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カティナ

閲覧ありがとうございます。

お暇ならぜひ読んでいってください。

訪ねながらアリシアは考える。


未開の森の中にあった誰も知らないであろう村、もの言わぬ獣達が佇む草原、そして目の前の片腕のない大男。

年のわりには色々と外を見て回ってきたつもりだったが、ここまで読めない展開には出会ったことがない。


改めて男を見れば、やはりサテライトやコロニーでも殆ど見たことがない風貌だ。


まず何より大きい。2mに届くんじゃないだろうかと思う体躯。

そして自分で刈り取ったと思われる赤毛の短いソフトモヒカン風の頭だが、後頭部は長く残していて、長さがまちまちな編み込みのドレッドになっている。肩から肩甲骨あたりまで伸ばし、木や金属のリング、細い布などが一緒に編み込まれていた。

その中に1本、アリシアの腰まである髪と同じくらい長い、金と銀の鋼糸らしき物と一緒に編んだ一際太いドレッドがある。


腰丈のチュニックと緩いカーゴパンツを身に付け、左腕に金属鎧のような義手を嵌めている。

昨日は肩から嵌めていた様だが、今は肘から先だけを付けている。無いのは肘から先だけで、鎧を腕全てに装着していたのは盾変わりなのかもしれない。


粥を口に運びながら、隠すこともせずジロジロと物珍しそうな目で眺めていると、


「おまえは…遠慮のない…女だな……」


と、少しだけ困ったような顔をして、それから男はゆっくりと語り始めた。


「俺達は…カティナと言う一族だ……。古くから…街には属さず…大地の…精霊が、赴くままに従い…、獣と共に流れ…移り歩いて…生きている……」


やはり流民民族だったか。と、アリシアは思った。話から、今ではかなり珍しくなった、精霊信仰を持っているようだ。


「…俺はカレタカ。……一族の……族…長だ。」


少し躊躇するように名を明かす。

族長、と聞いてノラは話に割り込む。


「あの……、他の方は?」


少し黙ったあと、先程より重たくなった声で答える。


「皆…、死んだ…」


しまった。と、ノラは自分を叱責した。

良く見れば大体ニ十半ばくらいの顔立ちだ。長にしては少し若すぎる。

任されて長になったのではなく、彼しかもういないから、長に()()()()()()()のだ。


カレタカを残して全員死んだと言う事実は、出会ったばかりの他人には重すぎる。

掛ける言葉が、建前すら一つだって出てこない。

巫女という立場もあってか、余計に何と言っていいか分からなくなってしまい、眉を八の字にして複雑な顔をしていると、カレタカはそれを察して言葉を続ける。


「気に…するな。とても悲しい事だが……、流民には…ままあること…だ」


死んだ、という言葉にアリシアもピクリと反応した。

心中を察してやりたいが今は何より情報が欲しい。傷口を開くことになるだろうが、せめて抉ることはすまいと、静かに尋ねる。


「理由を、聞いても…いいか?」


その言葉を聞いたカレタカは、何かを思い出したかの様で、瞬間、目に強い火が灯る。

しかし、その火を隠すように瞼を閉じ、感情を出さないように答える。


「人狩りだ」


そっと瞼を開け話を続ける。消したはずの火がチラチラと目の奥で揺らいでいる。


「もう…何年前になるか…、数えてもいないが…、俺が…十ニ…の時、人狩りが…来た。軍隊だった……」


「カティナは…戦部族とは違うが…家族に矛が向けば…皆で立ち向かう……。奪うことはさせない……。守るか……死ぬか、だ…」


「戦いの中で…、俺は母と共に…崩れた家の、下敷きになった……。動くことが出来ず…瓦礫の隙間から…皆を見ていた」


「母に覆われ…動くことも…声も出すことも出来ず…皆が倒れて行く所を…見ていた……」


相変わらずゆっくりな口調だが、言葉に隠しきれない殺意が乗っている。真っ直ぐに見据えていた瞳は、いつしか彼女たちを見てはいなかった。


カレタカの左拳がミチミチと音を立て絞まっていく。


「やがて静かになり…母の力を借りて…瓦礫から這い出てみると…もう、皆…息絶えていた。母も…程無くして死んだ」


言葉と共に吐き出した感情を咎めるように、深い溜め息を一つ付けば、また心が読めない静かな口調に戻っていた。


「アリシア……、少し、歩けるか?」


彼女は不意に振られてキョトンとしたが、あぁ。と一言だけ答えた。


「ノラも…付いてきてくれ」


カレタカはそう言って席を立ち、武器を持たずに天幕の外へ出ていく。


後を付いて行くと、そこは昨晩見た、獣の像が建つ草原だった。

星明かりに照らされていた時は、神秘的でどこか神々しくも見えたが、風にさらされ、草に撫でられながら佇む獣達は、陽の下でも寒々しく、酷く物悲しい姿に見えた。


「彼ら達の墓だ。時間は掛かったが…、俺が弔った」


あの像は全てカレタカが彫ったものだった。無骨で荒々しく、これは動物だな、とわかる程度の出来映え。決して上手くはないが、懸命に作り続けただろう事は想像に難くない。


カレタカは昔話を聞かせる様に言葉を続けた。


「カティナは獣から命を授かって、獣に死を与えてもらう」


信仰の話だろうか。二人は黙って続きを待った。


読んで頂きありがとうございました。

未熟なため時間が不定期で、読んでいただいてる方には不便をおかけしています。


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