探索者と巫女
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そちらの話を聞かせてくれ。
その言葉を聞いて、アリシアが寝床から立ち上がり、ヒョコヒョコと足を引きながらノラの横に胡座をかいて座ると、真剣な眼差しで謝辞を述べた。
「改めて昨日の謝罪と、助けてもらった事に感謝を。先走って剣を向けてしまった事、申し訳ない。そして、それでもあたしらの命を拾ってくれてありがとう」
「ありがとうございます」
ノラと共に深々と頭を下げ、ゆっくりと頭を上げる。
男は黙って言葉の続きを待っていた。
背筋を軽く伸ばし、ここまでのいきさつを話し始める。
「都市間を移動するキャラバンに、仕事を兼ねて同行していたんだが、移動半ばで規格外の竜に襲われた。キャラバンはほぼ壊滅で、移動先の都市までは黙って3日はかかる。なんとか近くで避難しようとプローブで探ったらここの反応を拾った。
あたしとノラはそこでキャラバンと別れて、ここから西側の森を抜けてこの村に来たんだ」
事の成り行きを聞いて、男が労うように言う。
「そうか…、竜とはまた……災難だったな…。それに…外縁とはいえ…夜の…森を抜けたのか……」
竜に襲われた不幸と、大森林をここまで踏破してきた事に、呆れとも、感嘆ともつかない息を漏らす。
「名を…聞いても…いいか?」
そこで名を教えていないことを思い出し、紹介を始めた。
「アリシアだ。無所属の探索者をやっていて、専門は特に名乗ってない。殺しの依頼以外なら、護衛から死体漁りまで何でもやる」
シーカーとは生存圏外で活動する者達の事を言う。再び未開になってしまった土地を開拓し、そこで得た情報や資源を売って生計を立てる。
定量的な仕事ではないため定住はせず、仕事を求めて都市を流れ歩く者が多い。
魔獣や憑魔などの魔物の討伐を専門にした狩人や、魔物の巣穴を探しだし調べる斥候、環境調査専門の学者、キャラバンを守る護衛職や傭兵などそれぞれに特化したジョブを名乗る者も多いが、それらも総じてシーカーと呼ばれたりする。
アリシアが喋り終えると続けてノラも話す。
「ノラです。渡り巫女をやっています。アリシアに付いて、”穢れ祓い”と治癒を行って回っていますが、必要があれば祭事や弔事も引き受けます」
巫女と《穢れ払い》とは?
憑魔を殺すと身体は霧散し、媒体となった物だけがその場に残る。が、残った媒体には黒く質量のある靄が残り続ける。その靄を《穢れ》と言い、穢れに人が長く触れていたり、体に取り込み過ぎたりしてしまうと、体に黒い班文が浮かび始めて、そこから壊死を起こしてやがて死に至る。
憑魔になる媒体は、欲が移りやすい貨幣や宝石など、金銭に絡むものがやはり多く、《穢れ》が残っている財貨は総じて《穢貨》と呼ばれている。
その《穢貨》に自身の魔力と術式を用いて穢れを取り払い、再び人が触れるようにする事を《穢れ祓い》と言う。
巫女はその穢れ祓いを生業とする者達だ。
体内で魔力を作り、放出できる人でなければ巫女になる事は出来ない為、なり手は非常に少ない。
巫女は穢れ祓いの他にも、干渉型の魔力を得意とすることから、ヒーリングを行える者も多い。その為、都市では囲い込みが徹底されていて、サテライトなどにはいない事も珍しくはない。
そういった、巫女が不在の街を転々としながら、穢れ祓いを行って回るのがサーキットライダーである。
金払いの良いパトロン探しや、逆に専属雇用を嫌うが為だったりと、流れる理由は様々だ。
簡単に身の上を話し終え、アリシアが話を締める。
「と、まぁこんな感じだ。助けを求めて這う這うの体でここまで来たはいいが、村はこんなだし、先にはあの獣の像。で、極めつけはあんただ」
話の内容を咀嚼しているのか、じっと静かに聞いていた男を見つめて言う。
「人気の廃墟に残っている、片腕だけで棒切れみたいに斧を振り回す大男。とんでもなく強いが、どうやら敵でも憑魔でもないらしい」
一旦話を区切り、目の前の鍋に目を落とす。
まだ温かそうな湯気をゆらゆらと上げていた。
「うまそうだな。頂くぞ」
おもむろに腰を上げて、水を飲み終え空にした椀に粥をよそうと、口に運びつつ男の目を見据えて尋ねる。
「あんたと、ここの事を教えてくれるか?」
男は、あぁ…。と答えながらも、暫しの間、目を閉じて思案していた。
読んで頂きありがとうございました。
余談ですが、投稿の際に作者名を変えると名前のリンクが付かなくなるという事でしたので、作者名をアカウント名に戻しています。
ジョン改め、徳田新之助です。
以降も宜しくお願い致します。




