第91話 怨念
「まず此奴はな、強い恨みを持っていた」
「恨み?」
「あぁ、詳しい事は分からないが恋人関係の事でね、友人の事情聴取で判明した事だよ」
「つまり強い恨みを持つと悪魔化するってことが?」
「いや、厳密に言うとそうでもない、悪魔化には強い怨念と強い魔力、この2つが揃って初めて悪魔と成る、それが悪魔化する条件の一つ」
「一つ?まるで複数あるような言い方だな」
「あぁ、悪魔化にはもう二つの条件がある、もう一つは黒魔法と呼ばれる聖魔法と対を成す魔法、これを自在に操れるようになっても悪魔に成ったと見なされる」
「黒魔法ってそんなにヤバいのか?」
「勿論、常人なら死ぬか一生気が狂い続けてしまうような恐ろしい魔素を使う魔法でね、悪魔共は主にそれを使ってくる」
「あれ?でも俺が悪魔に成った奴と戦った時はそんなに強く無かったぞ?」
「それについては報告が上がっておる、彼はどうやら半分悪魔、半分人間のような中途半端な個体でね、さしずめレッサーデーモンと言った所か、本物ならあんなにあっさりと倒れはせんよ」
「そうだったのか…」
「なに落ち込む事はない、レッサーデーモンでも我が騎士士団1個師団を投入する所だよ」
「良いのかどうかわからないな…」
「まぁ話を戻そう、もう一つは悪魔の始祖である4柱の悪魔と呼ばれる者と契約を交わすこと、この事象は滅多に無いがね」
「4柱の始祖?」
「うむ、この世界に悪魔が出現した時、初めて出現した悪魔が4体、それぞれ破格の強さを誇っていて、4柱が揃った暁には世界は滅ぶと言われている」
「そんなに強いのか?」
「伝承によれば一人で十を超える国を倒したとか何度首を切り落とそうとも死なないとか、はたまた大地を消し飛ばす攻撃を放ったという伝承がある」
「滅茶苦茶だな…」
「そう、だが我々はそんな滅茶苦茶な相手を敵に戦い続けている、全ては我等の神の為にな」
「なるほど、それで今回の内戦も悪魔によるものか」
「少なくとも我々はそう思っているよ、私も表向きは教皇閣下を指示しているが、その裏では教皇閣下を持ち上げこの国を乗っ取らんとする悪魔を捜索している」
「で、具体的な奴は見つかったか?」
「すでに何人かに目星はつけておいた、この者たちだ」
そうして枢機卿は俺に似顔絵と名前、住所や職業まで書いた紙を渡してきた
「こいつ等か…」
「どうかね?奴等をこの神聖な土地を一生歩けないようにする事に協力して貰えるかね?」
「・・良いだろう、だが俺の方でもこいつ等を調べさせてもらうぞ?」
「勿論だとも、協力してくれて嬉しいよ、名前は…」
「大和、白優大和だ」
「大和君か!私はエル様から聞いているとは思うがマーベリックと言う、これからよろしく頼む」
そうして俺は枢機卿と握手を交わしたのだった…
〜4時間後〜
「・・なら明後日の礼拝で全員集まるんだな?」
「うむ、教皇閣下が不在だが、、これは乗っ取らんとする奴等からしてみれば代理として堂々と乗っ取るチャンスだ、我こそが代理だと名を挙げるだろう、そして教皇閣下が見つかったら…」
「それなんだがな、あの教皇影武者じゃないのか?」
「何?どういうことだ?」
「いや、その教皇に会ったんだがな、実の娘にナイフを突きつけたり母親のする事とは思えんぞ?」
「そんな、、影武者の部隊など…」
「本当に知らないのか?」
「あぁ、知らぬ」
「それは…」(どうしたものかね…)
そう思った瞬間…
『艦長、至急報告します』
(何だ?)
『ヘリで回収した者ですが、頭部の中にデータチップが埋め込まれておりました、どうやら遠隔で作動する物のようです』
(それは本当か、それでそのデータチップの起動元は?)
『現在解析中ですが、艦長が今滞在している街の中に反応があります』
(何!?確かか?)
『はい、まだ正確な位置は掴めませんがおおよそはその周辺にあります』
「・・どうかしたのかね?少し顔が険しいが…」
「実はな、教皇の影武者が遠隔で操作されてた、とても高度な技術でな」(少なくともこの世界にはまだデータチップなんて物を作る技術は無いだろう…)
「ふむ、、高度な技術…」
「何か心当たりがあるのか?」
「この国には伝承がもう一つありましてな、突如として現れた勇者により始祖の悪魔は全員封印され、その内の一柱の悪魔がここに眠っているとの伝承があるのです、そしてその勇者の子孫が現在の教皇閣下です」
「それで?」
「それでその封印した装置を保管している建物の周辺にはまだ我々には扱えない技術が使われた出土品が多くありましてな、その内の一つが対魔物用結界です」
「なるほど、確かにそれは興味深いな…」
「ならば今度その建物をお見せしましょう、頭の片隅に入れておくにも一度見ておいた方が良いでしょう」
「それは有り難い、だが全てはこれらを始末した後だ」
「うむ、そうしよう」
そうして俺達は明後日の礼拝に備えるのであった…




