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優しい虚勢

閲覧ありがとうございます。

お暇ならぜひ読んでいってください。

天幕に戻ると、ノラは死者の解放について話し始めた。


「カティナの巫師が行っていた”呼び覚まし”と、私達巫女が行っている”穢れ払い”は、本質は同じです」


一本一本紐解く様に説明する。


「穢れ祓いは憑魔の穢れを取り払いますが、巫師のそれは思いの善悪に関わらず、残った思いを昇華させるものです。穢れは憑魔の思念だと考えて貰えれば大体分かりますでしょうか?」


アリシアとカレタカは神妙に頷く。


「穢れを払う際は、魔力で干渉し、術者の思念で強制的に上書きを行って、実態を持たせずに発露させ、エーテルに溶け込ませる。と言う手順です。実態はありませんが、思念を発露させるという事は、言うなれば出来損ないの錬器術です。故に、巫女以外には伝授しませんし、口伝のみで文献は一切存在しません」


だから内緒ですよ?と、唇に指を当てる仕草をしながら続ける。


「”呼び覚まし”の場合、ここに残った思いを昇華させるので、私の思念を干渉させる必要はありません。まぁ、やったとしても、カレタカさんの想いが強すぎて塗り替えれないと思いますけど。

なので、その過程はすっ飛ばして一気に発露させます。私は巫師ではないのでどう現(・)れ(・)る(・)か(・)だけは保証できませんが、この方法でまず間違いありません」


彼女もこんな事は試したことがない。だが、不安にさせまいと思う気持ちと、ほぼ確信めいた憶測を持って一気に話した。


話を理解したカレタカは、一番聞きたかった事を尋ねる。


「いつできる?」


ノラは少し考えてから答える。


「今日では魔力が少し足りないかもしれません。万全を期すためにも明日まで回復を待った後、エーテルの活性が高まる日暮れ直後から始めましょう。準備を手伝っていただけますか?」


カレタカはわかった、と強く頷いた。


「準備と言っても、やって頂きたいことはそれほどありませんけどね。

まず確認というか、術式を行う大前提なのですが、この村には大量の水と、それを溜めておける場所はありますか?そうですね…、あのお墓が全部洗える位の水が溜められる」


指を一つ、ぴんと立てて要求をする。

カレタカは暫し思案し、ある。と答えた。


「墓の奥ほどに行くと、湧き水と巫師が使っていた水場がある。好きに使ってくれて構わない」


その言葉に安心して彼女は話を進める。


「わかりました。そこは明日見させてください。綺麗な水さえあるのなら、あとは私の方の支度だけです。もし何かあれば都度お願いしますね」


何も案ずることはない、安心して全てを私に任せて欲しいと言わんばかりに、軽く微笑みながら、良く通る声で話す。


間違いなく仮定はあっている。ほんのひ(・)と(・)つ(・)ま(・)み(・)の不安でも覗かせてはならないと、努めて明るく、はっきりと話す。


「私は魔力の回復に努めたいので、申し訳ありませんが、食事を取ったら休ませてもらいますね。

準備は明日の昼過ぎから始めます。」


カレタカが了承すれば、彼女は早速リュックを漁り携帯食を取り出すと、ポリポリと齧り出した。

何らかの食材を練り合わせ、水分を抜いて固くした小指くらいの棒状の何か。見た目からして美味そうではない。そもそもあれは食べ物なのか?

時折水をコクコクと流し込みながら、黙々と小さな棒を削り取っていく姿は、まるで燃料石を盗み齧る火鼠のようだ。食事の風景には全く見えない。


携帯食に馴染みのないカレタカは、申し訳無さそうに言った。


「長く話し過ぎたな。飯を作る間がなかった」


水を片手に、ノラから貰った携帯食を咥えて、ピコピコと上下に遊ばせていたアリシアが返す。


「飯なら昼に食ったじゃねえか。小洒落た香が匂う中、ドリンク付きで。ここは森のレストランかっつうの。流石に夜までそんな贅沢は頼まねえよ」


毎日朝晩ではないが、煮炊きして飯を食うのが当たり前の彼には少し驚きだったが、作らなくて良いことがわかると、吊るしていた干し肉を囲炉裏の縁に置き、一つを咥えて囲炉裏を離れる。


「せめて肉くらい食え。適当に食ったら休んでもらって構わない。身体を拭くならそこの樽だ」


そう言いながら、このどこか牧歌的で柔らかい温もりを感じる天幕の中で、一際異彩を放つ、鋼鉄製の鎧収納庫(アーマーハンガー)に吊るされていた肩鎧を嵌め込み、固定し始めた。

ただの金属鎧かと思っていたが、どうも違う。

二の腕部分には金属糸で編み覆ったブレードホースがぶら下がり、先は前腕に繋いである。通常のものより更に一回りは大きい肩鎧には、排気口の様な開口部があった。

所々に小さなハッチも付いていて何かを入れる作りになっている。


(魔力供給菅(サプライ)に残渣排出(イグゾースト)?腕に魔動式の擲弾でも仕込んでるのか?有り合わせの鎧かと思ったが、ありゃ違うな。

動くかどうかは知らんが魔導兵か工兵あたりの忘(・)れ(・)物(・)かね…?)


アリシアは、早々に食い飽きた携帯食をノラの口に突っ込み、横から聞こえてくる非難を聞き流しながら貰った干し肉を遠慮なく齧っていたが、武装を整え始めたカレタカに気付くとじっと観察をしていた。


鎧を嵌め、腰回りにカチャカチャと小物を付け準備を終えたカレタカは、片刃の欠けた斧を手に取って外に向かう。


「朝には戻る」


そう言い残して彼は天幕を出て行った。


読んで頂きありがとうございました。


ダーク、シリアス要素が強いとの意見を良く頂いていましたので、キーワードに追加してみました。

キーワードって、ある意味内容作るより難しいですね。

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