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ばいばいげぇむ  作者: 硝子の騎士
27/41

ばいばいげぇむ~かずまさ23歳~

ドッキリか?

カメラは何処にあるんだ?


思わず店内をキョロキョロと見回してみたが、どうやらドッキリなどでは無かったらしい。


そもそも誰をターゲットにしたドッキリなのかすらよく分からない。


自分の目の前で、強盗がドアの方に釘付けになって棒立ちになっている。


相手が刃物を持っている以上、長い棒か飛び道具で対処するのがセオリーなのかもしれないが…


で、俺は手にしたコーンポタージュを握りしめると…強盗の後頭部めがけて投げつけた。


投げつけたと言っても距離は1mくらいしか離れていない。

ほとんど殴る、に近い感じだが…喧嘩もした事がない細腕で殴りつける自信がなかったし、強盗が振り返ってきたら「手が滑った」と言い訳するつもりだった。


ゴンっ!…と鈍い音がして、コーンポタージュは強盗の延髄にクリティカルヒット。

「あぁ!?」

と睨みながら振り返ってくる事もなく、スローモーションのように床につっぷしてしまったのだ。


それからの事はよく覚えていない。


店の奥から飛び出してきた(何処から沸いて出たんだ)男が強盗を取り押さえると、タイミング良く店に飛び込んできた警察官が身柄を確保して強盗を連れ去っていくのをぼーっと見ていた気がする。


事情聴取とかするんじゃないの?

とか、思ったけども、怪我人もいないみたいだし、お金も取られていなかったようで…


我に返った客が数人出て行ったので、じゃあ自分も…と店を出た。


久しぶりに外気に触れた気がした。


結局、自分で投げてしまったコーンポタージュ1本を買って家へと向かう。


「…あ、エロ本買ってない…」


足を止めて振り返ったものの…今更店に戻る気にはなれず、再び歩き出す。


店を出る時、客の中によく見る女子高生と一緒になった。

彼女は店員に何か言われると、顔を赤くしてトテトテとマンションのエレベーターへと走っていった。


…なんだろう、なんだか釈然としない。


あの場所でのヒーローは俺じゃないのか?


俺こそがもっと評価されるべきなのでは?


興奮した頭がようやく冷静さを取り戻していく。


冷静に考えれば考えるほどイライラが募っていく。


独り暮らしのアパートの階段を一段飛ばしで荒々しく駆け上がると、玄関のドアを開ける。


立ち上げっぱなしのパソコンを操作して、いつもの掲示板へと…


そこで指が止まった。


「今、強盗犯を退治しました」

…思わず、そう呟いた。


いや、あり得ないだろ。


誰がそんなネタを信じるというのか?


逆の立場から見れば「こいつ、終わってる」だ。


ストレス発散のつもりでコンビニに行ったのに…

今はこれ以上ないストレスに悶えていた。


何だこれ?何だこれ?何だこれ?


スマホを手にすると、大学の友人に…いや、反応はきっと同じだろう。

毎日欠かさずやっている配信も、今日ばかりはする気になれなかった。


拡散させた「俺つえぇ」の情報に対する冷ややかな中傷の目だけが頭の中を支配していく。


誰かに自慢したい。


でも馬鹿にされるのは耐えられない。


布団の中に頭を突っ込み悶え転がった。


そういえば、日付変わってたな…


ふと、冷静になると…再びスマホを手にする。


『ばいばいげぇむ』


あっさりと15連勝を決める。


…そこには高揚感など微塵もなかった。

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