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自由奔放な猫の如く  作者: 黒田明人
1.如月の悪魔
14/476

0014

 

 到着して彼が最初に行った事。


(ステータスオープン)


 神様に少し聞いておいた事が役立ったのと、知識の収集の範疇にファンタジー小説があった事がそれをスムーズに納得させた。

 もっともそれは超常現象研究会の面々の影響もあったかも知れないが。

 彼が行った事、それは名乗りの前に名前を決める事。

 どうやらステータスにはまだ名前が付いておらず、これは誰かに聞かれて答えるとそれがそのまま記入されるようになっているのだとか。

 なので自分なりの名前を決める。

 もちろん、将来的な変更は可能だが、神殿で神様の許可のようなものが必要になるらしい。

 それはつまり婚姻による苗字の追加とか、親の再婚による苗字の変更とかがそれに含まれ、神殿での祈りの後に変更されるのが常となる。

 だからホイホイとは変えられないものなので、彼は最初が肝心と自分で決める事にしたようだ。


 でもさすがにキラーは拙いから、斬る人でキルトかな。


 キルト LV.1 一般人


 HP   300 

 MP   150  


 STR 1

 DEF 1

 DEX 1   

 AGI 1 

 INT 1

 LUK 1


 スキル 無し


 特典 【世界共通言語】【アイテムボックス】


 称号【テラの好意】


 なるほどね……これが表向きのステータスというものか。


 このテラの好意というものが大層な曲者で、どうやら彼は元の世界の神様に気に入られたようである。

 約定で加護や恩恵を付ける事は出来なくても、称号ぐらいなら許される。

 それを逆手に取って、かなりチートなあれこれを付けたようである。

 まず一番の効果はテラの好意の内容の完全隠蔽だが、これにはちゃんとした理由がある。

 他世界の経験を反映させるという効果を隠す目的。

 異世界人に他世界の情報を渡す訳にはいかないと、本人以外には見えないようにしたと言うのがその言い訳になっている。


 彼は体質変化の影響もあり、過剰なぐらいの鍛錬をしていた。

 その経験をそっくり上乗せするのが第2の効果だ。

 はっきり言うなら彼の元の身体を、異世界バージョンに転換させると言えばいいか。

 しかも悪辣な事に、このテラの好意は最初は効果を及ぼさない。

 本人にしか見えない(適用しますか? y/n)を決めないと効果が出ないのだ。

 なので今の彼は見てくれは同じでもスカスカな身体であり、元の力の1欠片も出ない。

 チェックを入れて一晩眠れば、翌日には最適化が成されるという用意周到な事になっている。

 だから召喚当日の検査では効果が出ないのだ。


 それはともかく。


 あの神様は、あの手この手で現地の神様の裏を掻き、彼を密かに庇護しようというのが目的で、後々には存在の返還すら求めるつもりがあるようなないような。

 ともかく途中で消えない事を願ったようである。

 この異世界では人を殺すとHPに300、MPに150の追加サービスが付き、それと共に1000の経験値が得られる。

 なので彼の今までの経験をそれに適用し、過去の殺戮経験の結果を追加サービスと経験値に転換したのだ。

 これが第3の効果であり、彼は仕事と出向で18人殺していて、それ分の数値がテラの好意内に反映されている。


 そして最後の効果だが、今までの経験を現地のスキルに反映させるというもの。

 彼はドスや刀や銃の扱いを組で学んでいて、そのついでに格闘術もあれこれ学んでいた。

 その中には柔道や棒術、拳法などもあり、出向での経験もあってかなり熟練していた。

 後は殺しにもドスや斧を使い、またナタの扱いにも長けていた。

 更に言うなら猪の解体はプロ並ぐらいに熟練していて、猟師に付いて山に入った事も何度もある。

 猟師の邪魔にならないように、気配を鎮めて隠れる術も自然と学び、野生の獣とのやりとりで自然と身軽になっていた。

 役どころの下手な釣りキチの関係で、仕掛け作りなどもやるうちに、毛ばり作りにはまったりして、手先も器用であった。

 すなわちそんなかつての経験のあれこれをそっくり、異世界のスキルに適用したのである。


 なので彼の真のステータスはこうなっている。


 HP   300+5400 

 MP   150+2700  


 STR 1+65   

 DEF 1+96    

 DEX 1+74    

 AGI 1+52    

 INT 1+62    

 LUK 1+98 


 スキル 【剣術LV.3】【槍術LV.2】【斧術LV.3】【体術LV.6】【棒術LV.4】【解体LV.5】【算術LV.8】【察知LV.7】【隠蔽LV.6】【解析LV.3】【吸血LV.5】【完全鑑定】【精神耐性】【物理耐性】【痛覚耐性】


 特典 【世界存在言語理解】【アイテムボックス】


 加護 なし


 称号【テラの好意】



 最低の数値が53となれば、これは既にAクラス冒険者すら凌駕している数値。

 一般人が1と言う事もあり、少し身体を鍛えている若者でも1桁内に留まっている。

 城の平兵士で8~15であり、隊長クラスでやっと30~50といったところ。

 しかもそれなりにレベルを上げての数値なので、レベル1の彼とは成長率からして比べ物にならない。


 元々の彼は一般人のそれだったが、覚醒と言われる彼の体質変化に伴い、急速に身体能力が向上した結果、普通の人間とは比べ物にならない力を身に付けていた。

 更に過剰なまでの修練でそれが顕著となっていて、それがそっくり反映されればレベル1でワイバーンすら相手に出来そうな数値となる。


 この世界のレベルアップによるステータスの増加は、3~15ポイントの増加となる。

 軽作業で上がれば3ポイント、激務で上がれば15ポイントという具合になっているが、その事は誰も知らないようだ。

 それと言うのも人間は連続で動けない生き物であり、経験値0の段階から次のレベルアップまでひたすら動くなど無理だからである。

 ただ、稀に過去の戦争でひたすら戦い続け、後に英雄となった者などはこれが適用されたようだ。

 戦ううちに強くなったと伝説に残っているのはそれが原因と思われる。


 ステータスの振り分けは自動だが、力を使うとSTRに多めに振られ、頭を使うとINTに多めに振られるといった事になっているようである。

 この世界のレベルアップは10桁均等方式となっていて、レベル9までは獲得1000で上がる。

 10~19までは2000で上がり、20~29までは4000で上がる。そして次は8000、16000といった具合になっている。

 それにしてもドラゴン1匹の獲得経験値が5000なのに比べて、人間1人が1000と言うのはとても多い数値だ。

 彼はもしかしたらこの世界の神様は、人が嫌いなのかも知れないと思った。


 それはともかく。


『おお、勇者様』

「おい、なんて言っている」

「おいおい、言語理解取らなかったのかよ」

「嘘、信じられないわ」

「あり得ないわよ、そんな事」

「おお、勇者様って言ったな」

「あれ、君は? 」

「どうやら巻き込まれたみたいだ」

「え、そうなの? 」

「試しに唱えてみたんだ。ステータスオープンって」

「うおおお、やっぱりそういうのがあんだな。よし、ステータスオープン……おおお、出た出た」

「勇者ってなっているわね」

「オレもなってるぜ」

「アタシも勇者かぁ」

「オレもだぜぃ」

「僕は一般人」

「あうっ、ならやっぱり」

「しかしよ、3つしかねぇからよ、言葉は現地で覚えりゃ良いと思ったんだ」

「何を3つなの? 」

「まずは初期ステータス10倍だろ、んでもって獲得経験値2倍、それと獲得ポイント2倍さ」

「獲得ポイントって何よ」

「お前、説明見てなかったな。そいつはよ、レベルアップで貰えるポイントを2倍にするんだよ。つまりな、5ポイントだと倍の10ポイントって事で、成長が早くなる特典さ」


 確か3~15って言ってたな。

 つまり、ノンストップで殺せば15入り、のらくらと殺れば3ポイントか。

 こいつがどんな戦いをするかは知らんが、ノンストップならいきなり30ポイント入る訳か。

 まあ、人間だから最初は良いにしても、レベルが上がるとそうでもないのかな。


「その引き換えが通訳必須の生活か、痛し痒しだな」

「あんだと、一般人」

「だってさ、狩りをしながら学べないし、学んでいる間はレベルアップ出来ない。となるとどちらがお徳かって事でしょ」

「あはっ、確かにそうね」

「んなもんちゃちゃっと覚えればいいだけさ」

「アンタ、英語のテスト何点だっけ? 」

「うげっ、そう言えば」

「ふむ、英語もドイツ語も中国語も無駄になったか、残念だね」

「あら、意外ね」

「ただのおたくじゃなかったか」

「アタシは悪魔って聞いたわよ」

「私は中二病って聞いたわ。あら、ごめんなさい」


 酷い言われようだが、事実はもっと酷いのかも知れないな。


「いや、今はもうあんまりうずかないんだ」

「でもその眼帯はアレよね」

「ああ、もうこれも要らないか……よしっと」

「うわ、迫力だわね。どうしたの、それ」

「ナイフで斬られたんだ。苛めっ子にさ」

「ああ、あの事件って君が被害者だったのね」

「全治半年は長かったさ」

「そうだったんだ」

「おい、お前は何を3つにしたんだよ」

「言葉とアイテムボックスと……「ああああ、忘れてたぁぁぁぁ」

「うっ、アタシも忘れてたわ」

「ああああ、忘れてたぁぁぁ」

「おい、お前、オレ達の荷物持ちに雇われねぇか? 経験はオレ達が稼いでやるからよ」

「ああ、それが良いわ。ねぇ、お願い出来るかな」

「すぐに倒しに行けとは言わないでしょ。まずは訓練だろうし、それからの話でしょ」

「それはそうだけどよ」

「ほらほら、やきもきしているよ。ちゃんと対話しなきゃ、勇者様」

「あうっ、そうだったわ」



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