第9話 バーサーカー彼女-2
「……ご飯をくれるなんて、あんた、いいやつなのだな?もしかすると、さっきは無法者を追っ払ってくれたのか?」
そろーっと立ち去ろうとした時だった。
俺のシャツの裾を骸骨頭の女が引っ張っていた。露出が大きくて、そこらへんは素晴らしいのだがさすがに頭が骸骨はキツイ。
やっぱり、今から俺を食べるとか言い出しそうだし。
「……は、腹の足しになったのならよかった。じゃ、俺は行くぞ」
恐ろしさのあまり直視できようもなく、俺は明後日の方向をみて答える。
「待ってくれ」
彼女は自分の頭をトン、と軽く指先でたたいた。
しゅいいいいーん。
「はぇええ……!?」
信じられないことが起きたのだ。
彼女のおぞましい骸骨が消え去り、ドクロマークの髪飾りに変化する。
そして、眼前には美少女が現れるではないか!?
銀色に近い紫の髪に、透き通るように白い肌。大きな瞳にかわいらしい桃色の唇の美少女だった。口元の笑みは無邪気そのもので、純粋な性格であることが見て取れる。身長はずいぶん低いので、一見すると子供っぽくさえ見える。
それなのに大きな胸やまあるいお尻、すらりとした脚が目に付く。特に胸は反則だろうっていうぐらいに前方に突きだしている。
彼女の服は胸元だけ違う素材でできているらしく、メロンのような凶悪な二つの丘がぐいんとせり出していた。
……ぐっ、目に毒すぎる、まさに毒メロン。
多分ではあるがウララよりも大きい、イルとは比較にもならない。
直視できないぞ、さっきとは違う意味で。
「礼を言わせてくれ。あたしの名前はフレイヤ。ジョブは見ての通り狂戦士なのだ」
彼女は流ちょうに自己紹介をしてくるので、俺もとりあえず自分の名前をエルだと伝える。
それにしても、狂戦士か、ここら辺の地域では見たことのないジョブだ。
「さっきは正直言って助かったのだ。あやうく大惨事になるところだったぞ」
彼女は機嫌がいいのかペラペラと話し始める。けっこうなおしゃべりだったらしい。
「実は昨日からなんにも食べてなかったのだ。いいトカゲ肉とパンだった。くふふ、わがヴァルキリーの一族とトカゲ肉には切っても切れない縁があってだな。大昔、伝説のトカゲ族の族長、ビビリキリ・ビリゾウムがいうことには……」
さらには俺の手をもって笑顔でトカゲ肉の魅力や由来について話しだす。
びびりきなんぞやとかいうトカゲの話まで持ち出して、話し始める。
「……って、近いから!」
その服で無邪気に近づかれるのはいろいろと困るんです!
彼女のキャラ変と会話の内容についていけず、俺は目を白黒させてしまう。
「とにかく、フレイヤさんがお礼を言いたいのは分かったってば!」
心臓がばくばく言い始めるのを感じる。彼女の服装も笑顔も胸の谷間も刺激的すぎるのだ。
「そうか。わかってくれたのなら嬉しいのだ! あたしのことはフレイヤでいいのだ」
彼女はそう言ってニコッと笑った。
人懐っこい動物を思わせる笑顔であり、素直さがにじみ出ていた。生意気系のイルとも、クール系のウララとも違う、子犬みたいなかわいらしさ。
やべぇ、かわいい、しかもセクシー。
いとも簡単にほれそうな俺がいるのだった。
「それにしても、かわいい女の子があんな治安の悪いところを歩いていたらダメだと思うぞ? シルビアだって悪い奴はいっぱいいるんだし」
「はぁっ!? あたしのことを、かわいい、女の子……だと!?」
彼女は俺の言葉を反復して、眉間にぎゅっとしわを寄せる。
表情の急変に俺は妙なことを口走ったと悟ってしまう。
「あんた……、それ、本気で言っているのか」
ぎろりとにらみつける彼女。
さきほどまでの犬みたいなキラキラの瞳は消えさり、かわって狼のように鋭い瞳が現れる!
ひぃいいい、噛みつかれる!?
「か、かわいいと思います……。女の子であることは間違いないですし……」
とにかくこういう時はお世辞あるのみだ。
いや、事実をありのままに伝えてるんだけどね。
いつの間にか敬語にもどっている俺なのである。
「ば、ばっきゃろーなのだ!」
しかし、俺の配慮は逆効果となり、フレイヤは絶叫して殴りかかってくる。
その拳は鋭く、動きに無駄もない。
避けないと死ぬ!
本能でそう察知した俺は寸前で彼女の拳をかわす。
「かわいい、女の子だなんて……」
彼女の拳はレンガ造りの壁にめり込んでいるではないか!
彼女が腕を引き抜くと、ぱらぱらとレンガの破片が地面に落ちる。
ひいぃぃ。
「そんなことを言われたのは生まれて初めてなのだ。あ、あう、顔が熱いぞ!? あたしはあんたの目つきの悪いところがいいと思ってるのだぞ!? のろけさせるなんて、ずるい男なのだ!」
ずるいずるいと言いながら、フレイヤは俺をぽかぽか殴ってくる。
今度は手加減してくれるらしく痛くないけど……。
……どういうこと?
……のろけてるの、それ?
お読みいただきありがとうございました!
今日はもう一話、更新します。
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