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硫黄の町

麓の集落近くまで来てみれば、そこは非衛星集落(コロニー)とは思えないほど堅牢な作りで、人の出入りも非常に多い事が分かった。


背丈の三倍から四倍はありそうな石壁と、水を流し込んである深い堀があり、重そうな鉄格子が引き上げられている入り口には、大小様々な荷牽きの獣と、それを率いる商隊が、集落内に入るために順番待ちをするほど入口に溢れていた。

カレタカ達は仕方なしに列に並び、順番待ちをしながら集落について話す。


「随分活気があるな。実は見えていないだけで衛星集落(サテライト)なのか?」


「何かしらの貿易基地では?並んでいるのは商人が殆どのようですし」


考えていても埒があかないと、先頭に立っていたアリシアが前の男に声を掛けた。


アリシア達がいた地域ではあまり見かけない、砂漠地帯で好まれる服装をした男だった。

薄灰色のロングワンピースの腰にガンベルトを巻き、カーキ地に何かの柄が刺繍されているスカーフを海賊のように雑に頭に巻いている。

彼の横には立派な重種の馬が二頭、おとなしく待っていた。


「なあ、あんたはここには良く来るのか?」


「ん?俺か?そうだな、定期ってほどではないがちょくちょく来てるぞ?」


それを聞いたアリシアが、親指の爪ほどの魔石を一つ取り出し、男に差し出しながら話した。


「あたしらはフリーの探索者なんだが、あの山を越えて来たんだ。こっちの事情にはちょっと疎くてね」


男は差し出された魔石とアリシアの言葉で、何が欲しいのか理解すると、魔石を受け取り懐にしまいながら話した。


「おぉ、こいつは悪いな。ここは鉱山の町さ、《根っ子の火山(ルーツボルケーノ)》って言うんだ。長いからルーツとかよく言われてる。元々はしがない硫黄採掘所だったんだが、けっこう前、あの低山の火口付近に、大型の憑魔が巣穴を作ったんだよ。憑魔は討伐されたんだが、そこに残った穴が剥き出しの鉱床になっててな」


そう言って火山の麓の先にある低いコブの様な山を差した。


「それ以来、ルーツはこの先の都市のお抱えみたいになったんだ。コロニーだが結構管理が煩くてな。今じゃ出入りするにもこの有様だ」


「へぇ、ゴールドラッシュかい。どうりで景気が良さそうな訳だ。仕事はあるかい?」


「鉱山夫の手ならいくらでも集めてるが、探索者(そっち)はどうだろうな。お前さんら、見た感じ狩人(ハンター)だろ?この辺りは硫黄混じりのガスの影響か、エーテルが薄くてな。魔獣も憑魔もあまりいないんだ。ただ、いくつかの火口付近は地脈が活発だから、ここじゃなくサテライトまで行ってから探したほうが確実だな」


「そうかい。ありがとうよ」


アリシアは礼を言って会話を締めたが、男は三人を少し見定めるような目で見ながら会話を続けた。


「あんた等、護衛も出来るか?往復で雇いたかったんだが、滞在が少し長くてな。帰りのあてを探してたんだよ」


「出来なくはないが、出発は?」


「一週間後だ。滞在費は出せないが、変わりにここで案内役(ガイド)を付けてやる」


そう言うと、馬の影から子供が出てきた。

男をそのまま小さくした様な、同じ服装の10才くらいの男の子だった。


「息子だ。大体一緒に連れてるから土地には詳しいぞ」


「ここで即断は出来ないが、悪い話じゃないな。腰を据えた後に詳しく聞こうか」


男はアリシアの返答に納得すると、ポーチから紙を数枚取り出して渡してきた。


「ここは入口に魔石の換商はないぞ。でもって、こっちの都市群の通貨は紙幣だ。これが無きゃ中にも入れない。出た所で待っているから、後で返してくれよ?」


そう言うと、男は検問に入って行った。

ノラは、アリシアから紙幣を一枚貰うと、物珍しそうに表裏を返しながらしげしげと眺めた。


「シート型の基盤……ですかね?紙の中に回路が隠れてます。というか、随分親切な方でしたね」


「まぁ、契約前の信用代だと思って受け取ったが、商人に善人はいねえ。きっちりしておかねえと後が怖えな」


程なく順番が回ってきて検問に入ると、軽い武装をした衛兵らしき男たちが手続きを行っていた。


「人数と目的、滞在期間は?」


「三人とも探索者だ、あと陸鳥が三匹。火山の向こう側の土地から仕事を探してこっちに来た。今しがた通った男と護衛の話を付けてあって、出発までの滞在は一週間ほどだ」


さらさらと記帳をしながら、男がカレタカの義手を指さす。


「それは工兵が持つ類の重鎧か?重火器は警衛預かりになるぞ」


「義手で、あり合わせで作った物だ。肩鎧なら預けても構わないが」


慣れた手つきで手甲部分を外し、無い手首を見せる。


「それは失礼した。使い物にならないならそのままで構わない。では、三人と騎乗獣で9000ビットだ」


衛兵が軽く謝り、問題ないことを告げた。

借りた紙幣に書かれている数字を確認して、手渡しながら聞く。


「入るのはどこもこれくらいかかるのか?」


「いや、ここは特別高い。必要以上に来てほしくないからな。手続きは終わりだ。行っていいぞ」


衛兵はそっけなく話を終わらせ、入場を即した。


中に入ると、入口の脇で先ほどの男が石に腰かけてのんびりと煙草をふかしていた。

三人に気付くと、煙草を消してこちらに向かって来る。


「よお、問題なく入れたみたいだな。取りあえず獣を預けて、宿を取った方がいいか?」


三人が男の提案に賛成すると、おどける様に続けた。


「ようこそ、硫黄の町、根っ子の火山(ルーツボルケーノ)へ」

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