『万踏斬』」


 エイミーの糸で縛り自由を奪い、ロイドの強大な斬撃がキングを捉えた。

サハギンキングの肉体は大きく斬り裂かれ血飛沫を上げるがすぐに再生を

始めて塞がっていく敵の傷。


「こいつはタフね。ボスだけあって体力モンスターだよ。再生を何とか

 しないとね。もう面倒くさいからマーラ呼んじゃおう。時短は正義ね」


「魔像召喚、出でよ貴械精霊マーラ」


『お呼びですかーお姉ちゃま』と不可視の精霊マーラが現れふわふわと

エイミーの側に浮かんでいる。


「マーラあいつの回復能力阻害しちゃって、私達には攻撃力強化ね」


『ハイなのー』とマーラが上空に舞い上がる。


『火は守護の陣、ヒハアナタノミカタなのー』


『水は呪縛の陣、ミズハアナタノテキなのー』


マーラが唱えると二つ魔方陣が展開しエイミー達には攻撃力大強化、

敵には体力回復阻害、再生阻害、魔力回復阻害が掛けられた。


「マーラありがとう。ロイドこれで一気に叩き潰すよ」


「はいお嬢様」


「うぉりゃー!リッカ開扇『楔ビート』よ敵を地面に縛り付けよ。

『斬リート』よ竜巻となりて敵を呑み込め『切り斬り大竜巻』」


 エイミーの放った複数の楔の糸がキングの肉体に打ち込まれ糸の片方は地面に

深く打ち込まれ敵は身動き出来ず自由を奪われる。そこへ鋭利な糸の竜巻が

キングに襲い掛かり呑み込んでいく。

中から『グォーーーーーーーーー』敵の絶叫が聞こえて来る。

悪足掻きに水流ブレスを放とうとしてる様だが全て竜巻に呑み込まれていた。


「ロイド最後は任せたわ」


静かに頷きパワーを全身に漲らせる執事。竜巻が止みズタボロと化した

サハギンキングに最後の一刀が下される。


「これにてお別れです。念刀両断『大滅細剣』」


『グォフッ・・・』


 ロイドの最後の一太刀によりサハギンキングは塵と消えたのだった。

そして『ゴトン』という音と共に三つ又の槍だけが残った。

キングが消えた貯水池の天井に明かりが灯り奥の壁が『ズズズ』と開き

新たな地下水路と宝箱が現れた。


「やっとこのフロアクリアね。このダンジョンレベルは異常過ぎるけど・・・

 三つ又の槍はロイドの戦利品ね。宝箱は『水神の腕輪』で再生能力か。

 これはレンカへのお土産にしよう!」


「三つ又の槍大事に使うとしましょう」


 三つ又の槍を軽く振ってみせるロイド。それを喜ぶマーラ。

エイミーはそんな二人を連れて奥の地下水路へと歩き出すのだった。

激戦のフロアを後にする三人を癒すように水路は心地よい音を奏で流れていた。

今週の投稿はこれで終わりです。読んで下さった方々ありがとうございます。

無事地下水路迷宮の最初のフロアを突破したエイミーとロイド、マーラ。

次回は「とある場所で」です。

※誤字脱字がありましたので修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ