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VORTEX (ヴォルテックス)  作者: 九川 滉
第1章 導入

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7/10

1-01-07 悪友3人


確かに目の前にあったものが、忽然と消えてしまった。

この結果をある程度は期待して試してみたものの、ほぼダメ元だ。

実際に起こったら起こったで、驚かずにはいられない。


「よーっす、リュウ」


この指輪の有無は、リュウの意思に連動している。

今は試すつもりはないが、現れるように念じれば、再び出てくるはずだ。


「ん? 聞こえてねーのか?」


仮にそういうシステムが成り立っているとして、このシステムの目的はなんなのだろう。

リュウに何かを伝えようとしているのか。


見えているものだけが真実とは限らない?

気の持ちようによって見え方が変わる?



リュウが先の異常現象についてあれこれ考えている間、周りへの注意が(おろそ)かになっていたらしい。


「おーい」

そんな緩い声掛けに気付くと同時に、脳天に全く緩くない衝撃を食らっていた。


「…………どうした?」

予期せぬ衝撃だったが、リュウは慌てず騒がず、声の方へと向き直る。

誰に何をされたのか、予想がついたからだ。


「どうしたはコッチの台詞だよ。ずーっと黙りこくって」

「下向いて寝ぼけてるから、目を覚ましてあげたんでしょ」


悪びれることもなくそう言うのは、制服を着崩した2人の少女。

ともに保育所で育ち、当時からユイとつるんでいた2人組。

リュウにとっても幼馴染ということになるだろう。


先にリュウに声をかけ、そして頭を殴ったのが、鈴下(スズカ)雅弥(ミヤビ)

恵まれた体格と日焼けした肌が目立つ、見るからに体力系の女子。


もう一方は、安生(アンジョウ)理世(リゼ)

悪気なくやっているミヤビと違って、こちらは今の状況を面白がっている。

ミヤビと比べて頭脳系で、彼女がミヤビを上手くコントロールするような関係だ。

今の言葉からしても、さっきのはリゼが発案したに違いない。


「……そうか。そりゃどうも」

ここで言い争っても得はないので、言い分をそのまま受け入れる。


口先だけでの礼に満足したわけではないだろうが、2人はそれ以上は言わずに自席に着いた。

朝礼の時刻が迫っているからだ。

リゼはリュウの1つ左、ミヤビはその前。

ユイがリュウの2つ左なので、その世話係という名目で彼女達の席は近くに集まっていた。


廊下から担任の教師の足音が聞こえてきたのを合図に、席を離れていた学生達が移動し始める。

そのバタバタという音にまぎれるくらいの声量で、顔を近づけたリゼがささやく。

「何が”マジ”なのか、後で聞かせてもらうから」

「……」


楽しげな表情を崩さないリゼと対照的に、リュウはわずかに顔をしかめた。







指輪を出さないようにしながら4コマの講義を終えて、放課後。

学生達がバラバラと教室から出ていく。


放課後の過ごし方としては、修学棟の体育館や屋外運動場でスポーツに励んだり、中央部より少し外に並んでいる店で時間をつぶすのが一般的かもしれない。

ただしリュウは基本的に、さっさと家に帰っている。


「また明日、カガミ」

「ああ、じゃあな」

いつもの挨拶をしたメグリが教室を出るのを見送って、リュウも帰ろうとすると。


「ねえ、ちょっと」

隣の席に座ったままのリゼに呼び止められた。


「……やっぱお前が忘れるわけないか」

リュウは立ち上がるのを止めて、しぶしぶ話に付き合うことにした。

リゼが教室に残っていれば、ミヤビとユイも残ったまま。

彼女達は同じ家に住んでいて、一緒に帰るからだ。

気付けば教室にいるのは4人だけになっていた。


「それで? 何が聞きたいんだ?」

手早く終わらせるため、リュウの方から話を切り出した。


「あなたが朝から何か思い悩んでいるみたいだから、優しい私達が聞いてあげようと思って」

リゼは頬杖をついて顔だけをリュウに向けている。

心配しているようには微塵も見えない。


「考え事をしてただけで、悩んではいないけどな」

指輪のシステムは摩訶不思議だが、そんな指輪があること自体は受け入れている。


「お前が無視するくらい考え込むのは珍しいじゃん。オレも話くらい聞くぞー」

ミヤビは椅子を大きく引いて、体ごとリュウの方を向いている。

ただ、スカートを履いている自覚がないのか、足がだらしなく広がっている。

彼女も心配しているというより、ただの好奇心だろう。


なお、スカートの中には丈が極端に短いズボンを履くのが寄波の一般的スタイルなので、どんなに足を広げても下着が見えることはない。

そのため、リュウもわざわざ指摘はしない。



彼ら4人の付き合いはそれなりに長い。お互いのこともそれなりに知っている。

リュウにも、この3人にしか伝えていない事はある。


しかし、指輪はリュウがたまたま手に入れたもので、その危険性は未知だ。

ユイに見せたときは深く考えておらず、一緒に目撃者になってしまったから仕方ないとして。

これをさらに広めてもいいものなのか?


そう考えながら、ちらりとユイを見ると、首をわずかに左右に振っていた。

彼女としても、2人に伝えるのは反対らしい。


「あ! コイツ、なんか合図してたぞ」

必要最小限の動きだけで意思疎通したのだが、ミヤビが目ざとく気付いたらしい。

席を立ち、ユイに近づいた。


「情報を独占しようとするのは良くないわよ?」

リゼも追及の矛先をユイに向けたようだ。


「吐けこらー」

ミヤビがユイの首に腕を回し、絞めている。

じゃれているだけにも見えるが、いつもは白いユイの顔が若干色づいてきた。


「おいおい……」

そんな3人のやりとりを呆れたように眺めているリュウだった。

長く一緒にいるのだから、加減はわかっていると思いたい。





ユイはぐったりした様子で机に伏していた。

さすがに気絶はしていないが、「後はあんた達だけでやって」という意思表示らしい。


「ユイも私達の間で隠し事は良くないって思ってくれてるわ」

死人に口なし、と言わんばかりにリゼが代弁している。


自らの好奇心を満たすためなら仲間ですら犠牲にする。

それが彼女達の流儀と言える。

ユイもやる側だったことはあるので、強くは抵抗できなかったのだろう。

最も多く犠牲になっているリュウにとっては、ある意味懐かしいやりとりだった。


そして、彼女達を少しでも気遣ったことを恥じる。

彼女達はリュウが守らなければならないほど弱くはない。

自分から巻き込まれようとしているのだから、遠慮なく巻き込んでやればいい。


「わかったよ。どうなっても文句言うなよ」

リュウがそう伝えると、リゼとミヤビが不敵に笑った。


「始めからそう言えばいいのよ」

「オレらに遠慮なんていらねーって」





遅くなりました。

引き続きよろしくお願いします。

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