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自由奔放な猫の如く  作者: 黒田明人
4.軽率の代償
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 あれからも色々なスキルを獲得し、似非魔術師になれそうな感じになっている。

 なのでいよいよ人間に偽装して街に潜入……つまりさ、僕ってどうにもモンスター側の存在っぽいのさ。

 そんな種族も皆無という訳ではないようで、悪魔族とか吸血族とかって存在も居るらしい。

 ただそんな人達は狩られるのを恐れ、人里離れた場所で隠れてレベリングをしているらしい。

 どうにも不利なスタートになる代わり、ステータスは全般的に高くて有用なスキルも多いとか。

 確かに不死族の僕のスキルもやたら便利だし、大抵の攻撃はエネルギーにして吸収出来るし、普段は見えない存在だし。

 たださ、モンスター側の立ち位置とかさ、普通は選べるもんじゃないのかな。

 そんな抜き打ちみたいにされても迷惑だと思うんだけど、ランダム抽選の弊害なのかも知れないな。


≪偽装人間≫を発動して街に入る。


 このスキルの凄いところは、あらゆる体内器官を擬似的に構築するから、冒険者登録も可能なんだ。

 しかもステータスの偽装までやってくれるから、三流魔法使いっぽいステータスとスキル構成に偽装するのさ。

 ただこれ、高レベルの司祭辺りにはバレてしまうようで、今はまだ良いけど先々の街ではきついかも知れない。


 特に王都の教会なんかは鬼門だろうな。


 うっかりバレたら神聖魔法のシャワーを浴びる事になりそうだし、そうなったら飛散してもかなりのダメージを食いそうだ。

 そもそも、僕の存在が発覚したら討伐隊を組織されるだろうし、そんな事になったら折角の冒険者登録も無駄になっちまう。

 なので高レベル聖職関連には極力近寄らないようにして、ある時は人間側、またある時はモンスター側として、日々レベルアップを楽しんでいた。


 もうね、レベルアップが本当に楽なのよね、この種族。


 本来ならチート扱いされそうなぐらいの能力なんだけど、バレたら確実にレイドボス扱いされそうな勢いだ。

 例えばだけど、レイドボスみたいなのに憑依してさ、自分から谷底にダイブするんだよ。

 そうすると痛くも何ともないけどモンスターは派手に怪我する訳で、そのまま死ねば経験値がもらえるってあり得ないだろ。

 だからもう強そうなモンスターに憑依しては、自殺行為でレベルアップって事になっていたんだ。

 そんな訳で人里離れた山奥でのハントが自然と多くなっていったけど、順調なるレベルアップは本当に楽しくて、このままでも良いかなとか思えるようになっていたんだ。


 そんなある日の事。


 ちょっと雰囲気の違うモンスターらしき存在を発見したんだけど、どうにもプレイヤーっぽいんだよな。

 これってもしかして同類さん? とか思ってさ、透明人間状態でしばらく観察していたんだ。


 うわ、モンスターの体液を飲んでいるの? うわぁ、エグい種族だな、こりゃ。

 良かったよ、まだ幽霊みたいな種族でさ。

 そんな吸血鬼みたいな……あれ、そうなのか?


「やあ、良い天気だね」


 いきなり後ろから話しかけると、相当に驚いたようだけど、偽装人間の格好で一般プレイヤーだと思ったようだ。


「お前、見たのか」


 おおっと、攻撃の気配を感じるぞ。

 だけど、人間もどきな僕に攻撃は通じないぞ。

 さあ、どうするどうする。


 うお、はぇぇ……


 いきなり爪が伸びて、僕の人間の皮はあっさりと破られちまった。


「いきなりとは酷いね」

「お前、どうして死なない」


 まあ、ズタズタにされても血なんて構築してないから出ないけど、それを不思議に思われたようだ。


「君、モンスター側の立ち位置って事は、ランダムを選んだんだね」

「まさか、お前も、なのか」

「どうやらそうらしいよ」

「初めてだ、初めて同じ立場の奴に逢えた。こんな種族にされちまって、ずっとボッチだと諦めていたんだ」

「レベルはいくつ? 」

「まだ8だ」

「8でここのモンスターは厳しくないのかい」

「どうやら人を凌駕するステータスのようで、何とか狩りにはなっているが、きついのは確かだな」

「ならさ、パーティを組もうよ。そうしたら楽々狩りが出来るからさ」

「僕はヴァンパイアだが、お前の種族は何だ」

「シマネキって名の精神生命体らしいよ」

「それって相当レアな種族だぞ。確かβでも出たらしいけど、まともに動かせないとか言われていたが、動かせたのか」

「うん、自然に動いたよ」

「なら、改善されたんだな。となると相当にチートな種族のはずだ」

「そうだね。物理攻撃無効だしね」

「それは羨ましいな。ここいらのモンスターは物理攻撃が半端無くてな」

「狩りは楽だぞ」

「レベルはいくつなんだ」

「38だ」

「マジかよ。トッププレイヤーを凌駕してないか? 」

「でもランキングには出ない」

「そうか、やっぱりプレイヤー側とは違うんだな」


 そうしてこいつ……トールって名の奴とパーティを組む事になり、ついでにフレンド登録もしておいた。


 《トールってさ、名前をもじったの? それとも雷神のほう? ……雷神を意識したけど名前をもじったんだ。てか、リアルじゃ雷神ってのが仇名になっていてさ……そりゃまた凄い仇名だな……まあ、リアルの事は今は良いだろ。それより、どうやって狩るんだ》


 そして僕はモンスターに憑依して、トールの前に立つ。


 《おいおい、憑依かよ、そいつは……さあ、好きに攻撃して殺すのだ……マジかよ。とんでもねぇチートじゃねぇかよ、そりゃ……さあさあ……あ、ああ》


 動かないモンスターを攻撃し、トールは楽々退治する。

 驚いて声も出ないようだけど、そういう種族なんだから仕方が無いよね。

 それからも見かけるたびに取り付いて、トールは楽々倒していく。

 なのでレベルもガンガン上がり、レベルが倍になったらしい。


 《うへぇ、とんでもねぇ効率だぞ、これは……僕も経験値もらっているからお得だしね……やれやれ、レベル38とか冗談だろうと思っていたけど、こんな裏技みたいな事がやれるなら、そりゃ当たり前だろ……さあ、エリアボスを倒しに行こう……うへぇ、マジかよ》


 そうして2人でエリアボスを倒し、それぞれに討伐報酬を獲得する。

 残念ながら初ではなかったけど、変なアナウンスの餌食にならずに済んで助かったと思っている。

 それからも狩りをしながら相談し、同じような境遇の奴を探そうって事になった。

 どのみちこんな種族じゃまともにギルドも組めないし、だったら同じ境遇の奴らで組むしかないだろうと。


 レイジとトールの冒険は、こうして始まったのであった。


 ~☆~★~☆


 ふうっ、表層は楽しくやっているが、中から見ているだけってのもつまらんな。

 だけど検証は必要だし、不思議に思わない調整も必要だから、下手に抜ける訳にはいかないんだよな。

 シナリオでは5人集めてギルドのようなのを組むらしいんだけど、確かに普通の世界内存在じゃいきなり精神体で動けと言うのは無理だよな。

 それをβでの事にして、いきなりやれるのを改善されたからって誤魔化すとか、あいつも中々管理としての技量は高いみたいだな。

 もっとも、ログアウトと称する、元の世界への帰還の間はオレものんびり出来るから良いんだけど、あんまり夢中になられると休む暇が無いんだ。


 だからあんまり熱中すんなよな。


 ~☆~★~☆


(あいつ、予想以上じゃないか。まさか、表層をそのままにして、中から調整するとはな。オレはてっきり上からあれこれ調整の必要があるかと思っていたが、あれなら放置しても構わんぐらいだぞ。しかしな、あれで世界内存在ってのは無理が無いか。全く、彼の秘蔵っ子と言われるだけの事はあるな。オレもあんな存在を持てたら、色々と助けになってありがたいんだが、中々見つからん。まあ、この機会を有効利用させてもらうからな。頼んだぞ。さすがに2つの世界を管理するには色々と手が足りなくてな、この際だからそっち方面も試させてもらおうか)


 ~☆~★~☆


 またぞろ管理代行かよ。


 どうやら2つの世界を1人の管理が賄っているようで、リアルな世界のほうが忙しいから、ゲームな世界の暫定管理をしてくれと言われ、またぞろ1人3役な立ち位置になってしまう。

 世界を内包しながら俯瞰の仕事もやり、更には分身のような存在を裡に潜らせての調整と。

 やれるようになったらそれを当たり前にするとか、まるでかつての両親を彷彿させる扱いだな。

 まあ、そこに意趣が無いからこそ、オレは素直に従っているが、あんまりハードなのは止めて欲しいんだけどな。


 やれやれ、結局は夢中になっちまうのか。


 シナリオ自体の調整は不要と言われ、飽きて止めるようならそれも良しって言われていたけど、オレはともかく表層は夢中になったようだ。

 とればその調整も忙しくなるし、世界の不具合の修正もしなくちゃならんし、全ての統括ももちろん必要だしと、休む暇が無いんだよな。

 この世界群のアイテムは中々のレベルのようだし、お土産は是非にも買いたいところなんだけど、その暇が無いってのも辛いよな。


 ~☆~★~☆


(おい、ありゃ何だよ……くすくす、驚いているようですね……ありゃ次期候補にもなれそうなぐらいの逸材じゃねぇかよ……ええ、既に存在は知っておられましてね、交信もあるようですよ……道理でとんでもねぇはずだ……今は何をやらせているのですか……管理代行しながら意識を降ろして俯瞰をやり、ついでのように表層の調整してやがる。全く、とんでもねぇ技量だぜ……ですが、期間は守ってもらいますよ……そう言うなよな。あんな便利な存在、しばらく貸しておいてくれよ……そうはいきません。彼は今、必死で磨いているところでしょうが、まだまだ覚えたばかりの技能です。無理させると精神が破綻する怖れもありますので、決して無理をさせないようにしてくださいね……おいおい、あれでビギナーかよ、末恐ろしいな……頼みましたよ……ああ、潰すとか冗談じゃないな)

 

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