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893の妹は覚悟を決めます  作者: 白李
思春期
9/13

school

高校をサボってどれほど日にちがたったのだろうか

久しぶりに教室に入っても誰もこちらに目を向けない

それどころか静まりかえっている

進学校の宿命というべきか


荷物だけ起きその場を去った

荷物さえあれば出席扱いになるだろう


誰もいない廊下を歩き、図書館に入った

もちろん誰も生徒はいないが、担当の先生がいる

何を咎めるわけではなく本に目線をうつしている

こうなれば何かほかの先生に言われることはないだろう

いつもの1番日当たりのいい席に座った

淡い光が俺に差し込む

こののどかな時間がこの学校の中ではまだマシな時間だ

そこから中学の運動場が見える


何をするでもなく中学生の体育の授業を見ていた

3年前俺はあそこで授業を受けていた

遠い過去のようで近い日々

あの時はなにも思っていなかったが大切な時間だったのだと思った

そういえば深白、今日は授業受けてるはずだ

いるかもしれないと目を凝らした


いた


自コートにいた深白は何人も抜いていき、ゴール前まで走っている

あっという間にキーパーと一対一の対決になった


深白は勢いを止めることはなく目を右端を向けた

キーパーはその様子をみて右端へ飛んだ

しかし深白の足は左端を狙っていた

飛んだと同時に入るゴール

見事キーパーを騙しゴールを決めた


思わず見惚れてしまった

深白はチームメイトといまのプレーを褒め、点数が入ったことを喜んでいる

あれだけみるとただの中学生にしか見えない

深白というと極道ということをふと忘れるときがある


気づかないのはわかっているが窓際で深白に視線を送ってみた


深白は視線に気づいたのか上の階にある図書館に顔をあげた

俺を見つけたらしく少し驚いた顔をした

その後汗を拭いながら、はつらつとした笑いをこちらに見せ、喜びに溢れたピースしてみせた


一応返事として手は振っておいた


深白はその様子をみてチームメイトの元へ帰っていった





あとで連絡を入れておこう

「おめでとう」と


久しぶりに学校で面白いものが見れた

久しぶりに学校に来てよかったと思えた





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「おめでとう、かっこよかった」


「ありがとう、見られてたと思ったら恥ずかしいけど


それより一緒にお昼ご飯食べよ!」


「いいのか?」


「うん!一緒に食べたい

高校の方の校舎行っていい?」


「中庭のほうがいい

天気もいいから」


「うん分かった!」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


高校の方だと中学の制服は目立つ

それに今俺の教室は息苦しい

そんなところに行かせたくない


午前中の授業が終わるころに荷物を取りに行かなければ…


図書館での時間つぶしに目処がついた




「咲夜さん!」

「敬語」


「咲夜…学校だけどいいの?」

「いいと思う

別にそんな頻繁に会うわけでもないからな」


先輩に対して敬語を使うことは今では常識として学校教育でも習わされる

俺は学年は上だが深白を後輩として見ているわけではない

そんな深白に敬語を使われるとむず痒い気持ちになる



「帰り一緒に帰るか?」

「うん!」


笑顔で返事する深白が可愛く見えた

中学生らしい幼さが残る顔

しかしパーツも整っていており、肌はシルクのように滑らかだ

何より深白はよく笑う

その笑顔が整った顔に花を添える

将来はとても美人になるだろう


そう思っていた時無意識で頭を撫でていた


「咲夜?」

「…!すまない」

「大丈夫だよ撫でられるの好きだから」


反射的に手を引き、何をしていたんだと自問自答する


俺は深白のプレーを目で追っていて見惚れていた

笑顔をこちら向けたとき何かがざわめいた


…どうして深白を俺は見つけようとした?

どうして深白を目で追った?

どうして笑顔に胸がざわめいた?

どうしてこいつを可愛いと思った?


「こい」

「え?」


「あ、いや鯉だよ!鯉

そこの池に錦鯉がいるんだよ」

「あ、あぁ」


そこには優雅に泳ぐ雅な錦鯉がいた

深白が池に近づき鯉を見に行った


「落ちるなよ」

「うん!」

深白に注意したがあれは気にしてない様子だ

よく見ておかなければ


俺が深白を見ていたのはただ暇だっただけ目で追ったのは知り合いだから

胸がざわめいたのは関心したから

可愛いと思うこともあるだろう


…本当にあっているのか?

本当に好意がないという結論はあっているのか?



…俺は深白のことが……




ジャバンッ!

水しぶきが俺にかかる


「深白気をつけろって言ったばっかりだろ」

「ごめん…」

深白は鯉のいる池に落ちていた


手を引き深白を引き上げた

そこまで深くないといえ、顔から落ちたため全身濡れている

ごめんごめんと恥ずかしそうに顔を赤らめた


体を拭くために保健室に行くことにした


保健医も昼休憩中らしくいない

タオルだけ渡し、カーテンを閉めた


その間に制服の替えがあるかどうか調べたがワイシャツはある

しかしブレザーはない

スカートは濡れていても中にズボンを履いているからそこまで冷えないだろう


拭き終わった深白が濡れた制服を乾かしている


「俺の貸してやるから」


仕方がなく俺のブレザーを被せてやった

深白は頭の上に乗ったブレザーに目線をやり、こちらを見た


「でも…咲夜が寒いでしょ?」

「大丈夫だ、俺は当分保健室にいておくから」

「サボるの?

あ、そういえばさっき授業中図書館にいた!

まさかサボってるの?」

「そのまさかだ」

「真面目に授業受けなさい!」

「はいはい」

「あ、それ受けない返事だ」

適当に返事すると不満だという顔をしてこちらを見ている


深白は俺のブレザーに腕を通したがサイズが大きすぎる

とくに袖が長い

けれどなにもないよりマシだろう


「大きい…」

「当たり前だろ男子高校生の成長なめるなよ

それにお前小さいしな」

「気にしてることをさらりと言わないでよ!」

また不満だという顔をした

よく表情の変わるやつだ


「深白昼休み終わるぞ

お前までサボる気か?」

「え、うそ遅刻しちゃう」

急いで荷物をまとめた

その間に予鈴のチャイムがなる


「受けるんだからね!咲夜」

「はいはーい」

「それ受けないでしょ!!」

もう!と自分の教室へと走っていった


その後ろ姿をみて何かまた少し胸がざわめいた


1人になった保健室

時間がたてば保健医が入ってくるだろう

それまで寝るかとベッドに横になった

思考が働いていく

そのたびにグルグルと通信制限のように動作が止まる

けれど検索しなくても俺はこの感情を知っている


ため息をついた


「俺が深白にね…




そんなものか」





「あ、体操服持ってた」

深白は自分のカバンに入っている体操服を見ていた

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