0013
グロ注意
手順の説明の後、いきなり開始となる。
『ミキサーに入れた後、コンクリートと混ぜてドラム缶だ』
『意外と簡単なんだね』
『ほお、動じないか』
『確かにドロドロになっているね』
『これをいきなり平気で見れる奴も珍しいな』
『メンチカツになりそうなんだけど、料理にしてみない? 』
『はっはっはっ、まさかここまでとはな』
『生は美味しくなくてね、一度食べてみたかったんだ』
『生の経験まであるのか、日本人にしておくのは惜しいな』
『でも混ぜるなら血抜きをしないと水分が多すぎて、セメントの量が無駄になるよね』
『ならばどうすればいい』
『簡単さ、血を飲めばいいだけさ』
『その死体はさっき死んだばかりだ。処理はやれるな』
『新鮮なほうが美味いんだけど、この際仕方が無いか』
ううん、やっぱりあんまり美味しくないな。
猪の血よりは美味いけど、やっぱり生きたままの味には及ばないか。
それに、心臓が止まっているから出ないんだよな。
絞ってみるか。
『確かに小竜鬼と言うだけの事はある。あれはある種の化け物だな。あんな存在が日本に居たとは』
『しかし、あれなら見込みはある。うちの組織で引き取れないか? 』
『如月の秘蔵っ子らしい。付き合いがあるから無理だろう』
『3年、いや、1年でもいい』
『染めるのか』
『体験だ』
『珍しいな、お前がそんな』
『ある意味、同類だからな』
よし、思った通り、水分を抜いたらセメントの量がかなり減ったな。
後はサンドイッチ工法だ。
生コンを少し流し込んで、ミックスを流し込んで、また生コンで決まりと。
『終わりました、師父』
『うむ、ご苦労だった』
よいしょっと。
『何処に運べばいい』
『驚いたな。そいつはざっと200キロはあるんだぞ。そうだな、歩けるようなら運んでくれ』
『分かりました』
小竜鬼と呼ばれていた彼は、そのうちに吸血鬼に変わりそうである。
怪力で血を吸う伝説の存在そのものだからであるが、それはあくまでも彼らの中での事。
約束の期日まで無難に過ごし、その中で何件か殺しの案件を請けて軽くこなし、彼らの中で彼の印象は日々向上していった。
どんなに残酷な場面を見ても平然として、どんな残酷な指令でも平然とこなす。
財布を寄こせといえばあっさりと渡し、メシ抜きと言っても平然としている。
そしてそれを恨みに思う事もなく、当たり前に対話していく。
冗談を言えば普通に笑い、酒の付き合いも平然とこなす。
漏らすなと言えばどんな些細な事も漏らさず、飲めと言えば泥水でも飲む。
そんな存在、探しても中々得られないと、彼らはかなり気に入っていた。
そしてそれも終わりとなる。
「ご苦労だったな。腹も減ったろう、何が食いたい」
「お好み焼き」
「さしものお前も肉はきついか」
「あれっ、ミックスにしてくれるよね」
「おいおい、マジかよ」
「キャベツとか肉とかタマゴとか、混ぜると思い出すでしょ、あのミンチ、くすくす」
「うげぇぇ、言うなぁぁぁ」
「どっちが度胸試しか分からんな。おい、ケンジ、情けないとは思わんのか」
「そう言うならお前も食うんだな、お好み焼き」
「何年前の事だと思ってる。もちろん食うぞ」
そうして迎えの帰り道、お好み焼き屋に寄る事になる。
大盛りで頼んで混ぜて混ぜて……
「あ、トマトジュースください」
「はーい」
「やれやれ、これが出向帰りの奴の態度かよ、前代未聞だな」
「キャベツは骨とか筋肉とか、タマゴは脳みそ、そして人肉、うん、感じ出てると思うよね、くすくす」
「うっぷ、くそ、てめぇ」
「そこまでか、これは参ったな」
「真っ赤な血潮でカンパーイ……ゴクッゴクッゴクッ、はぁぁ、美味しいねぇ、くすくす」
「おい、先に出るぞ。オレのも食っていい。金は払っておくからな」
「ずりぃぞ、タクヤ。うう、オレのも食っていい」
やれやれ、軟弱な事だよな。
『もしもし、サブだけど、あいつらトラウマ治ってないよ……そうか、もう数年過ぎるが、まだだったか……軽く水向けたら食欲が失せたらしい……あいつらが情けないのか、お前が優秀なのか。まあいい、ご苦労だったな……楽しかったよ、くすくす……そうか。うむ、それぐらいでなくてはな』
そして翌日は中学最後の学年の始まりである。
既にマンションは購入され、今はユウヤさんが住んでいる。
どうにも仮想現実が気に入ったようで、近くに別のマンションを購入する手筈だ。
そして彼に人生の転機が起こる。
かつてクラス再編の影響で、隣のクラスから4名が編入された。
つまりこれは自業自得だったのかも知れないと思った彼だった。
彼が苛めっ子4人と苛められっ子3人を排除しなければ、彼らが編入する事も無かった訳だ。
自分の行いでそうなったのなら、素直に従うしか道は無いと、彼は早々に思い切った。
その出来事が起きた際、彼が思った事はそんな事だった。
新学期の最初のホームルームが終わり、その日はそのまま帰るはずだった。
カバンに教科書を詰めている彼の横で、隣のクラスから編入してきた4人が放課後の予定の事で話し合っていた。
彼らは幼馴染であり、そのせいか編入も揃ってになったようだけど、それも作為だったのか?
彼は席を立ち、何時も持ち歩いている小袋を肩に提げ、そのまま教室を出ようと思った矢先、身体が動かなくなる。
それは話し合いをしていた4人も同じだったらしく、戸惑いの対話のうちに意識を失う事になる。
気付けば真っ白な空間の中。
彼は神様を名乗り、君達は勇者として召喚されたのだと告げる。
騒ぐ4人の傍らで、早々に思い切った彼は静かに佇むばかり。
そして願いの話を聞くに及び、速やかにそれを選んでいった。
後、アレンジの要求が通れば良いと、それだけを思いながら。
4人組は散々騒いだ後、遂には諦めて運命を受け入れる事になる。
そして前向きな対話の後、あれやこれやと各自で決めて特典を選んでいく。
そんな4人の傍らで静かにその様子を見ている彼に興味を持ったのか、4人とは別に個人面談にしたようだった。
彼らが準備を終えて固まった後……
「個人面談というのも親切な話だが、止める訳にはいかないんだろうね」
『悪いね。それで、3つの願いはどうするね』
「1つ、1月遅れでの合流。1つ、アイテムボックス。1つ、世界の存在の言語理解。これで頼む」
『アイテムボックスに色々入れて渡りたいんだね』
「預金数億を放置するのももったいない話だ」
『そうだね、それぐらいなら構わないよ』
「記憶や知識を消すとか言わないよね」
『くすくす、それは無いよ』
「必要なら仕方が無いが、可能なら残しておいてくれ。ちょっと特殊な存在なのでな、忘れると不都合がある」
『ふむ、確かに欲求の原因が分からなければ、下手すると壊れるかもね』
「追い出されるんじゃないんだな。これは契約か、なら仕方が無いね」
『追い出しはしないよ。君も含めて大事な存在なのだから』
「ありがとう、ではよろしく」
(怒るでもなく、悲しむでもなく、喜ぶ事も無く、ただ単に事実を受け入れて先を考えるか。本当の事を言うと、君のような存在の放出は嫌なんだけど、これはもう決まっている事なんだ。残念だけどね。それにしても、まさか両親の死で覚醒するとは思わなかったよ。全く、惜しい人材だね)
関係者各位へのお別れの言葉。
それと共にあらゆる品の購入に走る。
専用服の追加も更に増やし、可能な限りの予約を入れる。
それと共に場外で大穴の予想もやりまくり、先を見ないような荒稼ぎに走る。
預金とそれら全てを使い尽くすつもりの大量購入に、別れの話が嘘ではない事を表していた。
「断れねぇのかよ」
「今まで恩恵受けといて、今更嫌とは言えないよね。もっと先の話と思っていたのに、それが残念だよ」
「お前は幹部候補だぞ」
「さすがに魂だけ持って行かれても困るからさ、身体も持って行って良いだろ。ダメなら身体はここに置いておくけど」
「そうじゃなくてだな」
「つぶやきで死ぬはずだった人達、それにキイチさん。それら全員の命と引き換えと思って欲しい」
「うっく」
「それにさ、こういう事態って大昔にもあったんだよ。ほら、かぐや姫とかさ。だから閉じ込めても無駄になるよ」
「やってみねぇと分からねぇだろ」
「それが分からない僕だとでも? 僕の予測の先を行く存在をどうやって防げば良いのさ」
「くそぅ、そんなのってありかよ」
「他の人達はもう先に進んでいる。僕はこれでも無理を言って少し先延ばしにしてもらっている。別れを伝える為に」
「それってよ、不利になるんじゃねぇのか」
「それがどうしたの。黙って消えるぐらいなら、向こうで即座に自殺するよ。魂だけになれば戻れるかも知れないしね」
「オレ達の為にわざと不利を選んだってのなら、ここはもう送り出してやるしかねぇか。けどな、絶対戻って来いよ。いいな」
「可能な限りそれは探るよ。全存在を滅してでもね」
「くっくっくっ、悪魔が解き放たれるな。あんまり殺してやるなよ」
「命が軽い世界でありますように、くすくす」
「やれやれ、楽しそうだな」
「どうせ行くなら楽しまないと。さあ、偉そうな事を言うようなら、皆殺しにしちまうか、クククッ」
「あんまり予言をやり過ぎたせいじゃないのか? 」
「そうかもね。でも別に良いさ。それより、僕の殺人ライフはこれから更に広がるんだ。楽しみだよね、くすくす」
「そうだな。追い出されたら戻れるかも知れないか。よし、オレが許す、ガンガン殺って来い」
「サー、イエッサー」
そして遂にその時は来る。
「ごめん、魔界からの召喚って事にしちまった」
『みんな信じてましたね』
「けど、本当に良いのかな。僕は止まらないよ」
『それは向こうの問題です。私は約定のままに送り出すだけ』
「もし、追い出されそうになったら戻してくれる? 」
『確約は出来ませんよ』
「うん、それで良いよ。ありがとう、神様」
『さあ、送りますよ』
「はい」
(残念ですが、君はおまけのような存在。ゆえに加護は付けられません。ですが、せめてこれぐらいは……)




