ばいばいげぇむ~のれん58歳~
「…今度からはちゃんと消費期限を見て下さいよ?」
やっぱり怒られた。
そりゃ怒られるよな。
売り物の弁当を15個近くも捨てられたらたまったものではない。
店長代理はプンプンと怒りながらも破棄された弁当のひとつを拾い上げて普通に食べていた。
おかずが片寄ってしまっていたが食べられるのだから、売り物にはならなくても食べる分には問題ない。
のれんは複雑な思いでそれを眺めるとペコリと頭を下げてカウンターへと戻った。
強盗騒ぎがあったとは思えないほど店内は静けさを取り戻していた。
客はすっかりいなくなり、店内ではかずまさんがクリーナーをかけながら、私の視線に気付いて苦笑いをしている。
カゴに入れた弁当にも気付いていたようなのだが店長代理には黙っていてくれた。
お陰でどさくさに紛れて半分は店の棚に戻す事に成功していた。
「いや~まさか強盗が入るなんて…災難だったにゃ」
またか…ここ最近よくある事だった。
「…今回もあんた達の仕業なのかい?」
頭に直接響く謎の声に脳内で応える。
いわゆる幻聴というやつだろう。
この2~3ヶ月ほどずっとこの声に悩まされていた。
「おいおい、何でも俺達のせいにされちゃ困るにゃ。…まぁ、俺達のせいだけどにゃ♪」
何が可笑しいのかケタケタと笑っている。
「消費期限切れ前の弁当を大量に捨てたのは、のれんちゃんのミスだにゃ。それは断言してやるにゃ」
「はいはい、それはどうも…」
強盗騒ぎを起こさせたのは、どうやら彼女(?)のお友達の仕業らしい。
「あのアプリで勝ち続けてるのも、あんたの仕業なんだろ?」
彼女はフフン♪と笑うと、
「俺達の楽しみは不幸の収集だからにゃ~…最高まで登り詰めた人間がドン底に落ちる姿は最高だにゃ♪」
…心底嬉しそうである。
あのアプリというのは『ばいばいげぇむ』というもので、私は10日目くらいまでで毎回失敗していた。
「で、どこまで登らせてくれるんだい?」
「ん~本当は教えちゃいけないルールなんだけど、のれんちゃんは可愛いから教えてやるにゃ♪」
彼女はどこまでも楽しそうである。
「特別ステージまでは何を選んでも進めるにゃ。後は…運次第にゃ!」
特別ステージ…?
「まぁ、よく分からないけど期待しておくよ」
頭の中でこんな会話を繰り返しているとは…
リストラされた事がショックだったのかもしれない。
どうせ妄想なのだろうと思ったのだが、
のれんも難なく24連勝を達成したのだった。




