6 プラネタリウムにきらめく
ラストライブから、数日後。
「星、見に行くか?」
放課後、校門の前で俺は麻子を誘った。
「星?」
「プラネタリウム」
少しだけ考えてから、麻子は頷いた。
「……いいよ」
街の小さな科学館。
子どものころに一度来たきりだった。
館内はひんやりとしていて、外の空気とは切り離されたみたいに静かだった。
チケットを買って、暗いドームの中に入る。
席に座ると、ゆっくりと照明が落ちていった。
やがて、天井いっぱいに星が広がる。
無数の光。
手を伸ばしても届かない、遠い遠い場所。
「きれいだね」
麻子が小さく言う。
「ああ」
俺も同じように見上げる。
そのとき、ふと思う。
あの夜の歌。
綺堂さくらが歌っていた、“たった一人の観客”。
この星空みたいに、
たくさんの人に届いているようで――
でも本当は、
ただ一人に向けられていた光。
しばらく、何も言わずに見上げていた。
「ねえ真司」
「ん?」
「……あのときの話、覚えてる?」
麻子の声は、暗闇の中で少しだけ柔らかく聞こえた。
「どの話?」
「アイリーン・アドラーのこと」
俺は、少しだけ笑う。
「覚えてるよ」
「どう思う?」
あのときと同じ問い。
でも――
今なら、少しだけ違う答えが出せる気がした。
「たぶんさ」
ゆっくりと言葉を探す。
「勝ったとか負けたとかじゃなかったんだと思う」
天井の星が、静かに流れていく。
「自分にとって一番大事なものを、ちゃんと選んだだけなんじゃないかな」
口にしてから、少しだけ息を吐く。
「全部を手に入れるんじゃなくて、ちゃんと一つを選ぶっていうかさ」
隣で、麻子が黙って聞いている気配がする。
「それって、けっこう勇気いることだよな」
言いながら、自分の中で何かがはっきりする。
遠くにあるものを追いかけるのは、楽だ。
そこには現実がないから。
でも、
手の届く場所にあるものを選ぶのは――
たぶん、もっと勇気がいる。
ふと、横を見る。
そこにいるのは、麻子だ。
そういえば、初めてのデートはすれ違いで散々だった。(ドキドキサマーデート短編 青いガーネットの奇跡に収録)
あの時、麻子と2人で見上げた夕方前の空。
麻子は天然プラネタリウムだったら良いのに
というので、俺は初デートなので少しはロマンチックなことを言おうと思って、
昼間でも、星の光は届いてるんだぞ。太陽の光で分からないだけで。
って、言ったっけな。
真司はあの夏の夕暮れ前を思い出していた。
特別なことは何もしていない。
ただ、星を見上げているだけ。
でも――
その横顔が、
どんな星よりも、はっきりと目に映る。
その目が、光を受けて、きらりと揺れる。
ああ、と思う。
俺はずっと、
遠い星ばかり見ていた。
でも、
本当に大事なものは――
ずっと、ここにあったんだ。
気づくと、俺は手を伸ばしていた。
暗闇の中で、そっと。
麻子の手に触れる。
「……え?」
小さな驚きの声。
一瞬、引っ込めようとしたけど、
やめた。
そのまま、軽く握る。
麻子は、少しだけこちらを向いた。
暗くて表情はよく見えない。
でも――
ほんの少しだけ、ためらったあと、
その手が、そっと握り返される。
強くはない。
でも、確かな温もり。
星は、相変わらず遠くで輝いている。
でも今は――
それよりも、
この手の中の温かさの方が、
ずっと現実で、
ずっと大切に思えた。
俺は、もう視線を逸らさなかった。
遠くじゃなくて、
ちゃんと、ここを見る。
それが、
俺が選んだものだった。
読んでいただきありがとうございます。
今回で完結です。
アイデアを出してAIが書いたものを加筆修正しました。
推し活が流行っているようですが、ファンになるのは良いことかも知れないですね。
私は最近では若い頃の推しも熱が冷めて、趣味をしています。まあ、歌は好きですが。聴く専門ですが。




