けんやのため息
「ちょっとレジ頼むわ」
「はーい」
返事を返したのはバイトのかずま。
本人は19歳と言っていたが…高校生なんじゃないだろうか?…まぁ、どうでもいいけど。
俺はかずまにレジを任せると、窓際の親父のところに近付いて行った。
道路に面した本棚の乱れを直しつつ、親父へと声をかける。
「…親父、その格好は一体何なの?」
「やっぱり目立つか、お洒落なジャンバーだろ?」
ニヤリと笑って自慢げに胸を反らしているが…
どう見ても三下のチンピラみたいな安っぽい物だ。
「これから強盗でもやりますよ…って顔に書いてあるみたいだぜ?」
「まぁ、やろうかとも思ってたんだが…それよりも、気付いているか?」
親父は他の客の目を気にするように、少し声のトーンを下げて注意を促す。
…その目の先はお菓子が並んでいる中央のコーナーに立つ中学生風の少年に向けられていた。
「一応これでも店長代理だからね。親父の言いたい事は分かるつもりだよ」
「…ふん、何だ気付いていたのか。相手は子供だし…騒ぎを大きくするなよ?」
親父は完全に、少年が万引きするつもりだと決めつけているような口調だ。
「あんまり店に顔を出すなよな」
お互いに顔を合わせずそれだけを言い交わし、俺は他の棚の商品を整えつつ、その少年への警戒だけは怠っていなかった。
近所の中学生…かな?見かけない顔だな…
眼鏡をかけて真面目そうな感じだけど、受験勉強のストレス発散か…
トラブルは年がら年中起きている。
先日も女子高生グループが店内にあぐらをかいておでんを食べ出し…1時間近くも揉めたばかりだ。
やれやれ…本当に勘弁して欲しい。
少年はカウンターやこちらを伺っているようだし…いよいよ本気でやるつもりなのかと思えたが…
それどころではない騒ぎが起きる事になるとは、この時の俺には想像する事すら出来なかった。




