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【電子書籍化&コミカライズ進行中】私、愛されていますので  作者: 秋色mai @コミカライズ企画進行中


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52/60

52. ここはどこ


 レティはしばらくぼぅっとしていた。小鳥のさえずりを聞いて、新緑の匂いに包まれて。プラチナブロンドが日に透けて、紅い瞳は真っ青な空を映す。

 サクサク……と裸足で草を踏んで、その身軽さに風に身を任せて踊った。何をすればいいのかも、しなければならないのかも、レティにはわからなかった。踊ることに飽きれば、花冠を作った。

 誰かに教えてもらったことをなんとなく感じていた時、轟音が鳴り響く。真っ黒な何かによって日差しが遮られ、大きな影が出来る。


「ド、ドラゴン!?」

「グルル……グルルルゥ……」


 大きな光魔法の波動を感じ、ヤミーは飛んできた。母代わりがいると思った。けれど、その表情で悟る。レティが、レティではないのだと。

 ヤミーは小さくなった。それでも会えたことが嬉しくて、レティに頬に擦り寄った。


「なぁに? もう」


 レティがくすぐったいそうに笑う。本来ドラゴンを見つければ叫ぶか逃げるかなのだが、レティはそれをしなかった。


「ねえ。よくわからないけれど、迎えにきてくれたの?」

「キュウ!」


 なんとなく、家族な気がしていたから。鋭い勘と体で覚える性質は、記憶を喪失しても感情を残してくれていた。


「あなたはだぁれ?」

「キュウウ!!」

「……ダメだわ、なんて言っているのかわからない」


 ヤミーは悲しそうに目を閉じて、また大きくなる。レティをじっと見て、羽をパタパタさせた。


「背中に、乗ればいいの?」


 そうだと鳴く。レティはヤミーによじ登り、ついでに角に花冠を被せた。迎えに来てくれたお礼だ。


「私、ドラゴンに乗るなんてきっと初めてだわ」


 ヤミーは飛んだ。高く、早く。日が落ちるまでに家に連れて帰りたかった。大切な人たちが、悲しんでいたのを知っていたから。

 家に着くと、レティはキョロキョロと周りを見回した。温かい気持ちがあるのに、記憶が存在しないことに戸惑っていた。

 ヤミーは声高く鳴く。シルが走ってきて、レティに飛びついた。何事かと家の人たちが出てきて、息を呑む。


「「レィちゃん!!」」

「「レティシア!?」」


 慌てて駆け寄ってくる人々は、皆やつれていて、泣きそうで。実際泣いていた。


「無事なのか!?」

「行方不明になっていたのよ!?」

「今までどこにいたんだ!!」

「探していたんですよ」


 あの時、殿下は光に包まれて生き返り、代わりにレティが消えていた。それが冬の終わりで、今は春真っ盛り。実に二ヶ月ほども行方不明になっていたのだった。

 けれど、レティはそんなことを知らない。


「クロヴィス殿下にも早く伝えないと」

「えっと、その……」


 記憶を失ったレティは、鏡すら見ていない。


「レティ……?」


 家族が不審な顔をする。シルは側に座った。


「ごめんなさい、私、何もわからないの」


 自分に似ていることもわからないし、自分がどうなってしまったのかもわからない。

 泣かれたくない人、でも何も知らない人たちに詰め寄られ、レティは怖かった。


「っう……」


 母は嘘でしょう、と言いたかった。嘘であって欲しかった。それでも、レティが嘘を言わないこと、怖がっているのに気づいて、言葉を飲み込む。そんな妻の肩を持ち、父は息を吸い込んだ。息子たちはギョッとした顔で耳を塞ぐ。


「レティシア!! おまえはレティシア・オベールであり、俺の娘だ!!!」


 張りのある声は、オベール領どころか、王都にまで届いた。戸惑いも、嘆きもない。あまりの迫力に、レティの不安が消し飛ぶ。


「何も心配しなくていい。何があろうと、レィちゃんは家族なんだ」


 レティは静かに頷いた。母は、この人と結婚してよかったと思った。兄たちも頷いて、レティを迎える。


「おかえり、レィちゃん」

「……まずは晩御飯にしましょう」

「俺は風呂の薪を割ってくるからな!」

「兄上、我が家の風呂は魔動式ですよ」


 まずは、お腹いっぱいにしてあげること。清潔にしてあげて、温かい寝床を用意すること。

 たくさん心配をした。たくさん泣いた。


 それでも、一番大事なのは、レティを安心させてあげること。


「た、ただいま、帰りました」


 ヤミーはたくさん褒められた。オベール家はレティの無事と、しばらくの間面会には応じられないことを各所に伝えた。

 十八年分の記憶を失ったのだ。落ち着く時間が必要だと判断した。


         *


「……レティが、生き、て?」

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早く明日にならないかしら!!!!!
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